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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事

111★実は狂信者に遭遇したコトあるんです

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 紅夜は、和輝の言葉に疑心暗鬼に陥りそうになりながら、詳細を聞き出そうと問いかける。

 「それって、どういう………」

 紅夜のどこか懐疑的な声音での質問に、和輝はその時の騒ぎを思い出して、忌々しいそうに言い捨てる。

 「ああ……居たんだよ
  変なヤツ…いや、奴等かな

  俺も、特殊な古武道を習って
  いたセイで。ちょっと他の人
  よりも傷の治りが良かったんでな

  いやぁ~絡まれた絡まれた
  もう、随分前のコトだし
  嫌な思いを随分としたんで

  記憶から消去しちまったから
  名前なんて忘れちまったけどな

  ナントカ協会だか、教徒だか
  しんねーけどよぉ
  ずっと纏わり付かれてイイ迷惑
  だったぜ、マジで

  ああ、そうそう最終的には
  警察沙汰になったあげくに
  朝露街の住民から、退去を
  突き付けられたんだぜ

  だって、そいつらってさぁ
  十字架もどきの剣を白昼堂々と
  振り回したからさ………」

 和輝の言葉に、紅夜は不思議そうに問う。

 「そいつら集団で居たのか?

  でも、そういう奴等って
  白昼堂々とは、動かない
  はずじゃねーか?

  俺が遭遇した奴等はそう
  だったぞ
  変じゃねぇーか?」

 そういう紅夜に、和輝が悪戯っ子のような表情で、ペロッと舌を出して、ケロッと言う。

 「別に変でも何でもねーよ

  何時までも、朝露街に
  ああいう狂信的な奴等に
  居座られちゃ堪んねーから

  ちょっとばかり煽って
  やったんだよ
  子供の悪戯ってヤツでさ

  クックククク………
  すぐに引っ掛かって大騒ぎだ
  まるで、蜂の巣を突いたよう
  に湧き出て来たぜ

  俺の幼馴染みも、それぞれ
  得意技があってさ

  俺達の父親は医者だから
  医学知識をもとにした
  新陳代謝の調節がある程度は
  出来るんだよ

  ソレをちょっと見せてやって
  炙り出したんだよ

  だって、夜陰に紛れて、姑息に
  チョロチョロと動き回られると
  迷惑だからな

  あいつらを白昼の元に
  晒してやったんだよ

  特殊体質なんて、その辺に
  幾らだって、ゴロゴロして
  いるからな

  素質の差はあるけれど
  ある程度の《意志力》で
  血止めくらい出来るのにな

  あいつら、馬鹿だからすぐに
  引っ掛かったぜ

  ……っと、もうこんな時間に
  なっちまったか………

  この話は、また時間の余裕が
  ある時にな

  とにかく、俺はさっさと妹達に
  朝飯を食わせて、小学校に
  送らなきゃならないんだ」

 和輝が腕時計を確認して、そう言えば、それ以上引き留めるコトも出来ないので、紅夜は頷くしかなかった。














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