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第8章 親密な関係になりたい
413★今のうちに、すこし《光珠》を作っておこう
しおりを挟む「ああ……さんきゅー…和輝」
喜ぶ紅夜に、ニッと笑ってから、3頭の頭を交互に撫でる。
「お前達も、もう少しだけ待っていろな」
和輝から《光珠》を手渡された紅夜は、それをすぐには口に入れて取り込まず、掌の上に乗せて、あらためてマジマジと観察する。
なんか、この《光珠》って、あん時にもらったモノよりも、ずっと大きい
それに、光り方が全然違う……まるで、極上の真珠の粒みたいだ
いや、夜空に浮かぶ満月を搾って採れた、光りの雫かな?
煌々とした満月のきらめく月明りの中で、掌の上を転がる時にできる光彩の美しさに、紅夜は思わずうっとりする。
はぁ~……こうして、和輝が作ってくれた《光珠》を、掌の上で転がし
眺めているだけで、緊張でこわばっていたこころが、なごむぜ
まるで、春の暖かく柔らかな日差しを、掌の中に閉じ込めたように
ふんわりっとほの温かく、じんわりと浸透してきて、疲れ切った
俺の精神と身体がゆっくりと癒される
ほぉ~…っと、深い溜め息を吐き出し、掌の上り《光珠》を眺めて、うっとりする紅夜に、和輝はクスッと微かに笑って、作りたての《光珠》をポイポイと胸ポケットに転がし入れる。
さてはて……もしかして、ここの大地と大気と相性が良いのかな?
短時間にすげぇ~イベント盛りだくさんで、本当なら疲れ切っていて
ヘトヘトのはずなのに、なんかすっごく簡単に《光珠》を作れるもんなぁ
う~ん…それとも、かえって疲れすぎているぐらいの状態だから
余分な力とか入らなくて、簡単に作れるのかな?……まっいっか
やっぱり、もうひとつふたつ作るかな?……すぐに、できそうだし
こういう、ある意味で気持ちに余裕?がある時に作って置く方が良いよな
なんでもそうだけど……キリキリよりも、余裕がある方が良いからな
今のうちに、もう少しいくつか、余分に《光珠》を作っておこう
くすくす………いくつか作ったら、その中の《光珠》のひとつを
もう一個、紅夜にやるかな……マジで疲労困憊のようだしな
でもって、瘦せ細っちまった〈カオス〉にも、生命力の補助として
クッキーにでも詰めて、一緒に口に放り込んでやろう
桜にも、向こうに行ったら、追加で新しいのを上げよう
最初の頃に作ったヤツは、さっさと吸収させちまおう
気分を切り替えた和輝は、紅夜が急かさないコトを良いことに、その場で丹田に《気》をかき集め、せっせと《光珠》をコロコロと作り上げる。
それに気付いた紅夜は、ハッとしてもらった《光珠》を取り込む為に、口の中に放り込む。
おっと……やべぇやべぇ……ついつい…掌の上に乗せた出来立ての
《光珠》から放たれる《生気》の暖かさにうっとりしちまったぜ
ん~…はぁ~…あったけぇ~…はぁ~…どんな高価なチョコレートよりも
甘く蕩けて、この身体に浸透する
和輝は、紅夜の陶酔した表情を横目で見ながら、新しい《光珠》を掌にふっと吹き出す。
よしよし……順調順調……っと、それじゃ…そろそろクッキーやるかな
〈レイ〉と〈サラ〉には、普通のクッキーをあげて
まだまだ衰弱が見られる〈カオス〉には《光珠》入りクッキーを上げよう
和輝は、クッキー缶の蓋を開けて、中からクッキーを取り出す。
一枚…二枚…………ふむ…全部で六枚残っていたから、お一人様二枚かな
くすっ…ちょうど良く、気泡で小さな半球の穴が空いているのあるな
これは〈カオス〉のにするかな…穴に《光珠》を詰めてやろう
ふふふふ………ここにちょっと押し込むように入れて……できあがり
「さて、良い子にしていた3頭には、お約束のおやつをあげよう
まずは〈カオス〉からなぁ………」
和輝に指名された〈カオス〉は、てててっと和輝の前に移動して、ちょこなんっと座って、お手のポーズをして、ちょうだいとお愛想笑いまで浮かべる。
その半開きの口からは、舌が愛らしく見えていた。
そんな〈カオス〉の口に、和輝はひょいっと《光珠》入りのクッキーを方の込む。
口にクッキーを入れてもらった〈カオス〉は、えへら笑いを浮かべながら、幸せそうにショリショリと少し上を向いて、欠片すら落とさずに食べる。
側で、お尻尾をふりふりしながら、黙って待つ〈サラ〉に向き直り、和輝は優しい口調で言う。
「んじゃ…次は〈サラ〉な……」
和輝に名前を呼ばれた〈サラ〉は、嬉しそうに〈カオス〉の真似をして、ちょこなんとお座りしつつも、お尻尾をふぁっさふぁっさと、その心情を表わすように、優雅に振り続けていた。
「よしよし…良い子だ………ああ〈レイ〉…お前にもちゃんとやるから
もうちょっとだけ待っていてくれな」
そう言って、和輝は〈サラ〉の口にもクッキーを放り込んだ。
〈サラ〉も〈カオス〉を見ていたので、欠片も落とさないようにと、少し上を向いて、口をモゴモゴし始める。
「よぉ~し、良い子だったな〈レイ〉……ほら、あ~ん」
自分に向き直った和輝の前にすかさず座った〈レイ〉は、にへらっと笑って口をカパッと開ける。
その開かれた口腔には、たぁ~ぷりと唾液が艶光っていた。
あははは………元来、ボルゾイって、超が付く大型犬のわりに
あまり唾液を零れ落とさない犬種なのに、たっぷりと溜まっている
他の大型犬は、口元を拭く為のタオルが手放せないんだよなぁ~……
グレートデンにしろ、マスティフにしろ、ニューファランドにしても
今じゃ本来よりもだいぶ小さくなって、まだ大型犬に分類されているけど
中型化したシェパードも涎が凄くて、拭かないといけないんだよなぁ……
じゃなくて…こいつらって、かなり食いしん坊だよなぁ…マジで可愛い
母親の〈カオス〉が、かなり食いしん坊だって言っていたもんな
その子供達だしなぁ……あ、父親犬もじかに見てみたいかも………
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