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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事

162★2頭の両親犬の姿を確認しました

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 「そう思う? 和輝」

 意味深に笑って言う桜に、和輝は首を傾げる。

 「違うのか?」

 それまで、ずっと黙って2人の会話を聞いていた爺やが口を開く。

 「神咲君、ボルゾイ犬は
  全色でる犬種です

  ですから、かならずしも
  親犬と同じ色合いの子が
  出るわけではありません

  過去に入った色合いの子も
  結構出るのです」

 爺やの言葉を肯定するように、桜は大きく頷いてから、和輝に言う。

 「和輝…コレ、桜のスマホね
  桜は新しいスマホを買ったから
  和輝に上げるわ

  待ち受け画面のストックに
  色々と入っているわ
  あとギャラリーにも

  ウチで飼っている
  大概の犬は入っているわ

  あと、通話料は桜もちだから
  かならず持って歩いてね

  何時でも、桜と連絡を取れる
  ようにしておいてね

  桜は、和輝と連絡がとれなくて
  とても寂しかったのよ」

 そう言いながら、桜に手渡されたスマホに、和輝は肩を竦めてから、中身を確認する為に、操作してみる。

 どこかで聞いたセリフと
 全然変わんねぇーなぁ

 あぁ…思い出すなぁ……

 親父のあの言葉………

 『連絡したら
  とにかく出ろ
  何かあったかと
  心配するだろろうが』

 たったのスリーコールで
 そう言われたっけなぁ

 懐かしい話しだよなぁ  

 ちょっと物思いにふけりながら、和輝はざっと犬の名前と色柄を確認する。

 へぇ~…〈カオス〉って……
 確かに、ダイエットって言葉が
 必要そうな犬だな

 色柄は、胸元と足先の白以外は
 茶・黄・黒のまだら模様?

 いや、この場合は虎毛模様って
 表現した方が良いのかな?

 ふ~ん…これがブリンドルか

 〈ライト〉の方は…へぇ~……
 確かに、見るからに温和そうな
 柔らかい顔をしているな

 頭部と背中の大半が
 グレーとライトブラウンの
 微妙なグラデーション……

 顔全体と襟首のフリルに
 胸元から腹部にかけては
 オフホワイトって
 ところかな?

 とりあえず、2頭の両親犬の姿を確認した和輝は、スマホの操作をやめて、胸ポケッとにしまう。

 「さぁーてと
  つい話しこんじまったけど

  散歩を休むわけには
  いかないからな……ぅん?」

 そう言ってソファーから立ち上がった和輝の腕を、桜が掴む。

 「どうした? 桜?
  まだ、なんかあるのか?

  それは、こいつらの散歩が
  終わってからじゃダメか?」

 和輝からの問いに、桜は首を振る。

 「寂しいの……」

 ポツリと言う桜に、和輝は散歩に誘う。
 普通の男子高校生なら、誘われたと勘違いするところだろうが、そこはある意味で情緒が大きく欠けている和輝なので、単純に寂しいをそのまま認識していた。
 だから、ケロッと言う。

 「それじゃ…一緒に散歩するか?
  夜の散歩は、ちょっと気分が
  違うと思うぞ」

 和輝の誘いの言葉にも、情緒不安定となった桜には通じない。

 「やだ、行きたくない」

 自分の腕に縋って、だだをこねる桜に、和輝は嘆息しておとなしく待機している2頭を交互に見る。
 お行儀良くお座りする2頭の頭を軽く撫でてやりながら、和輝は思案する。

 さて、困ったぞ
 マジで、桜のヤツ
 情緒不安定みたいだな









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