434 / 446
第9章 忍び寄る妖しい気配
434★何度もあれば、それは日常と化す
しおりを挟む気分は温石、もとい、湯たんぽと化していた和輝は、パチッと目を覚ます。
ぅん?……って…また…全裸?……って……あぁ~…そうだったな
寝る前に紅夜と桜にねだられて、ほぼ強制全裸だったっけ
和輝は自分の状態を思い出し、ちょっと苦笑いする。
っと、和輝が起きたコトに気付いた〈カオス〉が、ニヘラッと笑って、声を出さないようにアフッと語尾にハートマークでも浮かびそうな声なき声をです。
すると、紅夜と桜の脇でそれぞれ寝ていた〈サラ〉と〈レイ〉も、少しだけ顔を上げて、お尻尾をふぁっさふぁっさと振る。
ん~…体内時計的には4時間ぐらいかな?
あの強烈な眠気は綺麗さっぱりになっているな
眠気も気怠さも消えているコトにホッとしつつ、視線を巡らせれば、ちょっと離れたところに時計があるのを見付けて、双眸を細める。
9時少し前っところか……ふむ…だいたい、体内時計はあっているな……
つーと、ゲストハウスのみんなは、既に起きているかな?
優奈と真奈に拗ねられるのはちょっ困るな………と
俺達は良いとしても、あいつらの朝食は作ってやらないとな
いや、今の桜には、ちゃんとした朝食必要なのかな?
流石に、ダイエットが必要な食いしん坊って言われているだけあって
ガリガリに痩せちまった〈カオス〉も何か食べたいようだしな
その子供である〈サラ〉も〈レイ〉も、何か欲しそうだな
ただ、流石に食べ過ぎると胃に悪いから、消化に良い肉系中心だな
そんなコトを考えながら、和輝は自分に縋りつくようにして眠っている桜にまず声かける。
「桜、桜、俺、そろそろ起きるから、その両腕外してくれないか?」
抱き付き、胸に顔をウメルうにして寝ていた桜が、ぼぉ~っとした瞳を開けて和輝を見上げる。
が、その瞳は、また見事に真紅に輝いていた。
「あっちゃ~……やっぱり…オーバーヒートを起こしていたかぁ~……
桜、ちゃんと起きたら、口移しで出来立ての《光珠》やるぞぉ~」
うふふふ……気持ち良いのぉ~……って……えっ?……《光珠》……
口移しでくれるなら、桜は起きるぞ……うふっ…出来立ての《光珠》
和輝の言葉に、今度こそ、瞳をパッチリと開けて言う。
「本当ですの?」
やっとちゃんと意識が完全に覚醒したらしい桜に、頷く。
「ああ……つーコトで取り敢えず、その両腕外してくれっか?
したら、紅夜も起こすから……ちなみに、桜、瞳が真っ赤だからな
《光珠》やるけど、だるいようだったら寝てていいからな
俺は、このまま起きて、朝食を作りに行くからな
食べられるようなら、食べに出て来いよ
俺は、朝食作った後は、こいつら3頭の散歩に行く予定だから」
そう言ってから、桜が抱き付いていた両腕を解放してもらった和輝は、紅夜の背後から自分に抱き付く腕を軽く叩いて声をかける。
「紅夜、紅夜、お前も起きろよ……俺は朝ご飯の支度あるからよぉ~…」
ペチペチと叩かれた紅夜は、悪戯せずに、素直に両腕を解いた。
「ぅん~……も…う……起きる…のかぁ~……あぁ~ふ………」
「ああ、朝食を作らないとだしな……こいつらの散歩もあるからさ」
半ボケで腕を解いた紅夜が呟くのを聞きながら、やっと左右の腕から解放された和輝は、紅夜につられてひとつ大きくあくびをする。
そしてムクッと起き上がり、胡坐をかいて、双眸を閉じ、丹田を意識して、大きな《光珠》を作るように《気》を練り上げる。
丹田から腹腔、胸部から喉へと持ち上げて来たところで、口腔へと塊りを持ち上げて一気に結晶化する。
口腔で結晶体となった《光珠》を感じた和輝は双眸をパチッと開ける。
その眼前には、わくわくした桜のアップが………。
和輝は、そのまま竜也や竜姫に与えていた時と同じように、そっと口付けて、その口腔へと舌で押し込む。
桜は、嬉々として与えられた《光珠》を受け取り、うっとりと微笑む。
《光珠》を与えて直ぐに唇を外した和輝は、紅夜を振り返る。
と、そこには、やはり瞳を桜程ではないものの赤くした紅夜がいた。
あぁ~…やっぱり……紅夜のキャパ以上のストレスだったんだな
だから、ちゃんと自分で呼んで謝っちまえば良かったのに………
「紅夜、お前も瞳が赤くなっているぞ……思ったより、疲労してたな
ほら、紅夜にも《光珠》やるから、ちょっと身を屈めろ」
そう言いながら、和輝は再び丹田に《気》を集中させて、紅夜の分の《光珠》を作り上げる。
舌先に結晶体の感触を感じた和輝は、紅夜へと口付けて譲渡する。
はぁ~……蕩けるぅ~……って…えっ?…俺も瞳赤くなってるのか?
口腔へと放り込まれた《光珠》にうっとりしつつ、紅夜はベッドから降りて、勝手知ったるで桜の部屋のチェストの引き出しを開けて、手鏡を出して自分の瞳を見た。
赤光を放つほどは赤々としてはいないが、確かに真っ赤だった。
うわぁ~……なんだ…これ……初めてだぞ、こんなの………
項垂れる紅夜に、和輝は声を掛ける。
「どぉ~したぁ~?紅夜?……なにを落ち込んでいるんだ?ぁ
お前はどうする?起きるのつらいなら、もう少し寝ているか?」
もう、全裸でいるコトに恥ずかしがるだけの気力が無い和輝は、そのままベッドから降りて、取り敢えず寝る前に脱いだ下着やジャージを身に付ける。
「さて、ちょっと遅いけど、朝食の準備をするとしようか?
〈カオス〉〈サラ〉〈レイ〉…カモンッ……
そんじゃ俺は、こいつらと先にリビングに行ってるな」
そう言って、和輝は桜と紅夜を置いて、3頭を連れてリビングにさっさと行ってしまうのだった。
10
お気に入りに追加
371
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる