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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事

165★散歩からフリスビーに変更になりました

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 桜の言葉に、お行儀良くお座りしていた2頭は、その意味を瞬時に理解する。

 『『オンッ』』

 そして、嬉しそうに応えた。
 というコトで、2頭のお散歩は、フリスビーへと変更されるコトになったのだった。
 和輝は桜から、場所と設備の説明を受けた。
 その説明によると、それぞれ時間に余裕や自由が少ない飼い主達が、愛犬達と遊ぶ為に、時間に関係なく遊べるように、敷地内奥に用意した場所というコトだった。

 ボルゾイ達がはしゃぎ過ぎて、敷地外に何度も逃亡された結果、よく逃亡される飼い主達で話し合って、容易に敷地外に出られないように、少し奥に高いフェンスを使って、一角を区切ることになったのだと言う。

 桜に説明された、高いフェンスに囲まれ、夜間遊ぶ時はライトが煌々と照らす中庭へと移動する前に、和輝は例によって桜から《気》が欲しいとねだられる。
 和輝は癖になりつつある、しょーがねぇーなぁを無意識に呟きながら肩を竦めて、桜に充分に練りこんだ《気》を与える。

 2頭と高いフェンスに囲まれた奥にある中庭でフリスビーをする為、ペットハウスから2頭と2人と一緒に外に出た爺やは、2人に向かって言う。

 「それでは、私は中庭の
  ライトの操作をしに
  行ってきます」

 そう言って爺やは、まだまだ情緒不安定な桜を和輝に任せて、そそくさと本邸の屋敷の方へと消えてしまった。
 そんな爺やの後姿を見送った和輝は、つい桜に聞いてしまう。

 「なぁ…桜…爺やさんさぁ…
  戻って来ると思うか?」

 和輝と共に爺やの背中を見送った桜は、ひとつ軽く溜め息を吐いて言う。

 「う~ん…来ないと思うわ
  爺やも忙しい人だから………

  普段は海外で活動している
  兄ぃ様や姉ぇ様達と
  常時連絡を取れるように

  爺や専用の執務室で
  待機しているから………

  爺やが居ない時は、爺やの
  息子とかオイ孫が執務室に
  待機するコトになっているわ

  だってねぇ………
  何時、兄ぃ様や姉ぇ様達の
  兄弟や姉妹が現れるか
  判らないから………」

 桜の説明に、先刻の会話を思い出した和輝は、深く追求するコトをしなかった。

 「そっか…それはそうと
  流石に、俺もこの姿じゃ
  こいつらと遊べないから

  いったん借りた平屋に
  行くことになるけど
  桜はどうする?

  ここで、待っているか?
  先に、そっちに行くか?
  それとも、一緒に来るか?

  まぁ、着替え以外なにも
  置いてないけどな………」

 そう言う和輝は、この蓬莱邸に帰って来て、駐車場に車を置いて、カバン類を借家にポイした時から、桜のごねに付き合っていたので、いまだに学生服のままだった。

 「和輝の借りた平屋に行くっ
  ひとりで待っているのは
  つまらないし、寂しいもん」

 そういう桜を腕にしがみつかせたまま、和輝は2頭を連れて平屋へと向かう。
 2頭はそれだけでも十分楽しいらしく、優雅に尻尾を上げて、無意識にゆらゆらとさせていた。
 ゆっくりと歩いても10分とかからない距離を移動した和輝は、借りた平屋のドアを開けて中に入った。
 そして、リビングに通した和輝は、腕に縋り付いたままの桜を振り返って言う。

 「ちょっと待っていてくれ
  今、着替えてくるからさ」

 「うん、早くだぞ」

 そう言って、今度は桜も我がままを言わずに、和輝の腕を解放した。
 それに無意識に頷いて、和輝は2頭の引き綱を桜に手渡しながら命令する。

  「〈レイ〉〈サラ〉ステイ」

 そう和輝に命令された2頭は、フセの姿勢で小首を傾げて、長い尻尾をふぁさふぁさと振って、待ちの姿勢になる。
 それを確認し、和輝はさっさと自分の部屋へと向かう。

 「じゃ、着替えてくるわ」














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