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第8章 親密な関係になりたい

412★ちょっと紅夜を甘やかしても良いかな?

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 狂信者集団に、桜が〔バンパイア〕かもしれないという疑惑を持たれた
 桜の家族である自分が、撮影メンバーに居たコトで、あの狂信者集団に
 主役が殺されたかもしれないという疑い
 
 そのコトによって、取り敢えず無期延期になっちまった仕事もあるし
 紅夜ってば、見掛けや言動とかけ離れて、かなり繊細みたいだし

 短期間に、ちょっとストレスを抱えすぎな気がするよなぁ
 どこかでガス抜きしないと、ちょっと暴走するかなぁ?

 今の紅夜って、桜とは違った意味で、ヤバそうだな
 流石に、目の前でアレを見たのはかなり衝撃だっただろうし

 まさか、狂信者集団が現れたその日の夜に、同じく狂信者集団に襲われて
 焼死は免れたものの、狂気に狂ってしまって、自分が〔バンパイア〕だと
 思い込んで、飢餓感にさいなまれて襲った藤夜さんと……襲われた、俺

 愛犬の〈カオス〉を餓死寸前にされた蒼夜さんと
 当主というコトで、呼び出された白夜さん

 そして、正気に戻ったコトで、何がどうしてどうなったの藤夜さん
 たぶんに、色々と説明を求められただろう

 更には、せっかく帰って来たのに、全然相手をしてくれないと拗ねる、桜
 これ、ぜぇ~んぶ紅夜ひとりで抱えて、相手をしていたらなぁ………
 そりゃ疲れるよなぁ~………言葉にはできないけど、ご苦労さん、紅夜

 はぁ~…こうして、あらためて指折りして確認したら、流石に、ちょっと
 いや、かなぁ~り、紅夜ってば可哀想かもな

 まっ…すこしぐらいは、紅夜のコトを甘やかしてやるか
 かなりどころじゃなく、不憫だったからな

 紅夜の《光珠》が欲しい発言に、和輝は苦笑して答える。

 「取り敢えず、玄関の鍵を閉めたらな
  《光珠》が必要なほど、そんなに疲れているんなら
  すぐに《光珠》を作ってやるから待ってろ」

 和輝からの快諾に、既に思考停止している紅夜は、心底嬉しそうにいう。

 「マジ、助かる」

 紅夜の様子を確認しながら、和輝はドアの鍵を閉める。

 鍵を穴に差し込み、カチッという音を聞いてから、ドアをカチャカチャと五月蠅くならない程度に動かし、鍵がちゃんと閉まっているコトを確認する。

 取り敢えず、これでヨシ……っと…誰も起きなくて良かったぁ~

 和輝は、玄関の鍵をジャージに付いているチャック付きのポケットに入れてから、紅夜を振り返る。

 「おまっと~さん…ってコトで、今《光珠》を作ってやるから待ってろ」

 そう言い置いてから、和輝は紅夜が手の中でもてあそんでいたクッキー缶を取り上げて、振りながら3頭に言う。

 「ん~と…グッドゥガール…〈カオス〉〈サラ〉グッドゥボーイ〈レイ〉
  ちょ~っとおとなしく、良い子で待っていてくれなぁ~……
  良い子には、コレ缶の中のクッキーをやるからなぁ~………」

 和輝の言葉を、ちゃんと理解りかいした3頭は、再びスタッとお座りして、待機の姿勢になる。

 くすくす……本当に、こいつらって頭が云いなぁ~……
 こっちの言う言葉をきちんと理解りかいして、対応してくれるもんな

 《光珠》を作って、紅夜に渡したら〈カオス〉と〈サラ〉と〈レイ〉の
 3頭にも、缶に残っているクッキーを渡してやらないとな

 たぶん、俺から何かもらう為だけに、大脱走して来たんだろうからな
 これだけ頭が良いんだから、待っていたのにご褒美がもらえなかったら
 絶対に拗ねるに決まっているからな

 まず間違いなく、紅夜に《光珠》を渡したら、紅夜だけが、俺から
 なんかもらったと判断して、自分も欲しいって、要求するだろうし

 うん?…あれ?…なんか……既視感デジャヴ…って…ああ…そっか
 ミルクババロアを前にして、桜が似たようなコトを言っていたっけ

 取り敢えず、和輝は3頭が側でお座りして待機しているコトを確認し、紅夜がなんとなくという風情で自分を見ているだけで、作業の邪魔にならないコトを見て取る。

 まっ…この状態なら、集中できるな

 様子を窺いつつも、おとなしく待っている紅夜の為に、和輝は《光珠》を作りにかかる。
 双眸を閉じて深呼吸を繰り返し、蓬莱家の敷地内に満ちている清浄な神気を吸い込むようにして、より濃厚で濃密な《光珠》を作る為に精神集中する。

 すると、何度も《光珠》を作る作業を繰り返したセイか、急速に、丹田へと《生気》と、大気や大地の中に含まれる自然な《気》が集まり、螺旋を描き始める。

 あらま…こんなに簡単に作れるようななったんだ……やっぱ、回数かな?
 ……つーか、大気や大地にあるものを取り出すコツを掴んだからかな?
 今回は、ここの神気も取り込めたしな

 まっ……どっちにしても、こんなに簡単に作れるんだったら
 2つ3つ作って、紅夜に飲ませておくかぁ~……

 ついでに、やせ細った〈カオス〉にも、駄目押しで飲ませておこう
 餓死寸前まで激痩せして弱った身体と生命力の活力になるだろうからな

 丹田から胸部へと持ち上げ、喉を通る時には、ほぼ物質化した《生気》の塊りを、口腔に運んで、物質である《光珠》の結晶体を作り上げる。

 ヨシッ…ひとつ出来上がり………くすくす……鍛錬って大事だなぁ~

 和輝は、左の掌を口元にやり、フッと軽く結晶体を吹き出す。

 「ほい……紅夜……もう1つ2つ作るから、ちょっと待っててくれ……」

 そう言いながら、和輝は紅夜に《光珠》を手渡す。












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