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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事
119★甘い和輝は、桜に《光珠》をあげる
しおりを挟む時間を確認した和輝は、プリンアラモードの仕上げをしながら言う。
「はぁ~…とりあえず
これを飾り終わったらな
さっきは、食後のデザートまで
作る時間が無かったんでな
そしたら、長時間持つように
鍛錬した《気》の塊を供給してやるよ
まったく…このチューケツキめ」
そう言う和輝の言葉に、桜は首を傾げる。
「なんだ? それは?
そんな単語? あったか?」
小首を傾げて聞く桜に、和輝はなんのこだわりも無く、あっさりと答える。
その手は、器用に生クリームを絞り、その上に果物を飾り付けていた。
「ん~…ああ…吸血鬼のもじりだよ
血じゃなくて…人の《気》を
口付けで摂取するから………
紅夜の行動を考えると
この言葉が1番似合うだろう
油断すると、すぐにベロチューを
かましてくれるからな
これだから、モラルの無い人種は
苦手なんだよ
お陰で、みろ…桜まで平気で
なんのこだわりも無く同じコトする」
舌打ちするように言う和輝に、紅夜も桜も内心で冷や汗を浮かべていた。
和輝が、自分達へ疑いの目を向けるかもしれない……と。
そんな不安感を持ったコトなど一切気付いて無い和輝は、2人分のデザートの飾りを済ませて、完成したプリンアラモードから顔を上げる。
「よし、できた
これ、紅夜と桜の食後のデザートな
ちょっと遅くなったけどな」
そう言ってから、和輝は深呼吸をひとつして言う。
「スゥー……はぁー………
さぁーて、時間も時間だし
できるだけ、長時間持つように
今《気》を練り上げた《光珠》を
作ってやるよ」
そう言って、改めて深呼吸した和輝は、丹田に《気》を集約させて、丹念に練り上げ始める。
まっ…仕様が無ぇーよな……
たしかに、まだ桜の顔色
あんまり良くねぇーし
昨夜は、全身筋肉痛で、かなり
つらかったみたいだしな
アレは、俺のケアーミスだし
和輝は《気》を凝縮させた《光珠》を腹腔から口腔にまで移動させ、紅夜の腕の中に居る桜に、刹那の口付けで分け与える。
が、ソレを渡した次の瞬間には、桜の両腕が届かない位置へと移動していた。
それは、桜に抱きつかれるのを避ける為であった。
「悪いな、今は桜のそれに
付き合ってらんねぇーんだ
俺には学校があるからな
んじゃ…今度こそ……
行ってきますだ、桜
またな、紅夜
あっと、そっちの袋は
クッキーとドーナツな」
そう言って、和輝は紅夜と桜に手を振り、今度こそ屋敷から見える位置にある高校へと登校する為に、ペットハウスから出て行った。
あとには、もらった《光珠》にうっとりする桜と、軽い溜め息を吐く紅夜だけが、その場に残されたのだった。
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