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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事
172★桜が、また瞳を赤くして帰ってきました
しおりを挟むそこまで作り上げてから、和輝は2頭を振り返る。
自分達のご飯の用意が整ったのを知って、2頭はチョコンとお座りし、精一杯可愛らしく小首を傾げて見せる。
が、まだ熱い ご飯のコトを考えると、火傷の危険がある為に、2頭にすぐ与えるコトは出来ない状態だった。
んー…卵が煮えるぐらいの
熱々ご飯だったからなぁ……
まだかなり熱いし………
桜は帰って来る気配ないなぁ
この状態で、帰って来るまで
待たせるのは可哀想だし……
どうしようかなぁ?
食べさせちまっておいた方が
桜にかかりっきりになれる
とはいえ、熱いだろうから…うん?
あぁ…そうだ、野菜の煮汁あったな
どうせ、こいつらのプレートは深い
上から、冷めた野菜の煮汁をご飯に
かけてやれば、ちょうど良い温度に
なるだろう
せっかく、鶏ガラでダシとってるし
野菜の栄養素も捨てがたいからな
よし…思い切ってザバッと全部いくか
男ならではの大雑把さで、和輝は2頭のプレートにお玉で冷えた野菜の煮汁を半分づつかけてやった。
それでご飯が食べられる状態になったコトを理解した〈レイ〉は、待ちわびたとばかりに、嬉しそうに鳴く。
『オンッオンッ』
ついでに、ソファーの上から飛び降りて、食事時の位置へとサッと来て、お座りをして見せる。
一方の〈サラ〉はというと、やはり乗っていたソファーから飛び降りて、定位置にお座りし、早く食べたいとばかりに、和輝に向けて、空中にお手とおかわりを何度もしてみせる。
その対照的なアピールをみながら、和輝はお座りした2頭の前にそれぞれのプレートを置く為の台をセットして、そこにコトッと置いてやる。
「はいはい…腹減ったんだな
はぁー…あの程度の遊びじゃ
軽い散歩くらいしにしか
ならなかったかな?
うん…〈レイ〉…〈サラ〉
ヨシ…食べて良いぞ」
2頭は、和輝からの許可に、エヘッと笑い、さっそく嬉しそうに食べ始める。
和輝は知らない事実だったが、桜にしろ、白夜にしろ、たた単に炊き上がったご飯をプレートに盛り、レンジで加熱しただけの肉と野菜をその脇にテンテンと置いただけという、味もそっけもないご飯をずっと食べていたのだ。
材料が同じモノで、栄養素的にはなんら変わらなくても、けして美味しいという表現の出来るご飯ではなかったのは確かな事実だった。
だから、ご飯に卵などの混ぜモノをしたり、ダシをとったモノで野菜を煮たりするという手間などしてもらったコトがなかったのだ。
そんな2頭にとって、和輝の作るご飯は、とても魅力的で、美味しいモノだった。
嬉しそうに食べる2頭の姿を見ていると、玄関の方で桜の気配を感じ、和輝は顔を上げて首を傾げる。
ぅん? 帰って来たのか
なんだぁ? なんか桜のヤツ
気配がすっごく薄いなぁ……
これは…また、貧血かぁ?
それとも、例によって《気》が
足りないってヤツかな?
「まっ…どっちにしても
心身を健康に保つには
滋養のある物を食べて
寝るのが1番の休養だ」
そう呟いて、リビングに入って来た桜を振り返ると、双眸を真っ赤にした桜がフラフラしながら立っていた。
だぁぁ~…やっぱり…さっき
桜が本邸に行く前に《気》を
補充した方が良かったか?
「お帰り…桜…またか……」
夕食を味わうように、ゆっくりと食べている2頭がケンカする無配が無いコトを確認してから、和輝はフラフラしている桜を抱き上げて、ソファーに座らせる。
とりあえず、応急措置として《気》を与える。
丹田で練成した《光珠》ではない、単なる《気》だが、飢えきった桜には、それでも充分に効力があった。
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