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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事
134★侵入者のセイで、まだ高校に帰れません
しおりを挟む和輝は、水飲み場から離れて、ソファーに座っている2頭を見て、テーブルの上に洗濯物を置いて、呼びかける。
「おいで…〈レイ〉〈サラ〉
良い子にしてたからなぁ……
クッキーをやるぞぉ」
そう言いながら、ソファーに座る2頭の前を横切り、和輝は鍵のかかる高い位置にある戸棚から、昨日焼いたクッキーを入れた容器を取り出す。
カパッとフタを開けると、ふんわりと香ばしいバターの匂いと、あまぁ~い香りが漂う。
クッキーから立ち上る魅力的な匂いに、2頭は鼻をヒクヒクさせながら、テテテテッと軽い足取りで和輝の側に駆け寄り、長いふさふさの尻尾をブンブンと振り立てる。
アッフッアッフッと語尾にハートが飛び交うような、嬉しそうな声を出す2頭に、和輝はそれぞれのお気に入りのソファーに専用の皿を置いて、クッキーを3枚づつのせる。
「ちょっと、ここで
良い子しててくれな」
2頭は、ささっと所定位置に伏せて、和輝の顔と皿のクッキーを見比べてから、お行儀良く許可がおりるのを待つ。
「クスッ……食べて良いぞ」
和輝の許可に、よだれを零す寸前だった〈レイ〉と〈サラ〉は、1枚のクッキーをソッと咥えて、ショリショリと大事そうに食べ始める。
2頭の様子を確認しながら、和輝はさっさとトイレ場を確認する。
案の定、シートはかなり濡れていたが、排便は無かった。
トイレ場のシートをささっと交換した和輝は、グルッとリビング内を確認するように見て歩く。
犬って、何回ぐらい
排便するんだ?
朝晩2回ぐらいかな?
排尿は、飲んだ水の分
しだいみたいだけど
よし、どこにも悪戯の跡は
無いな
リビングを丁寧に確認した和輝は、何処にも悪戯の跡が無いことを確認して、ホッとする。
「よし…オーケー……ぅん
これなら、午後の授業には
充分、余裕で間に合うな
ほぉーんと桜や紅夜が居ないと
作業が邪魔されないから
すぐに終わるな」
そう独り言を呟いた和輝が、畳んだ洗濯物を持って、リビングから出ようとすると、見知らない男達が、戦々恐々というような様子で、大荷物を持ってリビングに入って来た。
「大滝さぁ~ん
本当に…大丈夫でしょうか?
やっぱりぃ……爺やさんに
頼みましょうよぉ………」
及び腰の上、情け無い声音で、入りたくなさそうに訴える男に、別の声が答える。
「今更だろう
ここまで来たんだから
さっさと何時も通りに
納品するしかないって……」
その侵入者の気配を感じ、怯えた声を聞いた途端、今の今まで機嫌良くふわふわと尻尾を振って、クッキーを食べていた2頭が、上半身をがばっと起こす。
普段、だらしが無いほど垂れた耳を、神経質そうに斜め後ろにピンッと立たせ、歯茎を剥き出して、鋭い牙を見せながら、男達に向かって機嫌悪げに低く唸る。
「「ウゥゥ~…グルルルルゥ~………」」
2頭は自分達のテリトリーに、部外者が侵入したと判断し、即座に迎撃態勢に入る。
その様子を見ていた和輝は、手に持っていた洗濯物を再びテーブルに置き、ハフッと溜め息を吐き出し、フセの手振りをそえて、2頭に声を掛ける。
「よしよし…良い子だな
〈レイ〉〈サラ〉ストップ
ステーイ…ステーイ………」
ゆったりとした口調でそう言いながら、和輝は2頭の様子を観察する。
まだ…ソファーから全身を
起こしてないし
明確な攻撃の姿勢になって
いないから………
そこまで本格的な威嚇には
はいってないな
完全に起き上がって、スッと
低い姿勢になったら要注意だ
ったく、誰だよ
せっかく2頭とも機嫌良く
おやつを食べていたのに……
つーか、こいつらって
こんなに変貌するんだな
俺達には、全然そんな風に
牙剥いたりしなかったのにな
何が気に入らない要素が
あの男達にあるのかもな
とりあえずは、抑えるかな
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