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第8章 親密な関係になりたい

432★繁殖期に入ったやつらには、良い匂いだそうです

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 和輝は、桜に《光珠》を手渡してから、チラッと自分の腕時計で時間を確認し、ヒヤッとする。

 ありゃ~…もうこんな時間かよ……って、時間大丈夫なのかな?
 今日、向こうで朝に用事があったら不味いから、声かけしとこう

 「え~とぉ…蒼夜さんに白夜さん……その、時間…平気ですか?」

 和輝に聞かれ、時計を確認した蒼夜が慌てる。

 「あっ……もう、こんな時間……これは、急いで向こうに帰らないと……
  下手すると、今日の便に間に合わないかも……桜、ごめんねぇ~

  向こうで乗り遅れたら、帰って来るの明々後日になっちゃうかも……
  なにぶん、便数が無いからねぇ……

  もし、それにも乗り遅れたら、次は一週間後なんだよ
  ちょっと遠出しすぎたよねぇ~……

  〈カオス〉……今度は、私を歓迎してね……ってコトで、行くね
  可愛い変化中の桜と、やっと正気に戻った藤夜の為にも
  頑張って帰って来るからねぇ~………じゃ、また」

 そう言って、ソファーから立ち上がって足早に玄関へと向かおうする蒼夜に、和輝は声を掛ける。

 「蒼夜さん……これ……手軽に食べられるお弁当とおやつです
  それと、コレ…《光珠》です…持っていってください

  蒼夜さんなら、なんかあったとしても《光珠》が3つあれば
  一時しのぎでにはなると思うんで、お守り代わりです

  そろそろ、マジもんの〔バンパイア〕や〔グール〕達の活動期なんで
  どこで出くわすかわからないので………気を付けてください」

 そう言って、和輝は《光珠》を3つ入れた小さな掌サイズの透明の収納バッグを、お弁当&おやつの入った巾着型手提げ袋と共に手渡した。

 「あっ……ありがとう、和輝君
  それじゃ、私が時間に間に合うように祈ってね
  上手くいけば、明後日の午前中には帰ってこれるから……」

 そう言いながら《光珠》の入った掌サイズの透明の収納バッグを胸のポケットへと入れて、お弁当&おやつの入った手提げ袋を片手に、慌ただしくペットハウスから本邸に向かって走って行くのだった。

 そんな蒼夜を見送った和輝は、白夜の方に向き直り、同じような巾着型の手提げ袋と共に、小さな掌サイズの透明の収納バッグに5つ入れた《光珠》を手渡す。

 「はい、お弁当とおやつと《光珠》です
  白夜さんには5つ入れておきましたので、疲労が激しい時にでもどうぞ

  あの地域は危険なので、余分に持っていた方が良いでしょうから……
  ところで、時間の方は大丈夫なんですか?」

 そう確認する和輝に、白夜は肩を竦める。

 「ああ、私の方は、まだ少し時間の余裕があるからね
  蒼夜兄さんほどは、慌てなくても大丈夫なんだ

  帰国は、私の方も早くて明後日……乗り継ぎによっては、明々後日
  たぶんに、蒼夜兄さんと同じころに帰って来ると思う

  その……和輝君…帰国したら、何か……神話系や遺跡系の
  それらしい、おもしろい話しを何か聞かせてくれないかな?

  今回の取材場所は、現地まで行けなかったし…行きたくないし……
  内容的にも、流石に、書けるもんじゃないからね」

 ああ……そっか…白夜さんて、小説家だったっけ……
 その為の取材旅行だったんだよねぇ………

 よりにもよって、あいつらの巣のど真ん中なんて、作為ありそうだ
 まぁ…帰って来たら考えよう……話しのネタんなりそうなのあるし

 「はい……では、帰って来たら…そう言うのをチョイスして話しますね
  取り敢えずは、充分に気を付けて、無事帰国してくださいね

  あの辺はまだ危険地帯に近いんで、警戒した方が良いですから……
  下手すると、匂いを嗅ぎつけられる可能性もありますからね

  あいつらからしたら、俺達や白夜さん達のような《能力》のある人間は
  『甘くて美味い』そうですから、でもって『滋養が付く』そうですから
  繁殖期のあいつらにはたまらない存在のようですよ

  匂いも、フルーティーな熟れた果実のような匂いがするそうですよ
  嗅覚で、追い駆けられる可能性も無いわけじゃないので
  本当に、充分に気を付けてくださいね」

 和輝からの注意に、ちょっと白夜はヒキッと頬を引き攣らせながらも、コクッと頷く。

 「ああ、ありがとう…十分に、周囲を警戒しながらさっさと帰国するよ
  それじゃ……向こうの空便に乗り遅れないように良くとしよう

  紅夜、桜のコトを頼んだぞ…〈サラ〉帰国したら、歓迎して欲しいな
  それじゃ、色々と大変かもしれないが、和輝君、よろしく頼むね」

 言外に、紅夜と桜、手がかかると思うけどよろしく、と、和輝に言い置いて、白夜もペットハウスから、本邸に設置された転移の魔法陣へと向かった。














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