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第8章 親密な関係になりたい

419★何時になったら愛犬連れて帰って来るのか?*side蓬莱家の白夜&蒼夜*

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 短縮を押すだけ押した紅夜は、ポイッと和輝に自分のスマホを投げる。
 投げられたスマホを受け取った和輝は、耳にあてると同時に、コールオンがフツッと切れて、繋がったのを確認し、そのまま単刀直入に自己紹介する。

 「………もしもし、白夜さんですよね?
  紅夜のスマホで、こんな時間に失礼します

  突然、連絡を受けて、驚いているコトでしょうが
  俺、神咲和輝です」

 『えっ……えぇっ?………か…神咲くん?』

 紅夜だと思って、なにげなくとったと理解わかる反応に、和輝はクスッと内心で微笑わらいつつ、白夜の反応を待たずに言い放つ。

 「単刀直入に言います

  残っている時間が無いんですから〈サラ〉と〈カオス〉に会いに
  一時帰宅している蒼夜さんと、お2人で、こちらに来てくださいね

  それじゃ、用件だけで済みませんが、これで失礼します」

 和輝は、一息にそれだけ言うと………。

 『何故?…君が?…紅夜………』

 と、慌てふためいているだろうコトを予想しつつ、和輝は無情に紅夜から手渡されたスマホを切り、ついでに電源も落とす。

 「ほい…紅夜…スマホ返すわ……一応、電源も切ったぞ
  ちゃんと、こっちに来てもらいたいからな
  兄ちゃん達が来たら、ちゃんと起動しておけよ」

 そう言って、スマホを紅夜に投げ返し、和輝は何事もなかったかのように、キッチンへと入る。
 そして、桜やボルゾイ達に言ったコトを実行する為に、冷蔵庫を開けて、ピザの材料となるモノを取り出しながら言う。

 「そんじゃ、桜と紅夜ご要望の……色々ましましのピザな
  あと、なか適当に作ってやるよ

  で〈カオス〉〈サラ〉〈レイ〉には…俺特製のピザトーストと
  鶏ガラベースのおイモたっぷりスープかな?」

 和輝の言葉に、2人と3頭は、嬉しそうに美味しいモノができて、自分達の前に出て来るのをワクワクしながら待つのであった。





 ◇◇◇◇◇





 和輝から連絡を受ける10数分前、紅夜が愛犬を連れて帰って来るのを、本邸のリビングで待つ蒼夜と白夜は、何気なく時計を見ては、溜め息を吐いていた。

 「はぁ~……〈サラ〉と〈カオス〉を迎えに行っただけだというのに
  まだ、帰って来ないとは……いったい、何をしているのだ、紅夜は
  もしや、また、何かトラブルでもあったのか?」

 くびを傾げつつ、不可解という表情でそう言う白夜に、蒼夜は肩を竦める。

 「う~ん…トラブルねぇ~……どうだろうか?
  まぁ本当に、向こうで何かトラブルが起きているなら

  爺やの方から何らかの連絡があるだろうから
  それは心配しなくても良いんじゃないかな?

  特に今日は、敷地内の各場所に、一族の者達が配置されているんだから
  まだ、澱みを浄化しきれてないから、随所に居るはずだからね………」

 蒼夜にそう言われた、浄化作業を担当している一族の者達はというと。
 ペットハウスから逃げ出したボルゾイ3頭が、和輝達の居るゲストハウスの玄関前で、座っている姿を見て、首を傾げたが、誰も連絡していなかった。

 澱みがかなり酷かったコトと、和輝からもらった《光珠》をもとに、せっせと浄化作業に勤しんでいたから………。

 また、すぐにゲストハウスから和輝が出て来て、我が儘で言うコトを聞かない3頭を、まるで手品でも使ったかのように、おとなしくさせていたので、危険はないと判断されて、スルーされたのだった。

 そして、その直後に、長である白夜が可愛がっている末弟の紅夜が、首輪と引き綱を持って、3頭のボルゾイと、和輝を迎えに来たので、何事も無く終わってしまったからだった。

 だが、そんな事情を一切知らされていない蒼夜と白夜は、遅い紅夜に首を傾げていた。
 勿論、敷地内の随所で浄化作業をしている一族の者達から、爺やのところまで、ボルゾイ3頭や紅夜が和輝の滞在するゲストハウスに現れたという話しは、回ることが無かったのも確かな事実だった。

 そんなコトとは露知らず、白夜は蒼夜の言葉に首を傾げて、再び時計を見る。

 「確かに、何か敷地内で異変が有れば、それが小さなコトでも
  爺やから何らかの連絡が入るはずです

  ですが、何かこう……胸騒ぎのようなモノを感じるんですよ
  敷地内の大気に、揺れも何も感じないんですけどね

  ちゃんと、順調に浄化作業が行われているのが判るぐらいで………
  それでも、言葉に言い表しがたい、妙なざわつきを感じるんです

  だいたい、ちょっと時間的におかしいですよね
  ペットハウスに〈サラ〉と〈カオス〉を迎えに行っただけなのに

  何故、こんなにも時間がかかるのでしょうか?
  流石に、ちょっと時間がかかり過ぎていると思うんですよね
 
  いくら何でも、もう、時間的に帰って来ても良いはずなのに………
  どう考えても、遅すぎます」

 白夜の言葉に、蒼夜は苦笑いを浮かべる。

 「まぁ…確かにね…2頭に手がかかっていると考えてもねぇ~…
  確かに、時間がかかり過ぎだよねぇ………

  ふむ…もしかしたら、桜にごねられているのかな?
  その可能性も、だいぶあるよねぇ~………

  なんやかんやで、ずっと紅夜は忙しく動き回っているからねぇ
  『何故、帰って来たのに、桜の側に居てくれないの?』なんて
  言われて、引き留められて居るのかも知れないね」

 










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