お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

第３章 蓬莱家で住み込みのお仕事

169★和輝は、夕食を作りを始める

　さっさと脱衣所で全裸になり、和輝は簡単便利なスイッチでシャワーの温度を設定して、適温のシャワー頭からかぶる。
　そして、持ち込んだお気に入りのシャンプーで手早く頭も洗う。
　綺麗に泡立ったシャンプーを洗い流し、リンスを軽く髪にすり込んでから、軽く洗い流した。
　亡き母親が気に入っていた明る目の栗色の髪は、毛先を整えるだけで大事にしているのだ。
　だから、学校で変な常識という名の妄執に凝り固まった教諭達に何を言われようと、どこ吹く風で、一度として黒く染めたりしたコトは無かった。
　色素が薄い髪なので、そういう染色行為に弱い為、充分気を使っているのだ。

　ふぅー猫っ毛っていう程には
　細くはねぇーけど………
　俺の髪って、啓太や水鳥に
　比べるとかなり柔らかいよなぁ

　洗髪の済んだ髪を梳き上げて、ひとつ溜め息を吐き出した和輝は、ボディーソープで軽く身体を洗い、シャワーで全身を軽く洗い流した。
　シャワーを済ませた和輝は、脱衣所へとたったと戻り、バスタオルで手早く髪の水滴を拭い取り、身体に付いた水滴も拭い取り、さっさと着替えをすませる。

　ただ、濡れたままだと風邪を引く可能性があるので、しかたがなくドライヤーを使って、髪を乾かしだしたが、温風を数分浴びただけで飽きてしまった。
　梳き上げた長めの髪は、まだまだ湿り気を帯びていたが、和輝は肩を竦めて呟く。

　「まっ……生乾きだけど…
　　こんなモンで大丈夫だろう
　　そこまで寒いわけじゃないし

　　しっかし…髪を洗う必要を
　　感じるほど、汗をかくとは
　　思わなかったな

　　もっとも、あいつらの相手を
　　すれば、当然なのかも
　　知れねぇーけどな」

　ささっと着替えて髪を軽く乾かした？和輝は、その足でリビングへと戻る。
　そこには、おとなしく伏せて待つ２頭が待っていた。
　自分の姿を見て、嬉しそうにお座りのポーズに変えた２頭の頭を、和輝は軽く撫でてやる。

　「よーしよし…〈レイ〉〈サラ〉
　　本当にお前達は良い子だなぁ

　　おとなしく待っていてくれたか
　　んじゃ…あっちに戻ろうなぁ……」

　そう言いながら、和輝は空になったボールを片付けて、引き綱を手に玄関へと向かう。
　そして、今度こそ２頭が桜と暮らすペットハウスへと向かう。
　すっきりしたおかげで、軽い足取りの和輝は、５分そこそこでペットハウスへと到着する。
　そのまま三重の扉を潜って、和輝はなんの感慨も無くペットハウスへと入った。
　流石に、何度も出入りしているので、感覚的になにも感じなくなっているのだ。

　リビングに到着と同時に、首輪と引き綱を外して、休むように号令する。
　と、２頭はお気に入りのソファーへとひょいっと乗って、まったりと休息し始める。
　これから、美味しいご飯がもらえるのを楽しみに、大きなあくびをして、ご機嫌で丸まる。
　それを確認してから、和輝は今日の夕食の準備に取り掛かった。

　最初に主食の米を研いでから、野菜、肉類の順で調理して行く。
　まずはと、野菜を煮る為のだし汁を作るコトにした。

　「昨日は、鰹節と昆布だったな
　　んじゃ、今日は…………」

　そう呟きながら冷蔵庫の中を見ると、羽毛を綺麗に毟られ、内臓を取り除かれただけの状態の鶏が丸ごと、２羽入っていた。

　この鶏、羽毛を毟って
　内臓を抜いただけのモノか？

　豪快だなぁ～…１頭に一羽かよ
　さすが、金持ちだぜ

　ぅん？　隣りにあるのは
　砂肝とレバーか？

　それを見て、和輝は幼少期のとんでもない出来事の数々を思い出す。