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第1章 新しいバイトが………

039★桜の苦悩と本音

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 2頭に振り返られた桜は、待合室のドアを指差して言う。

 「〈レイ〉…〈サラ〉…きちんと
  2人に毛を梳いてもらいなさい

  そのままだったら、ベッドに
  絶対に入れないからね」

 桜の本気の言葉に、2頭は和輝を続けて見る。
 その瞳はキラキラして、期待満ちていた。

 「行けっ…毛梳きが終わったら
  また、何か食べさしてやる」

 和輝の言った意味が理解(わか)ったらしく、2頭はペロリンッと舌舐めずりしながら、優奈と真奈の後に続いて、お尻尾をユラユラとしながら、待合室へと入って行った。
 それを見送った和輝は、桜を振り返る。

 「とりあえず、何か飲むか?
  さっきはミルクティーにしたけど
  珈琲はのんだから、ココアでも
  入れようか?

  どれが良い、桜?
  まぁ……お茶でも飲みながら
  ゆっくりと話そうぜ」

 和輝からの提案に、桜も頷く。

 「では、ココアを頼む
  まだ、何か甘いものが
  欲しい気がするから」

 チラッと待合室へと続く、開かれたドアの向こうを見た和輝は、桜との話し声が聞こえないのを確認してから答える。

 「当然だな、あれだけの
  生体エネルギーを、がっぱりと
  使っちまってるんだから………

  たしかに、甘味が1番
  消化吸収しやすいからな

  まぁ…良質なたんぱく質から
  消化吸収がゆっくりな
  緑黄色野菜まで食べたからな

  とりあえず、疲労しきった身体に
  有る程度必要な栄養素は揃って
  いたと思う………じゃなくて

  甘味は、極度に緊張した脳内を
  リラックスさせる効果があるかなら

  んで、さっきの話しだけど
  俺をペットシッターで雇うって
  マジで言っているのか?」

 バイトを首になったコトで新しいところを探そうと思っていた和輝にとっては、ある意味で渡りに船の話しなので、どこまで本気なのか確認したかったのだ。

 本当に、雇ってくれるなら
 俺としても助かるんだけどなぁ

 和輝からの問いに、桜はコクッと頷く。

 「ああ、本気で契約して欲しい
  そのぉ~…和輝には事後承諾に
  なってしまうのだが………

  実は、先刻の電話の時に
  和輝をペットシッターとして
  雇うという話しの承諾を
  とってあるの

  ちなみに、とても喜んでいた
  これで〈レイ〉や〈サラ〉の
  ヒスに振り回されなくてすむと

  さっきも言った通り
  あの2頭は、ことのほか
  我が儘なのよ

  〈レイ〉は私の犬だけど
  見ての通り、あまり言うコトを
  聞いてくれないのよ

  紅夜や白夜兄ぃ様が側にいれば
  そんなコトはないのだけど……

  〈サラ〉は、白夜兄ぃ様の犬で
  やはり、私だけだと、あまり
  聞いてくれないのよ

  2頭とも、他人の命令など
  小馬鹿にして全然聞かないし

  白夜兄ぃ様の兄弟の命令にだって
  平気で逆らうのよ

  桜の言うコトを聞かないのは
  しょうがないのかもしれない」

 自分で言っていて、その事実に改めて打ちのめされ、桜は項垂れる。
 が、それでも、なんとか和輝とのペットシッター契約を取り付けようと、一生懸命に言葉を続ける。

 「だから、雇ったペットシッターは
  ことごとく馬鹿にされて、自信が
  無くなるからイヤだって………

  今じゃ、どのペットシッターの
  派遣会社も………どころか………
  ペットショップに、訓練所………

  全部、連絡すると断られるのよぉ~

  『蓬莱ですが………』って言うとね
  モノも言わずに、切れるコトもあるの

  もう…頼みの綱は、和輝しか居ないの
  桜も、1人で2頭の面倒を見るのは
  限界なのよぉ~………」

 そう一生懸命にかき口説く桜に、和輝は思案する。










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