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第3章 蓬莱家で住み込みのお仕事
072★桜はぐっすり2頭はちゃっかり
しおりを挟む「わぁ~い、久しぶりに
お兄ぃちゃんとお菓子
作りだぁ~………」
「デザート以外も何種類か
作ってくれるってぇ~……」
そして、優奈と一緒に真奈も楽しそうにキッチンへと入り込む。
双子の妹達がキッチンにある材料を確認し始めたのを見て、和輝は2頭と桜の様子を見る為に、右側の部屋へ。
背中で双子の楽しそうな声を聞きながら、和輝はソッと桜の部屋のドアを開ける。
当然のコトとして、部屋のドアは薄く開いていた。
やっぱりボルゾイって頭が
めっちゃ良いな
自分で開けて入ったな
まぁ…閉めないところが
ちょっと抜けてるけど
そこまで出来たら
かなり気持ち悪いかな?
頭が良すぎてさ
まぁ…教えればあいつらなら
きちんと出来そうだけどな
そんなコトを考えながら、和輝は桜の薄暗い私室を通り、奥の寝室へと向かう。
やはり寝室のドアも開いていた。
ソッとドアを開き、中の様子を伺う。
中は柔らかい眠りを誘うような、丁度良い薄暗さだった。
その中で、動く2頭の気配と影を感じたが、明るい場所から来た為に、和輝は薄闇に目が慣れるのを待った。
ぅんー…電気つけると……
せっかく寝ているのに目を
覚ましちまうかもしんねぇーな
なに、少しすれば、この程度の
薄闇ならある程度は見える
和輝が習った古武術の中には、暗視力を高める訓練というモノもあった。
そのお陰で、この程度の薄闇ならば、昼間と変わりなく、和輝はモノを見ることができるのだ。
音を立てないように、静かに室内に入り、天蓋付きのベッドの中央で丸くなって眠る桜の両脇で、顔だけ上げた〈レイ〉と〈サラ〉が、嬉しそうにパフパフと長い尻尾を優雅に振る。
あ~あ、絹の毛布がヒジまで
さがっちまってるじゃねぇーか
寝返りをうった時にでも
はだけちまったのかな?
「よしよし、良い子だな
ぅん…桜も、とりあえずは
大丈夫そうだな」
ベッドに寝かせた時に、きちんと肩までかぶせてやった絹の毛布はヒジまでずり落ちていたので、和輝はもう一度肩口まで引き上げてやる。
それから、尻尾を振った2頭の頭を優しく撫でながら声を掛ける。
「もう少しだけ、静かに
待っててくれな
〈レイ〉〈サラ〉
メシが出来たら呼んで
やるから………
それまで、桜と一緒に
ここで寝てろな」
そう和輝に言われた2頭は、内容を理解したらしく、ちょっとだけがっくりした様子で、ペタンッと頭をベッドに降ろし、ゴソゴソと丸まりなおす。
2頭が寝る態勢に入ったのを確認し、和輝はソッと寝室を出た。
静かに寝室のドアを閉め、部屋を通ってリビングに出た和輝は、部屋のドアを閉めて、スタスタとリビングからキッチンへと向かう。
リビングに戻って来た和輝の姿を目敏く見付けた真奈が、優奈の肩を叩く。
「和兄ぃが戻って来たよ
聞いてみようよ」
「うん…そうだね、真奈ちゃん
おかえり、お兄ぃちゃん
桜ちゃんは、どうだった?
〈レイ〉と〈サラ〉は
やっぱり、桜ちゃんの側にいた?」
優奈からの質問に、和輝は軽く答える。
「ああ、2頭とも桜の隣りで
ちゃっかりと寝ていたぞ
とりあえず、桜も大丈夫そうだ
夕食が出来たら、起こしてやれば
良いだろう」
そう言いながら、和輝もキッチンへと入る。
「んで、どの程度入ってた?」
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