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第8章 親密な関係になりたい

423★ボルゾイは、飼い主達より和輝が約束してくれたモノの方が魅力的

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 うっとりと、ちょっと演技がかった仕草と表現に、和輝は苦笑する。

 やっぱり…ハリウッドの俳優なんだなぁ~…紅夜って

 そんなこんなの内に、圧力釜のおもりから、シュッシュッと音を立て始める。

 う~ん…そろそろ、白夜さんと蒼夜さんが来てもいい頃だと思うんだが?

 和輝がそう思って、首を傾げて、リビングの紅夜や桜から視線を外し、廊下へと視線を滑らせ、耳を澄ませる。

 と、ちょうど、鍵の外されるカチャッという音と、微かにドアが開く音がする。

 ああ、ようやく来たな……やっぱり、ちっとは、来るの迷ったかな?
 クスクス……紅夜みたいに、気にしなきゃ良いのに……

 内心で、蒼夜や白夜の用心深さを笑った和輝は、紅夜と桜に言う。

 「ああ………噂をすれば、なんとやらだな……来たみたいだな」

 和輝の言葉に、ピザを楽しみにしていた紅夜の肩がビクッと揺らす。

 「そんなに気にすんなよ、紅夜
  それより、お待ちかねの色々ましましのピザが、ちょうど良く焼けたぞ

  熱々だから、気を付けて食べろよ……特に、桜
  火傷したりしないようにな………ちゃんとみてやれよ、紅夜」

 そう言って、和輝はオーブンから焼き立てのピザを取り出し、ピザが食べやすいようにカッティングしていく。

 「食べやすいように、十二等分にカッティングしてあるから………」

 焼き立てピザを大皿に乗せて、和輝は桜と紅夜の前にコトッと置く。

 そんな中、ボルゾイ達は、大好きなご主人様の気配をちゃ~んと判っていても、廊下に出て、玄関に向かい、ご主人様を迎えて歓迎する気は、サラサラ無かったりする。

 愛犬達の出迎えが無いコトを訝しみながらも、白夜と蒼夜は、勝手知ったるで、ペットハウスの中に入り、ちゃんと三重の扉を律儀に閉めなおしてから、リビングへと入って来た。

 ちなみに、3頭のボルゾイ達は、白夜と蒼夜の2人がドアを開けて、室内に入って来ても、顔だけで振り向いて、わっさわっさと尻尾を振るにとどめていた。

 だって、3頭のボルゾイは、和輝の作る料理にこころ奪われていたから………。

 それに加えて、何度も白夜に置き去りにされて、寂しい思いをしていた〈サラ〉と、検疫所の檻の中で、空腹に耐えながら、お迎えを待っていた〈カオス〉は、かなりふて腐れていたのだ。

 特に、常々白夜に『ダイエットが必要なのでは?』と、言われるような、ボルゾイにあるまじきふくよかな体型をしていた〈カオス〉は、食いしん坊なだけに、いまだ記憶に新しい飢餓感を払拭する為に、和輝が作ってくれると約束してくれた、ピザトーストを絶対にもらうと、こころに決め、そこから動かなかった。

 が、そんな〈カオス〉や〈サラ〉のつれない対応に、2人の飼い主はガックリする。

 あうぅ~……うそぉ~…〈カオス〉ってば…私が帰って来たのにぃ~……
 立ち上がって飛びつく、何時もの挨拶をしてくれない……ぐっすん

 その心情を表わすように、愛犬〈カオス〉を見て、ガックリと肩を落とす蒼夜の隣りでは、やはり〈サラ〉につれないコトをされた白夜も項垂れていた。

 あははは……〈サラ〉が、私を振り向いて、尻尾を軽く振るだけなんて
 やっぱり、取材旅行で、長く放っておいたセイなのか?…はぁ~……

 そんな2人を、ちょっと気の毒そうに見ていた和輝は、スマホでの無愛想で取り付く島の無かったコトが嘘のように、愛想良く声を掛ける。

 「いらっしゃい……白夜さん…蒼夜さん…その…ちょっと……
  スマホで呼び付けるような、不躾なコトをしてすみません」

 ペコッと頭を下げる和輝に、白夜は引き攣らない程度の笑顔を、どうにかこうにか浮かべて答える。

 「いや…私達も、紅夜がなかなか帰って来ないので、どうしたのかなぁ~
  …と、いう話しをしていたところだったんでな………」

 和輝と白夜の会話に反応して、愛犬のつれなさに項垂れていた蒼夜も、持ち前の太い神経でもって立ち直り、不躾にならない程度に、和輝を観察しながら挨拶する。

 「鏡越しでは挨拶したけど……改めて、初めましてだね、神咲和輝君」

 そんな蒼夜の余裕を羨まし気にチラッと横目に見た白夜は、それに対して何も言わず、ソファーで自分達の様子を黙って窺う紅夜に視線を向ける。

 「紅夜…できれば、神咲君からの連絡ではなく、お前から欲しかったぞ」

 避難が多大に含まれた白夜の言葉に、紅夜は小さくなって、無言で白夜と蒼夜の様子を窺うだけだった。

 ほんの一瞬前まで、和輝が作った、色々ましましの焼き立てピザを前に『ピザっ』と、嬉しそうに叫んでいた紅夜は、そのピザに手を出すコトも無い。

 だが、2人の兄と、恋人である紅夜の間に流れる、微妙な雰囲気など理解りかいする気の無い桜は、そのピーンと緊張感で張り詰めた空気を、ひと言で破壊する。

 「紅夜ぁ?………早く食べないと、せっかく和輝が焼いてくれた
  色々ましましのピザが覚めてしまうわよ

  ピザは、焼き立ての熱々が美味しいのですから……
  あっ…蒼夜兄ぃ様、白夜兄ぃ様も、ピザはいかがですかぁ?

  和輝が手作りした、焼き立てピザなんですのよぉ
  冷める前に、食べましょうよ

  ほら、こんがりと焼けたチーズが、ちょうど食べ頃になりましたわ」


















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