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第8章 親密な関係になりたい

430★もしかしたら、異種強勢の子を作る為の種馬だった?

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 首を傾げる紅夜に、和輝はにっこりと笑って説明する。

 「ようするに、真族と人間は、自然交配が可能だってコトだろ
  普通に繁殖可能なほど、遺伝子が近いって言だろ、それって

  たぶん、真族と人間の遺伝子を色々と調べても、大きな違いなんて
  染色体の数がちょっと違うとか、生命の長さを決めるテロメアの数とか

  あとは、再生速度を決める延期は塩基配列が、ほんのちょっと違う
  なんていう、たわいもない程度の違いしかないと思うぞ

  でもって、なんで蒼夜さんや白夜さん、紅夜の父親が一生懸命に
  あちこちで子供を作ったのって、もしかしなくても異種強勢

  ようするに、交雑するコトで多様性を持つという可能性と
  強い子を作るって言う目的が、本能に刷り込まれたのかもな

  つーことで聞くけど、紅夜って、その真族の中での《能力》ってやつ
  他の…その里の住人に、劣るか?紅夜の方が《能力》高くねぇ?」

 和輝に言われて、紅夜は首を傾げつつも答える。

 「運…そう言う意味で言えば、俺の方が《能力》が高いと思う」

 「だろっ………でもって、もしかしなくても、藤夜さんもじゃないか?
  藤夜さんは、あんだけの負傷して、正気は失っても生き残っただろ」

 和輝に聞かれて、混血についてトラウマだっただけに、蒼夜や白夜とも
 そういう話しをあまりしたコトがなかった紅夜は、2人の兄に視線を向けて聞く。

 「えっと…その…藤夜兄上って……人間と混血なんですか?

  蒼夜兄上の御祖母様が、桜と同じで一族に加わる為に《儀式》で
  変移して加わった方だっていうのは聞いてますが………

  その娘である晴香さんと父上で、蒼夜兄上が生まれたっていうのは
  あのコトが有ったので、知っていましたが………」

 紅夜の言葉に、ちょっとだけ苦い顔をしつつも、蒼夜は肩を竦めて頷く。

 「ああ、そうだよ……藤夜は、紅夜と同じで、母親は人間だったよ
  ちなみに、紅夜の時と同じでね……

  私が藤夜を見付けた時には、母親は亡くなっていたんだ
  それとほぼ変わらない時期の深夜も、母親は人間だったよ」

 和樹はなるほどなるほどと頷いて言う。

 「ふ~ん、やっぱりそうなんだ……じゃないかと思ったんだ
  ほぼ同じ条件で、混血の藤夜さんが生き残って
  純粋な真族の親父さんの方が亡くなっているってきいたからさ

  きっと、親父さんの本能が、種馬にさせていた可能性があるな
  種族の存亡がかかっているから、多くのハイブリット種
  異種強勢の混血児を欲したんじゃないかな?

  だいたい、普通に人間だって、遺伝子のキメラ種っているんだぞ
  例えば、血液型がО型の血球とA型の血球が混ざっているコトなんて
  わりとあるんだぞ、

  あと、一部だけ体細胞が違うモザイク型とかな
  本体はО型なのに子宮だけ別とかな

  あと後天的なキメらな、骨髄移植とかでそういうのもあるわけだ
  それを考えれば、真族と人間の差異も充分に範囲内だぞ」

 和輝の説明に納得がいった桜が聞く。

 「それでは、藤夜兄ぃ様を入院させても、なんの問題も無いですね?」

 その確認に、和輝はケロッと言う。

 「ああ、そういう意味じゃ全然、問題ないな
  竜也の父親である竜司おじさんは、その程度の差異なら気にもしないよ

  なんて言っても、自分の息子の身体を、遺伝子改良しようとした過去を
  持っているからな

  だいたい、人より寿命が短い遺伝病があるんだったら
  人より異常に長い寿命をもたらす遺伝病があってもおかしないって

  だから、そういう心配をしているなら、大丈夫だぜ
  だいたい、桜の言う真族に加わる《儀式》ってやつってさ
  血液を輸血してんじゃないのか?

  それって、いうところの骨髄移植となんら変わらないぜ
  より原始的な手法で、魔力なり呪力なりっていう

  一応、今のところ未知のエネルギー分野に分類されるモノが必要な
  特殊技術のようなモンだろ

  それを言ったら、俺だってソレに分類されるんだぜ
  なんせ、つい最近まで《光珠》は言うところのエネルギー体で
  せいぜいが、気体の塊りようなモンだったんだから

  きっかけは、ちょっと明確に判らないけどな
  気体の塊りを結晶体にできるようになってできた《光珠》だって
  そういう意味じゃ、未知のエネルギーだろ

  科学的な検証とかしてないし、そうそうできるモンじゃないけどな
  まだ、人間が認識していない未知のエネルギーってモノあるだろうしな

  まー…いわゆるシャーマンのよう素質も必要なんだろうけどな
  真族は、そういうシャーマンのような素質を持つ者が多いってだけだろ

  なんにしても、藤夜さんの治療に支障はないだろうし……
  遺伝子的キメラがあっても、おじさんなら些細なコトで気にしないぜ」

 屈託のない笑顔で、平気でそんなコトを言う和輝に、蒼夜・白夜・紅夜は、顔を見合わせる。











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