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第8章 親密な関係になりたい
411★疲れ切った紅夜は、失言だらけ
しおりを挟むまぁ…蒼夜兄上の方は、明後日帰国ってコトになっているから
こっちとあっちの時差や航空機の予定を考えれば……少しマシかな?
たぶんに、夜明け前には、向こうに帰るだろうけど………
白夜兄上の方は、取材旅行の急な取り止めに対応して…って、ああそうだ
あの〔バンパイア〕共が遊びの為に面白半分で作った遺跡とは違うモン
何かありそうか、聞いて欲しいって、爺やってば言われていたよな
それ、もう、和輝に聞いたのかなぁ?………はて?………じゃないっ
取材を取り止めて、帰国するコトになっても、予定は未定の人だから
だって、白夜兄上は、我が儘な作家で通っているからなぁ~………
ふっ…あっちの朝に、きちんと起きている必要なんてないもんな
もう既に、向こうでは帰国の為の手配を済ませてあるだろうから
出発時間までズルズルだろうし
きっと、取材スタッフなんか『触らぬ神に祟りなし』に違いないもんな
もし仮に、兄上達が2人とも、上手く本来いる場所に帰還してもなぁ
今度は桜の怒りと文句と愚痴と我が儘が待っているんだよなぁ…はぁ~
嗚呼…俺ってば、もうボロボロのノックアウト寸前のボクサーだよなぁ
そんな紅夜の苦悩なんぞ思いやる頭は、たぶんあっても、そんな気遣いなんて、ひと欠片も無い3頭は、ただひたすら、美味しいモノをくれる和輝を待っていた。
自分達に、出合った時から、とぉ~っても美味しいモノをくれて、たぁ~ぷりと遊んでくれる、和輝が戻って来るのを、楽しそうにただただ待つ。
少量とはいえ、和輝からクッキーをもらって食べた3頭は、ウニウニと可愛らしく小首を左右に傾げながら、ただひたすらにおとなしく、和輝がゲストハウスの玄関のドアを開けて出て来るのを待っていた。
考えごとをしている、ようするに、隙だらけの紅夜に引き綱を持たれながら、和輝が戻ってくるのを、おとなしく待っていられたのは、3頭なりに、妄想していたからとも言える。
ちなみに、その手の中にあるクッキー缶があっても、紅夜からはもらえないと判断しているので、無用にちょうだいをしたりしない、賢い3頭だった。
お座りしながら、ご機嫌で尻尾をふりふり、和輝の出て来る気配を待っていた3頭は、気配が近付いて来た途端、ガバッと立ち上がり、アッフッアッフッとデレデレした表情になり、ぶんぶんにお尻尾を振り回す。
その様子から、和輝が出て来るコトに気付き、紅夜は思考の海から現実へと意識を戻し、うつむかせた顔を上げる。
それとほぼ同時に、和輝が玄関のドアをソッと開けて、スルリッと出て来て、後ろ手にソッとドアを閉める。
和輝が完全にドアを閉めてから、紅夜は小さな声で言う。
「よう、和輝…遅かったな」
そう言いながら、紅夜はホッとした表情で言う。
「ごめん、待たせたな……せっかくだから、洗濯物をセットして来たんだ
本当は、全部起きたらやる予定だったコトなんだけどな」
和輝の言葉に、自分のコトで手一杯な紅夜は、すまなそうに項垂れる。
「そっか…ごめん…そっちまで気が回らなくて……」
真夜中……それも、日付が変わってかなり経つというコトを改めて思い出して、更に項垂れる紅夜に、和輝は首を振る。
「うんにゃ…気にすんなよ、紅夜
取り敢えず、朝起きた時に、俺が部屋に居なかったら
絶対に優奈や真奈が騒ぐだろうから、メモ書いて張って来た
あいつらは、朝起きたら、犬の散歩に一緒に行くって
だいぶ張り切っていたからさ
それに、あの桜の様子じゃ、こっちに戻れなさそうだからな
………ってコトで、紅夜、鍵、玄関を閉めるから」
そう言って、手を出す和輝に対して、疲れ切っていた紅夜は、ちょっとおねだりを言いながら、握っていた玄関の鍵を手渡す。
「なぁ~和輝ぃ~……疲れているところ悪いんだけど
あの《光珠》ひとつくれねぇ~か?
まだ、この後、一度桜ンところに行ったら、桜と〈レイ〉を
ペットハウスに置いて〈カオス〉と〈サラ〉に2頭を連れて
本邸に行ったりする用事が残っているからさぁ…………」
自分が、何をその口から零れ落としているか、既に理解っていないらしい紅夜に、和輝は内心で苦笑いする。
あははは………紅夜ってば、ほんとぉ~に、疲れ切っているなぁ~
きっと、自分が重大な失言しているって気付いてないよな
そんな風に言ったら、白夜さんや蒼夜さん達が、鏡の通信魔法じゃなくて
転移の魔法を使って、既に本邸の一室に帰って来ているってコトを
モロに言い表しているじゃん
でも、隠しておきたいコトなら、気付かないふりぐらいしてやるよ
つーか、やっぱり白夜さん達、真族って使えるんだな、転移
ただ、紅夜とか桜は、まだまだ使えそうになさそうだけど……
まぁ…俺も、面倒くさいコトはパスりたいくらい疲れているからなぁ
その気持ちも、理解らなくはないけどなぁ………
………にしても、マジで紅夜ってば、全然余裕ねぇ~ようだなぁ
やっぱり、仕事で共演していた主役が亡くなったコトとか
藤夜さんが、俺を襲ったコトとか、兄貴達とのやりとりとか
桜の我が儘なんてモンが重複した結果だよな
それもそれも、『聖剣の騎士団』なんて、御大層な名前を名乗る
狂信者集団がやらかした数々の所業のしわ寄せ食ったセイだよなぁ
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