上 下
425 / 446
第8章 親密な関係になりたい

425★海外に行くとお米が恋しくなるみたいですね

しおりを挟む


 「ああ…紅夜は、意外と食いしん坊だからしょうがないな
  それに、色々と食べ歩いて、口がおごっているはずの紅夜が

  私達のもとに帰って来たくならなかったようだからね
  そんな和輝君が作る料理にも、興味があるからね

  お相伴させてもらおう

  ああ…リクエストできるなら、ご飯系のモノが食べたいな
  やっぱり、ご飯が恋しくてね……取り敢えず、おにぎりが欲しいな」

 白夜のリクエストに、和輝はにっこりと笑って言う。

 「おにぎりですね…了解……くすっ…紅夜の言った通りだったな
  やっぱり、ご飯を炊いておいて正解だった」

 和輝に名前を出された紅夜は、ちょっとぎこちなく頷く。

 あ~あ…紅夜のヤツ…めっちゃしおれてる…そんなにしおれるんだったら
 我を張らないで、素直に自分で呼べば良かったものを……はぁ~……

 そんな紅夜の様子に、蒼夜は白夜にチラッと目配の視線を投げてから聞き返す。

 「紅夜は、私達のコトを、なんて言ったんだい?」

 蒼夜の言葉に、和輝はいまだにしょんぼりの紅夜を見ながら、苦笑いぎみに言う。

 「ああ…お2人は、呼び出される直前まで、海外に居たから
  和食系が食べたいって言うだろうって………ああそうだ

  流石に魚介の類いは少ないので、お刺身みたいなモノはできませんけど
  イイ感じの大きさのエビ等がありましたので、天丼とかならできますよ

  素揚げしても美味しい野菜も結構種類がありますから………
  とは言っても、天つゆをしみこませる都合上
  薄くでも、衣を着けた方が美味しいですけど………

  天つゆは、醤油味を濃い目にしますか?
  それとも、甘い方が良いですか?……好みに合わせますけど」

 和輝は、そう言いながら、手早くだし汁の材料を調理台の上に乗せる。
 現代っ子らしい和輝の言葉に、蒼夜と白夜は顔を見合わせて、クスッと笑い合って、真族同士でしか通用しない思念で会話する。

{どうやら、私達が考えているよりも、和輝君の順応力は高いようだねぇ}

{ええそのようですね…私達が帰って来ているコトに疑問は無いようです}

{確かに、紅夜の言う通り、和輝君は全然気にしてないみたいだね}

{ですね、私達に対する、敵意や好機などという意識すらないようです}

{う~ん…私達を前にしても、ナチュラルに、平然しているよねぇ~……}

{どうします?このまま、もう少し、様子を見ますか?蒼夜兄さん?}

{まぁ~…それで良いんじゃないかな、何と言っても、桜に必要だしね}

{一族の者ですら近寄らせない紅夜が、いたく気に入ってますしね}

 そんな思念の会話を素知らぬ顔でしながら、2人はちゃっかりとソファーに座って、出された料理に好奇心を示して見せる。

 和輝はと言えば、白夜が希望したおにぎりを、小さめに、色々な味でぱっぱと作り、皿に乗せて、4人が席についたテーブルの上に運ぶ。

 勿論、お箸からスプーンにホークなどのカトラリーもパパッと置いて、お冷とお茶もさっとだしていたコトは言うまでもない。
 当然、おしぼりなんてモノも出していた和輝だった。

 いや、流石に、ああいう呼び方をしたので、せめてどこぞのファミレス程度には、気が利いた対応をと思った和輝だった。

 目の前にご飯が出てくれば、それまであまり意識していなかった白夜と蒼夜も、空腹感を覚える。

 好奇心を示す蒼夜と白夜に、内心でホッとしながら、和輝はおにぎりの説明をする。

 「味は、俺オリジナルのフリカケと、梅干、シャケ、塩こぶ、明太子
  たらこ、マヨツナ、マヨ明太、後、お稲荷さんもつけてみました
  取り敢えず、あり合わせですが、作ってみました

  海苔は巻くとシケるので、こちらに別に用意しましたから…って、紅夜
  そんな顔するんだったら、自分で連絡すれば良かっただろう

  白夜さんも蒼夜さんも、気にしてねぇ~って言ってんだから
  温かいうちに食えよ……腹減ったって言ってただろう」

 そう言いながら、コトッと巻きやすい大きさに切った海苔も置く。
 蒼夜と白夜は、出された温かいおしぼりでいそいそと手を拭う。

 和輝の気遣いに、紅夜はデカイ図体を小さくしたまま、上目遣いで2人の兄の様子を窺う。

 色々なおにぎりが出て来たコトが嬉しい白夜は、柔らかい声で言う。

 「私は、もう気にしていないぞ、紅夜
  せっかくだから、温かいうちにいただこう」

 そんな白夜の現金さに、蒼夜もこころなごんで言う。

 「そうだよ、紅夜……私達は気にしていないよ
  いやぁ~…美味しそうだねぇ~……」

 そう言いながら、白夜と蒼夜の手は、おにぎりを取り、いそいそと海苔を巻いているのだった。

 そんな様子を見て、和輝はクスッと笑ってしまう。

 やっぱり…海外に行くと、米の飯が恋しくなるって本当なんだなぁ~…

 そんな感心をしながら、和輝は忘れていたコトをポンッと思い出す。
 













しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

女性が少ない世界へ異世界転生してしまった件

りん
恋愛
水野理沙15歳は鬱だった。何で生きているのかわからないし、将来なりたいものもない。親は馬鹿で話が通じない。生きても意味がないと思い自殺してしまった。でも、死んだと思ったら異世界に転生していてなんとそこは男女500:1の200年後の未来に転生してしまった。

処理中です...