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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事

127★和輝、仲の良い友人に車の説明をする

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 和輝は、無理に人波を掻き分けず、その流れにあわせて歩き、下駄箱で靴を上履きに替えて、自分の教室に向かった。
 その教室に向かう廊下で、クラスメイトの啓太と水鳥と合流した。

 「和輝、おはよう」

 「ああ、おはよう、水鳥」

 「おはよぉぉ~………
  かずきぃ~…かずきぃ」

 「ああ、おはよう、啓太」

 その啓太の様子から、どうやら乗って来た車のトコを聞きたいらしく、鬱陶しく絡み付いて来るが、それも何時ものコトなので、軽く流す。

 「今日は、車で来たんだね
  和輝って、車の免許証って
  持っているの?
  それとも、無免許?」

 水鳥の質問に、和輝は何気なく答える。

 「ああ、車の免許証持ってるぜ
  俺、ダブルだから………
  ちなみに、車は借り物だ」

 和輝の答えに、水鳥はなるほどと言う表情で頷く。

 「そうなんだぁ………
  なんか、大変そうだね
  和輝ってば、目立つの
  嫌いなのに………」

 水鳥の言葉に、和輝は肩を竦める。

 「まっ…しゃーねーさ
  バイト先の都合なんでな

  っと、何時まで俺の側で
  ワキワキしてんだよ、啓太
  ほら、教室に着いたぜ」

 見慣れた廊下を、クラスメイト2人と歩いてきた和輝は、何時もと変わりなく、教室のドアを開ける。
 と、先に着席している竜也が、軽く片手を上げて、和輝に声を掛けてきた。

 「おはよう、和輝」

 「…よぉ…竜也…おはよう
  ああ…輝虎サンキューな」

 自分の机の上に、大きなバスケットとカバンが置かれているのを見て、和輝は礼を言う。

 「……ん……」

 頷く輝虎の側で、何か言いたそうな顔をしている竜也に、和輝は首を傾げる。

 「…ぅん? どうした? 竜也?」

 「和輝、今朝は車で
  登校したんだね……
  何時、買ったんだい?」

 竜也からの言葉に、和輝は顔の前で手を振る。

 「……アレは、買ったんじゃねー
  借りたんだ……バイト先から……
  今も下駄箱から来る途中で
  啓太に、ソレで絡まれてたんだ」

 和輝からの答えに、竜也はメガネの中央をチョイッと指先で押し上げながら、ちょっと不可解そうな表情で首を傾げながら聞く。

 「確か、あそこのバイトは
  車を使うような仕事じゃ
  なかったと思ったけど?

  僕の認識違いだったかな?」

 和輝は、輝虎や竜也とは、お互いに何かあった時、すぐに動けるようにと、ある程度、互いの居場所やタイムスケジュールの情報交換をしている。
 その為、バイト内容も知っているので、疑問に思った竜也は首を傾げているのだ。

 「ああ…あそこは店の都合で
  昨日クビんなったんだ

  何時ものように、バイトに
  入ったら、店長に呼ばれて
  いきなり前日までの給料を
  手渡されて、それで終わり

  勿論、その日の分のバイト代も
  無ければ、謝罪も無しだぜ

  だから、あの車は新しい
  バイト先から借りた車なんだ

  まぁ…急遽住み込みでバイト
  するコトんなったんで借りたんだ

  ちなみに、住み込み期間はさ
  特別手当が給料以外に出るんだ

  一応は、2週間の予定で
  昨日からバイト先に住み込み
  しているんだ

  勿論、妹達も一緒にな

  だから、あの車は、本当は
  妹達の送迎用に借りたやつ
  なんだよな

  今日はちょっとばかり学校に
  遅刻しそうだったし

  この弁当を詰め込んだ大きな
  バスケットっていう大荷物も
  あったから、車で来たんだ

  一応、予定じゃー………
  住み込み期間は2週間って
  コトになってるから………

  それが終われば、車も必要
  なくなるはずなんだ

  それよりも、ここんところ
  俺達全員、竜姫や乙姫も含めて
  昼食はパンばかりだったろう

  ってコトで、弁当を作って
  来たからさ

  ほい、竜也の分はコレな」

 そう言いながら、和輝はおかずの入ったタッパーとおにぎりを手渡した。









 


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