上 下
173 / 446
第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事

172★桜が、また瞳を赤くして帰ってきました

しおりを挟む


 そこまで作り上げてから、和輝は2頭を振り返る。
 自分達のご飯の用意が整ったのを知って、2頭はチョコンとお座りし、精一杯可愛らしく小首を傾げて見せる。
 が、まだ熱い ご飯のコトを考えると、火傷の危険がある為に、2頭にすぐ与えるコトは出来ない状態だった。

 んー…卵が煮えるぐらいの
 熱々ご飯だったからなぁ……
 まだかなり熱いし………

 桜は帰って来る気配ないなぁ
 この状態で、帰って来るまで
 待たせるのは可哀想だし……

 どうしようかなぁ?
 食べさせちまっておいた方が
 桜にかかりっきりになれる

 とはいえ、熱いだろうから…うん? 
 あぁ…そうだ、野菜の煮汁あったな
 どうせ、こいつらのプレートは深い

 上から、冷めた野菜の煮汁をご飯に
 かけてやれば、ちょうど良い温度に
 なるだろう

 せっかく、鶏ガラでダシとってるし
 野菜の栄養素も捨てがたいからな
 よし…思い切ってザバッと全部いくか

 男ならではの大雑把さで、和輝は2頭のプレートにお玉で冷えた野菜の煮汁を半分づつかけてやった。

 それでご飯が食べられる状態になったコトを理解した〈レイ〉は、待ちわびたとばかりに、嬉しそうに鳴く。

 『オンッオンッ』

 ついでに、ソファーの上から飛び降りて、食事時の位置へとサッと来て、お座りをして見せる。

 一方の〈サラ〉はというと、やはり乗っていたソファーから飛び降りて、定位置にお座りし、早く食べたいとばかりに、和輝に向けて、空中にお手とおかわりを何度もしてみせる。
 その対照的なアピールをみながら、和輝はお座りした2頭の前にそれぞれのプレートを置く為の台をセットして、そこにコトッと置いてやる。

 「はいはい…腹減ったんだな

  はぁー…あの程度の遊びじゃ
  軽い散歩くらいしにしか
  ならなかったかな?

  うん…〈レイ〉…〈サラ〉
  ヨシ…食べて良いぞ」

 2頭は、和輝からの許可に、エヘッと笑い、さっそく嬉しそうに食べ始める。
 和輝は知らない事実だったが、桜にしろ、白夜にしろ、たた単に炊き上がったご飯をプレートに盛り、レンジで加熱しただけの肉と野菜をその脇にテンテンと置いただけという、味もそっけもないご飯をずっと食べていたのだ。

 材料が同じモノで、栄養素的にはなんら変わらなくても、けして美味しいという表現の出来るご飯ではなかったのは確かな事実だった。
 だから、ご飯に卵などの混ぜモノをしたり、ダシをとったモノで野菜を煮たりするという手間などしてもらったコトがなかったのだ。

 そんな2頭にとって、和輝の作るご飯は、とても魅力的で、美味しいモノだった。
 嬉しそうに食べる2頭の姿を見ていると、玄関の方で桜の気配を感じ、和輝は顔を上げて首を傾げる。

 ぅん? 帰って来たのか
 なんだぁ? なんか桜のヤツ
 気配がすっごく薄いなぁ……

 これは…また、貧血かぁ?
 それとも、例によって《気》が
 足りないってヤツかな?

 「まっ…どっちにしても
  心身を健康に保つには
  滋養のある物を食べて
  寝るのが1番の休養だ」

 そう呟いて、リビングに入って来た桜を振り返ると、双眸を真っ赤にした桜がフラフラしながら立っていた。

 だぁぁ~…やっぱり…さっき
 桜が本邸に行く前に《気》を
 補充した方が良かったか?

 「お帰り…桜…またか……」

 夕食を味わうように、ゆっくりと食べている2頭がケンカする無配が無いコトを確認してから、和輝はフラフラしている桜を抱き上げて、ソファーに座らせる。
 とりあえず、応急措置として《気》を与える。
 丹田で練成した《光珠》ではない、単なる《気》だが、飢えきった桜には、それでも充分に効力があった。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

女性が少ない世界へ異世界転生してしまった件

りん
恋愛
水野理沙15歳は鬱だった。何で生きているのかわからないし、将来なりたいものもない。親は馬鹿で話が通じない。生きても意味がないと思い自殺してしまった。でも、死んだと思ったら異世界に転生していてなんとそこは男女500:1の200年後の未来に転生してしまった。

処理中です...