416 / 446
第8章 親密な関係になりたい
415★せっかく設置してあるんだから、ちゃんと閉めましょう
しおりを挟むふむ……スマホから聞こえて来た桜の様子を考えるとなぁ………
簡単で、手っ取り早く作れて、腹に溜まるモノが良いかな?
どうやら、紅夜も腹減ってるみたいだしな
うん?……んんぅ?………なぁ~んか忘れて………って………
ハッとした和輝は、既に幸せ感に浸っても隣りをほけほけと歩く紅夜の姿から、すっかり自分が何をしなければならないかをろ、綺麗さっぱりと忘れているコトを見て取り、内心で溜め息を吐く。
こぉ~やぁ~?……もしかしなくても、すっかりと忘れねぇ~か?
蒼夜さんと白夜さんの愛犬を、本邸に連れて行くって使命?
いや、そんなことは、流石にねぇ~よなぁ~…たぶん
だって、ちゃんと紅夜自身が、自分で俺に言ったぞ
『なぁ~和輝ぃ~……疲れているところ悪いんだけど
あの《光珠》ひとつくれねぇ~か?
まだ、この後、一度桜ンところに行ったら、桜と〈レイ〉を
ペットハウスに置いて〈カオス〉と〈サラ〉に2頭を連れて
本邸に行ったりする用事が残っているからさぁ…………』
いや、あの時は、ちゃんと覚えていたけど……かな?
あの様子だと、マジでゲストハウスに来て《光珠》を欲しがった時の言葉
もう、記憶の中から綺麗さっぱりと忘れ去っている気がするな
まっ…紅夜の気持ちも、理解らなくは無いけどな
ただ、流石に本邸で紅夜が連れて来るはずの愛犬を今か今かと待っている
蒼夜さんと白夜さん、ちっと可哀想じゃねぇ~かぁ~……
まぁいい………ペットハウスに行って、様子を見てから言おう
今言っても、何のことだって、バックレるに決まっている
なんか食いモンの話しを振ってから、一応は言ってみっか?
ちょっと食べれば、素直に愛犬達を連れて行くかもだし………
などと考えているうちに、ペットハウスにあっという間に着いた2人と33頭だった。
「はぁ~……なんだかなぁ…和輝が居るゲストハウスに行って
ペットハウスに帰った来るのに30分もかかって無いはずなのに
なんか、気分的にやっと帰って来た………って、気がするぜ」
ぼやく紅夜に、和輝はちょっと苦笑いを浮かべ、肩を竦めて言う。
「まっ…俺にとっても紅夜とっても、濃厚な1日だったのは確かだな」
そんな和輝の言葉に、やっぱり肩を竦めた紅夜は、桜のお小言を覚悟しながら、ペットハウスのドアを開けて言う。
「ただいま、桜」
そう言いながら、紅夜は〈カオス〉と共に、開いたままになったていた三重の扉を通り抜ける。
〈サラ〉と〈レイ〉を連れた和輝も、紅夜と〈カオス〉に続いて玄関の中へと入り、素早く、まずは玄関の鍵を閉める。
勿論、逃亡した3頭をまた回収したくないので、通り抜ける時に、三重の扉もちゃんと鍵を閉めておく和輝である。
そして、ドアを閉めて紅夜の方を振り返って和輝が見たモノは、玄関のドアが開いた音と、紅夜の声に反応して、リビングから出て来た桜だった。
桜は、腰に手をあてて、開口一番に言う。
「まったく…遅いですわよ、紅夜
桜は、温めたスープを一杯飲み終わってしまいましたわ」
和輝の予想した通り、頬を膨らませて、ぷんぷんしている桜が出迎える。
そして、紅夜はというと、そんな桜に、平身低頭という言葉がぴったりくるほど、身体を小さくして謝る。
「ご…ごめん………」
あうぅ~…やっぱり……遅いって…怒っていたか…
わかっていても…気分がへこむぜ
なんかなぁ~…やっぱり…過度のストレスを感じているセイかなぁ?
