お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

第３章 蓬莱家で住み込みのお仕事

125★担任の落合は、通常運転

　落合の何時もと変わらない対応に、なんとなく気分が浮上した和輝は、金田という存在を意識外に追い出し、落合に向かって軽く言う。

　「サンキュー落合サン
　　って、コトでおにぎりどうですか？

　　材料は基本的に有機栽培
　　品質は保証しますよ

　　ついでに、今なら特別サービス
　　ってコトで、何個買っても
　　１個５０円均一

　　少しでも稼げれば、チリつもで
　　生活費の足しになるんだ

　　確かに、保険金は入ったけど
　　それは使っちまえば消えちまう
　　もんだしな

　　葬式その他色々でさぁ……
　　もう大半がなくなっちまって
　　いるからさ

　　だから、勤労学生に貢献して
　　くれません？」

　そう言って、大量のおにぎりを出して見せる和輝に、ちょうど朝食を食べはぐっていた落合は、目を無意識にきらきらさせながら問い返す。

　「今ならってことは、明日は………」

　「勿論、１００円
　　今日は味見もかねて
　　特別セールだから………

　　その辺のスーパーなんかより
　　間違いなく品質は上だぜ」

　そう言う和輝に、落合は即座に言う。

　「んじゃ、１０個もらおうか」

　落合の言葉に、和輝は眉をひそめる。

　「１０個？　……腐るぜ」

　和輝の言葉に、落合は堂々と言い返す。

　「バカモノ、冷凍しておけば持つ
　　あとは、レンジでチンで
　　オーケーだろうが

　　文明の利器を使わなくて
　　どうする、神咲

　　しかし便利になったもんだな
　　先生は、この時代に生まれて
　　本当に良かったと思うぞ

　　暑さ寒さも、ピッとスイッチを
　　押せばすぐに快適になるし

　　腹がへれば………

　　お湯にトポンっと入れるだけや
　　お湯を注ぐだけでイイっていう
　　簡単便利なトレルト食が
　　そこかしこにあるからな

　　お風呂やシャワーだって
　　時間を気にせずスイッチひとつで
　　何時でも入れる世界だからな

　　多少の男尊女卑はあろうが
　　それを理由に残酷になぶり者に
　　されて殺されないし

　　自己主張しても頭ごなしに
　　女の分際でと言われるコトも
　　少ないのが、私達の国だからな

　　ほんとぉ～に、この日本に生まれて
　　良かったと思っているぞ」

　そうしみじみと言う落合に、大半は同意できると思った和輝は苦笑する。

　まっ…たしかに、俺も日本って
　国に生まれて幸せだと思うぜ

　ただ、落合サン、女捨ててねぇ？
　なんかすっごく残念女子な発言が
　かなぁ～りあったんだけど

　じゃなくて、あの突飛な親父達に
　海外を連れまわされた俺達には
　それがよぉ～く理解（わか）るぜ

　だから、和輝は頷く。

　「まぁ…確かにね……
　　一部の金と権力に溺れた
　　勘違いやろうとか

　　なんちゃって日本人とか
　　そういう奴等を抜かせば

　　この日本って国は、島国のお陰で
　　海外に比べて、国民すべての
　　意識と生活レベルが高いからな

　　俺も、日本に生まれて良かった
　　っては、思っているぜ

　　つーコトで、同じ感覚を
　　共有している落合サンには

　　結構、なんだかんだと
　　世話ンなってるしな

　　俺が今のバイトで、こうやって
　　ご飯を持ってくる間

　　ずっと、５０円で提供してやるよ
　　で、マジでいくついる？」