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第9章 忍び寄る妖しい気配

436★真族と〔バンパイア〕の類似点と相違点

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 のほほんと、紅夜や桜にとっては、心臓に悪いコトをのたまう和輝は、ああそうだと言う表情になって聞く。

 「そう言えば、桜や紅夜は、本物の〔バンパイア〕とか〔グール〕を
  直接、見たコトがあるかぁ?それとも、知識だけかぁ?」

 和輝の問いかけに、紅夜は首を振る。

 「俺は、どっちも見たコトないんだよなぁ~…実はさぁ……
  なんか、真族と似た特質持っているとは聞いているけど

  よくあるファンタジー小説とかみたいに、あいつら〔バンパイア〕って
  本当に、コウモリとかになるのかなぁ?

  あと〔グール〕って、ゲームキャラみたいなゾンビなのかぁ?
  タイミングが悪くて、兄上達にきけなかったんだよなぁ………

  里にいる長老達なんて、そういう話しなんてひとっつもしねぇ~し
  ほんと、あいつらって、なんの為にいるのかなって思うよ、マジで」

 ぼやきの入った紅夜に、和輝はクスット笑って言う。

 「なんだ、どっちも本物を見たコトないのか?
  そんじゃ…まずは、紅夜の言葉で言うところの真族と特質や《能力》が
  似ているっていう〔バンパイア〕から行くか?」

 和輝の言葉に、桜も瞳をキラキラさせて身を乗り出す。
 そんな2人に、食前のミルクティーを入れてやり、問い掛ける。

 「紅夜、まず、真族と〔バンパイア〕の類似点ってなんだと思う?
  言いたくないコトは言わなくて良いけど

  言っても平気だと思うなら、できるだけ詳しく頼むな
  俺達が知っているコトと、どの程度の差異があるか知りたいからさ」

 和輝の核心を突いてくる言葉に、もう、全部が面倒だと思っている紅夜は、首を傾げつつ指折りする。

 「えぇ~とぉ~…まず、瞳が赤くなるコトかな?」

 「ああ、それは確かに類似点だな…ってところで、まず一つめの質問な
  紅夜は、自分の意思で、瞳の色を変えられるのか?」

 和輝の質問に、首を傾げる。

 「ん~……瞳だけ、変色させるのはちょっと難しいかな?
  その…他にも身体的特徴が並列で出ちゃうからなぁ………」

 眉を寄せてそういう紅夜に、和輝は〔バンパイア〕との類似点から答えを導き出す。

 「ああ、なるほどな……んじゃ、吸血する為に、乱杭歯が出ると
  双眸も赤光を放つようになるってコトか……ふむふむ

  確かに、藤夜さんがそういう変化を起こしていたもんな
  あれは、真族の本来の姿ってコトで良いのかな?」

 和輝の言葉に、ちょっと胸を押さえながらも、紅夜はどうせ嘘なんてつけないしと、頷く。

 「ああ、たぶん……ただ、あんな…言っちゃなんだけど……その
  本当なら、おぞましい感じはないぞ

  だから、ちょっとあの時の藤夜兄上は、俺でも怖かったし……

  でも、里の中のヤツでも、人間は自分達より下の存在で
  『人間は、自分達の家畜だ』みたいな思想をもってるヤツがいるのは
  確かなんだよな」

 本音が零れる紅夜に、確かに、自分は直視してないけど、あの瞬間だけは、放つオーラが歪んでいたコトに納得する。

 まだ、淀んではいなかったけど、ちょっと歪んでいたもんな
 狂気があの歪みを生み出していたんだろうなぁ………

 「ふむ……特殊な《能力》を持ったコトで歪んだ選民意識を持ったか
  それって、どっちかって言うと、人間側の思考だぜ
  一神教徒にありがちなヤツな

  なにせ、あいつらは自分達が食べる為に、神様が動物を作ってくれた
  とかいう、妄想を信じ込んでいる奴らが大半だからな

  歪んだ権力者が作り上げた、戒律だ規則だルールだってーのは
  ほぼぜぇ~んぶ、権力者の都合良く改悪されているからな

  まぁ…それはさておき、紅夜の最初の質問から考えるに
  真族は、赤光を放つ、乱杭歯を出す以外の変身ししないようだな」

 和輝の確認に、紅夜はちょっと首を傾げつつも頷く。

 「俺が知っている限りでは、コウモリになったり、ネズミや虫や霧?
  みたいなモンになるのは居なかったと思うけど………」

 紅夜の答えに、和輝は頷く。

 「うん、もうそこからして違うな………相違点として言うなら
  あいつらは、マジで、コウモリやネズミに変身するぞ

  後、浮塵子うんかようするにちっさい吸血する虫な
  勿論、雲霞うんかにもなるぞ……紅夜風に言えば、霧か?

  ただし、よくある十字架がダメとか、ニンニクがダメなんてのは無い
  勿論、太陽光も全然平気だからな

  そう言う意味で言うなら、確かに真族と類似点は多いよな
  後、何かあるか?」

 紅夜は、思い切って和輝に言う。

 「えっ…と……その吸血した血液も栄養になるかな?
  だから、和輝は…たぶん…嫌悪すると思うけど……その……

  滅茶苦茶成長が悪いとか……病弱だとか……幼少期に多いんだけど
  その…人間を攫ってきて、吸血させるんだ……だから…家畜って……」

 しどろもどろに言う紅夜に、和輝は、あぁ~という表情で、さも残念そうな表情で言う。

 「はぁ~…それって、思い込みの因習ってヤツだな」

 和輝の言葉に、紅夜が首を傾げる。

 「思い込みの因習?」

 それまで黙って聞いていた桜も和輝に聞く。

 「その思い込みの因習っていうのはどういう意味ですの?」
 
  








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