桜じゃないけど、すげぇ~腹が減っている気がする…はぁ~……
項垂れる紅夜と、腰に手をあてて、ぷんすかしている桜のやり取りを聞き、和輝は苦笑いを浮かべる。
まっ…紅夜と桜……予想通りの展開だな
ちょっと面倒っちゃ面倒だけど、やっぱり小まめに戸締りは必要だな
また、3頭に、今度は『遊びましょ~』って、逃亡されたらたまらない
和輝はチラリっと、廊下と玄関の間に設置されている、たった今閉めて来た三重扉とドアを確認する。
勿論、そういう風に設置されている為、鍵は外からでもちゃんと外せる仕様である。
あー…うん…ちゃんと鍵は閉めてあるよな
桜も面倒がらずに、きちんと三重扉の鍵をかけておけば
紅夜がドアを開けても、容易く3頭に、逃げられなかったのに………
別に、外からだって、入る時にちゃんと鍵が外せるんだからさ
まぁ……紅夜が、本邸からすぐに帰って来ると思っていたからだろうな
たぶんに、2度手間を面倒くさがって、鍵を掛けなかったんだろうな
和輝はおとなしく自分の行動にあわせていた〈サラ〉と〈レイ〉の頭を撫でてやり、首輪を外してやる。
「まぁまぁ……そんなに怒るなよ、桜」
そう言いながら、和輝は紅夜が握っていた〈カオス〉の首輪も外す。
「ヨシ…良い子だ〈カオス〉〈サラ〉〈レイ〉…ほら、リビングに入れ」
そう言って、首輪を外されて自由になっても、おとなしく側で控えて命令を待つ3頭の頭を優しく撫でてやりながら、リビングを指さす。
3頭は、和輝の命令に従って、素直にリビングへとトテトテと静かに歩いて向かう。
10
お気に入りに追加
370
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
あやかし民宿『うらおもて』 ~怪奇現象おもてなし~
木川のん気
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞応募中です。
ブックマーク・投票をよろしくお願いします!
【あらすじ】
大学生・みちるの周りでは頻繁に物がなくなる。
心配した彼氏・凛介によって紹介されたのは、凛介のバイト先である『うらおもて』という小さな民宿だった。気は進まないながらも相談に向かうと、店の女主人はみちるにこう言った。
「それは〝あやかし〟の仕業だよ」
怪奇現象を鎮めるためにおもてなしをしてもらったみちるは、その対価として店でアルバイトをすることになる。けれど店に訪れる客はごく稀に……というにはいささか多すぎる頻度で怪奇現象を引き起こすのだった――?
毒小町、宮中にめぐり逢ふ
鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。
生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。
しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
後宮の裏絵師〜しんねりの美術師〜
逢汲彼方
キャラ文芸
【女絵師×理系官吏が、後宮に隠された謎を解く!】
姫棋(キキ)は、小さな頃から絵師になることを夢みてきた。彼女は絵さえ描けるなら、たとえ後宮だろうと地獄だろうとどこへだって行くし、友人も恋人もいらないと、ずっとそう思って生きてきた。
だが人生とは、まったくもって何が起こるか分からないものである。
夏后国の後宮へ来たことで、姫棋の運命は百八十度変わってしまったのだった。
鳳凰の舞う後宮
烏龍緑茶
キャラ文芸
後宮で毎年行われる伝統の儀式「鳳凰の舞」。それは、妃たちが舞の技を競い、唯一無二の「鳳凰妃」の称号を勝ち取る華やかな戦い。選ばれた者は帝の寵愛を得るだけでなく、後宮での絶対的な地位を手に入れる。
平民出身ながら舞の才能に恵まれた少女・紗羅は、ある理由から後宮に足を踏み入れる。身分差や陰謀渦巻く中で、自らの力を信じ、厳しい修練に挑む彼女の前に、冷酷な妃たちや想像を超える試練が立ちはだかる。
美と権力が交錯する後宮の中で、紗羅の舞が導く未来とは――?希望と成長、そして愛を描いた、華麗なる成り上がりの物語がいま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる