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第1章 新しいバイトが………

041★お迎えが来た桜は回想する

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 和輝からの望んでいた言葉に、桜は無自覚の喜色満面で嬉しそうに頷く。

 「本当か? 和輝?
  なら、すぐに白夜兄ぃ様に
  連絡するから………
  ちょっと待っててくれ……」

 そう言って、桜がスマホをポケットから出した途端、桜には聞きなれた音が軽快に流れる。

 「あぁ……爺やからだ
  ここに着いたのかな?
  ………はい、桜………」

 『桜様………ちょうど、たった今
  カンザキ医院の前に着きました』

 それで、このあと如何いたしましょうか?というニュアンスの問いかけに、桜は和輝を振り返る。

 「爺やさんか?
  着いたのか?」

 「あぁ……たった今……
  このカンザキ医院の前に
  到着したと連絡があった」

 「んじゃ…玄関まで出迎えるか……
  優奈、真奈、桜のお迎え来たから
  玄関に迎えに出るから………

  ここのドアを閉めるぞ
  ちょっとの間だから、待ってろな」

 「はぁ~い」
 「オッケ~」

 2人からの返事を確認した和輝は、待合室と台所の間のドアの鍵を閉める。
 それから、桜を振り返る。

 「飲み終わったか? 桜」

 和輝からの問いに、桜はたった今飲み終わり、空になったカップを見せる。

 「………それで、どうする?
  玄関まで抱っこして行こうか?
  どうだ、桜?

  貧血や眩暈は治まっているか?
  少しは良くなったか?」

 先刻、倒れかけたコトを言っているコトに気付いた桜は、コクッと頷いてから頼む。

 「うぅ~……抱っこで頼む
  まだ、本調子には遠いらしい
  さっき、和輝から《気》を
  もらったのに………

  この身体の何処に消えて
  しまったのだろう?」

 桜自身は知らないコトだが、普通の人間である桜が、白夜や紅夜の属する一族へと変化するには、新鮮で良質な《生気》を大量に必要とするのだ。
 そして、桜のように、まだまだ成長途中の段階の上で、肉体が保有する《気》が常人よりも遥かに薄い者を、白夜の一族の者へと変化させるのは、本来無理があったのだ。

 が、桜は白夜が唯一生涯の伴侶にと望み、妻と呼んだ桃の妹であった。
 桃が死亡した直後から、一族の中に不穏な空気が流れ出し、一族の長である白夜は、愛する妻の妹である桜の処遇を、どうするかという選択を迫られるコトになった。
 一族の大多数の者が、同族でもない人間の桜が、長である白夜の側にいるコトに不満を覚え、排斥しようと動き出した為である。

 ちょうどその頃、桜に一目惚れした紅夜が、桜に自分のすべてを告白し、真の恋人同士となっていた。
 そして、白夜は、同じ男を父親に持つ腹違いの弟・紅夜から、桜を一族に加えて欲しいと懇願され、これ以上はないと言うほど悩んだという経緯があった。

 そして、悩みに悩んだ末、無理を承知で………桜の身の安全の為だと、自分を納得させ………桜を自分達の一族に加える《儀式》を執り行ったのだ。
 それでも、その最後の選択の時、白夜は桜に言ったのだ。

 『桜、別に普通の人間として
  生きても構わないのだぞ
  無理に、我々の一族に
  入らなくても良いのだぞ

  《儀式》を受ける受けないは
  お前の自由だ、桜
  私は、けして強要も強制もしない

  お前のコトは、私が護るから
  好きに自由に生きて欲しい』と

 その《儀式》の少し前に、桜は紅夜から懇願されていた。

 『桜、俺と同じ刻を生きて欲しい
  俺は、桜を生涯愛し護る

  白夜兄上のように
  置いて逝かれるのは厭だ

  何があっても護るから
  俺と生きてくれ』と

 だから、桜は普通の人間として生きる道を捨てて、白夜や紅夜の一族に加わる決意をしたのだ。
 姉・桃に死別された白夜の姿を見ていたから………。











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