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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事
106★優奈と真奈はご立腹
しおりを挟む「ヨシ……行くぞ…
〈レイ〉〈サラ〉
屋敷までダッシュだ」
和輝の言葉に応え、2頭は嬉しそうにオンッとひとつ吠えて、和輝にあわせて走り出す。
学校の裏門と屋敷の門までの間を、ランニングとダッシュを何度も繰り返して往復し、緩急をつけて走った。
そうして、充分に運動してから屋敷の門まで戻った和輝は、しっかりと汗をかいていた。
背筋や首筋に流れる気持ちの良い汗に、和輝はふぅーっと息を深く吐き出す。
深呼吸を繰り返し、クールダウンをかねて、軽く屈伸運動をする。
「さてと、部屋に戻って
軽く全身を梳いてやるな
そしたら、メシだぞ」
和輝の言葉に、2頭はエヘラッと笑う。
しかし、予定は未定だというコトを、この直後に、和輝は改めて知るコトとなる。
「〈レイ〉…〈サラ〉…
ハウスへ……ゴー……」
和輝がそう言うと、2頭はまるで踊るような…半分スキップが入った歩調で歩く。
尻尾をフリフリ、全身でとぉーっても嬉しいのぉ…とでも言うように歩く2頭が、ピタッと足を止める。
その視線の先には、優奈と真奈が、しっかりと着替えて待っていた。
「優奈、真奈」
いったん足を止めた2頭は、2人に甘えた声で吠える。
「「くおんっ」」
「和兄ぃ…起こして
くれれば良かったのにぃ
私も、一緒に散歩したかった」
「そうだよ、お兄ぃちゃん
どうして、起こして
くれなかったの?
一緒に行きたかったのにぃ」
2人の妹たちに責められた和輝は、嘆息する。
「これは、俺の仕事。
遊びじゃないんだぞ」
言いながらも、和輝は2人の手にクシがあるの見逃さなかった。
ここは、少し妥協してやるか?
今の経済状況じゃ、ペット……
まして、大型犬なんて
夢のまた夢だしな
「じゃぁ…あの家に入って
こいつらの毛を梳いてくれ
俺は、その間にシャワーを
浴びるから………
見ての通り、かなり汗を
かいたんでな
それで、良いか?」
2人に確認を取ると、和輝に用事を頼まれて、少し機嫌が直ったようであった。
正確には、兄である和輝から、2頭に触れる許可をもらったので、散歩に連れて行ってもらえなかったコトをあっさりと過去のコトにしたのだ。
「オッケー…〈サラ〉…おいで…」
「うん……〈レイ〉…行こう」
2人が2頭を呼ぶのにあわせて、和輝は手首にかけていた2頭の引き綱を手放す。
和輝が手放した引き綱をそれぞれ握って、借りた平屋へと3人は向かう。
和輝は、自分の前を楽しそうに歩く双子の妹達の姿に、ソッと深い息を吐き出す。
まぁーしゃーねーか
まだまだ、優奈も真奈も
遊びたいさかりだもんな
大型犬、それも超の付く
大型犬のボルゾイだから
珍しくて、しょうがない
んだろう
まして、自分のいうコトを
素直に聞いてくれる
おとなしい犬ならなおさらだ
まぁ…ちょっと問題はあるが
どっちも頭の良い犬だしな
カチャッとドアを開けて、2頭を先頭に部屋へと入る。
そこには、乾いたタオルとバケツが用意してあった。
真奈が、用意していたバケツに温水を満たす間、優奈は2頭の足をとりあえずぬらしたタオルで拭く。
「じゃぁお兄ぃちゃんは
シャワーでも浴びてくれば
あとは私達でやっておくから」
優奈からの言葉に、和輝はありがたくその場を離れることにした。
「ああ、そんじゃぁ頼むな
ちょっとシャワーを
浴びて来るわ
流石に、汗まみれだからな」
そう言いおいて、和輝はシャワーを浴びに、奥にある浴室へと向かった。
その後姿を見送った優奈は、真奈が用意した温水にタオルを浸し、軽く絞ってから〈レイ〉と〈サラ〉の顔の周辺を重点的に拭う。
和輝と共に、学校の裏門から屋敷の門までの間を、何度もダッシュとランニングを繰り返した2頭は、体温を下げる為に、舌をデロンと出したままだった。
口元の唾液を拭き取り、顔全体を丁寧に濡れタオルで拭き終わった優奈が、2頭から離れる。
それと交替で、今度は真奈が頭部と、長毛で豊かな首筋を吹き降ろして行く。
特に、エプロンのようになっている胸元の毛は、殊更丁寧に拭う。
次いで、背中・腰まわり・尻尾の順番で汚れを拭き取り、最後に腹部周辺を拭う。
全身を濡れぬタオルでマッサージするように拭き終わった優奈と真奈は、お互いが担当と、暗黙の了解で決めた犬の毛を梳き始めるのだった。
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