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第1章 新しいバイトが………

025★パニックが止らない

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 ぅん? まだ桜の髪の毛は
 全然乾いて無いじゃねぇーか

 つーことは、そんなに時間は
 経過してねぇーってことか
 ほっとするぜ

 あぁ…そうだ…優奈や真奈が
 桜の傷が、もう治癒しちまってる
 コトを不思議がって…

 纏わりつかないように………
 カタチだけでも、傷口があった
 場所に包帯でも巻かないと………

 真奈がドライヤーを持って来る
 その前にすませておかないとな

 ワンピースまできちんと着込んだ桜の両ヒジと両ヒザに、用意されていた真新しい包帯を手早く巻く。
 両ヒジと両ヒザのカタチだけの治療をすませた和輝は、ついでに小指から手の甲もクルクルと手早く包帯を巻く。

 なまじ、普通の空手や合気道の他に、特殊な古武道を習っていた為、和輝は自分の意思で、怪我をある程度治癒する《意志力》を持った人物を数人知っていたので、桜の状態に特段の興味は持たなかった。

 ついでに言えば、幼馴染みにも、同じように自己治癒能力の高い者達ばかりなので、そのコトを不思議に思わなかった。
 それゆえに、桜の怪我の治癒が早いコトには、なんら疑問を持っていなかった。

 また、和輝自身も、なぜかよく絡まれてケンカをするので、小さな怪我をするのはしょっちゅうだった。
 が、不思議な雰囲気を持つ爺さんから、特殊な古武術を習ってからは、自分でも多少の傷ならば《意志力》で完全に治してしまうようになったので、そういう点では、感覚が大雑把になっていた。

 ちょうど、桜の包帯姿が完成した頃、和輝の部屋からドライヤーを探し出して、治療室に真奈が現れる。

 「和兄ぃ…はい…ドライヤー…」

 治療室に駆け込んで来た真奈に、礼を言いながら受け取る。 

 「サンキュー真奈…あぁそうだ
  桜の髪を綺麗に乾かしたら
  すぐに台所にいくから………

  優奈に、冷蔵庫のミルクババロアを
  皿に乗せて、生クリームと果物を
  飾っておいてくれって……
  伝言してくれ
 
  果物は冷蔵庫の野菜室にあるのを
  好きなだけ使って良いからな」

 和輝の言葉に、真奈は嬉しそうな顔をする。

 「和兄ぃ~…今日のおやつは
  ミルクババロアなの?」

 「ああ…だからミルクババロア
  皿に盛って綺麗に飾っておけよ……
  疲労回復の意味もあるからな

  果物も生クリームもたっぷりと
  使ってな……あとは………
  たしか、豆腐入りのチキンナゲット
  あったはずだから………

  レンジでチンでも、油使って
  揚げなおしでも良いから
  暖めておいてくれ

  他になんかあったかな?」

 和輝が大盤振る舞いしてくれそうな予感を感じて、つい真奈は聞く。

 「和兄ぃ~…トリカラは?」

 「トリカラ? あったか?
  あるなら出して良いぞ……

  今週冷蔵庫内を綺麗にする
  予定だったからな
  食べたいモンあったら
  出していいぞ」

 「OK優奈に言っとくぅ~」

 そう答えて、嬉々として治療室から出て行く背中を見送ってから、和輝はドライヤーの温風で桜の濡れた髪を乾燥させ始める。

 「桜…熱くないかぁ?
  さぁ~くらぁ~ちゃ~ん?
  まだ、正気に戻らないか………

  まいっか…髪が乾くまでの間に
  ある程度は復活するだろう……」

 和輝に問いかけられた桜は、自分の度重なる失態と、それが招くだろう結果を考えて、いまだに茫然自失のまま、声をかけられたコトすら気付かなかった。














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