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第8章 親密な関係になりたい

405★真夜中の大脱走再び

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 3頭に強い命令を出して、無視された桜は、そこでハッとする。
 そう短い廊下に出て、3頭が向かう玄関の内側に設置してある三重の扉が開きっぱなしであったコトを、ようやく思い出して蒼褪める。

 はっ……あぁぁ~……うわぁ~ん……不味いですわぁ~………
 紅夜が戻って来るからと……すっかり閉めるのを忘れていましたわ

 帰って来た時、すぐ中に入れるようにと、三重の内扉は開いたままですわ
 紅夜が帰って来ると思ったていたので、そのままでしたわ

 とにかく、すぐに3頭を廊下からリビングに戻さないと………
 玄関から追い払って、まずは内扉を三枚とも閉めなければ………

 桜がそのコトに思い至り、慌てて3頭をリビングに戻して内扉を閉めようとしたが、残念なコトに、時既に遅しであった。

 そう、紅夜が蒼夜と白夜の愛犬の〈カオス〉と〈サラ〉を迎えに、すぐそこまで来ていた。

 3頭は、外へと脱走を試みる、千載一遇のチャンスをモノにする為に、耳を後ろへと寝かせ、すぐさまダッシュできるように、姿勢を少し低くして、ドアが開くのを今か今かと待ち構えていた。

 そこへ、間の悪いコトに、紅夜がドアをカチャッと開けて入って来たからたまらない。

 「おう、ただいま……桜……あぁ?……えっ?…おいっ…こらっ……」

 一瞬で、油断している紅夜の脇をスルリッと通り抜け、3頭は嬉しそうに一目散に走り抜けて行く。
 それを見た桜は、思わず紅夜に怒鳴ってしまう。

 
「あぁぁぁ~……もうっ…紅夜のバカァ~っ……そんな風に、油断して
 そんな風に、ほけほけとぉ…ドアを大きく開けてしまうからぁ~……
 3頭とも外に逃げてしまったではないのぉ~………」

 一瞬のコトで、流石に対応できなかった紅夜は、すまなそうに項垂れる。

 えっと…どうしてこうなる?……悪いのって俺?……じゃなくて……
 何がどうして?どうなった?3頭は、なんでこんな時間に逃げたんだ?

 ちょっと逡巡した後、紅夜は気を取り直して聞く。

 「うっ…ごめん…桜……えっと…なんかしんねぇ~けど…あの様子だと
  きっと、和輝のところだと思うし……あっ…俺、電話するわ」

 桜にそれ以上怒られると、凹んでしまうとばかりに、紅夜はすかさず時間を考えもせずに、スチャッとスマホを出して、すかさず和輝へと連絡する。

 えぇ~とぉ~……なんで三重扉が………って……ああ…そっかぁ~……
 俺がこっちに帰って来た時に、ペットハウスに入りやすいようにか
 だから、そのままにしてあったのかぁ……あっちゃ~…そりゃ怒るよな

 コール音を聞きながら、紅夜はそこでやっと時間が遅いを通り越している時間であるコトにハッとする。

 あぁ~…和輝のヤツ…出てくれるかなぁ?…電源は切ってないようだけど
 ………って……やべぇ~……時間……寝てるか?……けど、良いよな?
 緊急ってコトで勘弁してもらおう………うん?…以外に早かったな

 が、運が良いのか?悪いのか?数コールで、直ぐに和輝がスマホに出た。

 「あっ……和輝ぃ~…その…こんな遅い時間に悪いんだけどよぉ~……」

 心底困り切った紅夜の声から、ならかを感じ取ったらしい和輝が聞き返してくる。

 『どうしたぁ?紅夜?……もしかして、また、桜の調子が悪いのか?』

 和輝の心配の入った声音に、ちょっとほっとしながら、紅夜はそれを否定する。

 「いや、取り敢えず、桜は大丈夫だ」

 桜の異変ではないと言う紅夜に、何処かホッとした雰囲気を滲ませた和輝、が、電話向こうで首を傾げていると判るような声で聞き返してくる。

 『あぁ……そんじゃ…なんだぁ?………こんな時間に、俺のスマホに
  紅夜が慌てて掛けて来るくらいだからな

  う~ん…なんか不味いコトでもあったのかぁ?
  桜じゃないなら……あっ…藤夜さんのコトか?』

 和輝の質問に、紅夜は溜め息混じりに答える。

 「いや、藤夜兄上でもねぇ~………実はさ、ペットハウスに戻って来たら
  〈カオス〉を筆頭に〈サラ〉と〈レイ〉まで、外に逃亡しちまったんだ

  たぶんだけど…真っ直ぐ、お前んところに向かったはずだから………
  悪いけど、そっちで捕まえて、こっちに戻してくれねぇ~か?」 
 
 紅夜が連絡して来た要件を聞いて、ほっとした様子の和輝は、首を傾げつつ聞く。

 『あぁ~…それは良いけど……でも、なんで、今頃、ペットハウスから
  3頭全部逃げ出したりしたんだぁ?……鍵とか内扉……って、そうか

  爺やさんに、本邸に連れて行かれた紅夜が、帰って来た時の為に
  閉めていなかったのか………でも、どうして逃亡なんてしたんだ?』

 和輝の質問に、紅夜も何が何だかという表情で、桜を振り返る。

 「ああ……俺も、その理由は………桜?」













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