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第8章 親密な関係になりたい

404★和輝の命令は聞くのに………*side蓬莱家の桜*

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 和輝が料理を器に盛るちょっと前に、かならずそうしていたコトを思い出して、桜はクスッと笑いながら、スープ皿を圧力なべの隣りにコトッと置く。
 そして、同じようにお玉を軽く流水で洗い流していると、ここを逃したら、絶対に分けてもらえないコトを読み取った3頭は、ここぞとばかりに甘えたように鼻を鳴らすのだった。

 くぅぅぅ~ん……くぉ~ん……きゅ~ん

 ちょこなんとお座りポーズで、小首を愛らしく傾げながら、3頭が桜を見上げて、舌舐めずりをしながら、えへらっと笑ってみせる。
 その瞬間、桜は無情にも、きっぱりと言い放つ。

 「そんな可愛い恰好をしても、お前達の分は無いのですわよ
  これは、人間用に味付けされているモノだから、ダメですの

  それに、犬には危険なタマネギも、たっぷりと入っているから
  貴方達には食べられないモノなのよ、ごめんね」

 桜は困った顔しつつ、圧力なべの蓋を外して、自分用に用意したスープ皿にお玉でたっぷりと盛る。

 スープ皿に盛られた野菜には、桜の言った通り、少し飴色の煮溶けた小玉のタマネギがゴロゴロと入っていた。
 他には、ニンジンやジャガイモという、定番の根菜類が入っていた。

 ちなみに、桜は和輝から、懇切丁寧に、タマネギの成分には、血液の成分を溶解させる作用がある為に、絶対食べさせてはいけないと厳重注意されていたりする。

 勿論、ちょっとぐらい………というのも、ぜぇ~ったいにダメと何度も言い含められていたコトは確かな事実だった。

 ちなみに、内容としては、中玉のタマネギひとつで、大型犬のシェパードでさえ、中毒死するという具体例を持って教えられていた。

 人間にもその作用はあるが、長い年月を経て耐性を身に付けただけというコトも教えられていた桜だった。

 だから、ダイエットなどの定番食品に良く上げられたりするというコトも付け加えられていた。

 そう、ドロドロ血液をサラサラ血液にするというのは、そういうコトだと………。

 和輝から、絶対にタマネギが入っているモノは上げちゃいけないと教えられている桜は、可愛くねだる3頭に首を振って言う。

 「これは、お前達には危ない食べ物だから、食べられません」

 そう言って、自分用に持った野菜スープを、たった数歩の電子レンジへと向かおうとするが………。

 自分達が食べられないモノが入っているというコトを認識できない3頭は、とにかく自分達も野菜スープを分けてもらおうと、ひたすら甘えたような仕草で哭いて要求する。

 そう、自分達も、野菜スープをちょうだい………と。

 くぉぉ~ん……きゅおぉ~ん……あんあん……くぅ~ん…きゅぅ~ん…

 ほとんど通せんぼ状態で、自分を囲んで、ひたすら鳴きながらおねだりする3頭に辟易しながらも、桜は和輝の言葉を守って、折れたりはしなかった。
 なんとか3頭の通せんぼをすり抜け、桜は野菜スープを入れたスープ皿を電子レンジへと入れ、温めのスイッチを押すコトに成功した。

 「はぁ~…たったこれだけの距離なのに…温めるだけで一苦労ですわ
  本当に、もう…この野菜スープは、ダメだと言っているでしょう

  どんなに美味しそうな匂いがしても、これは人間用なのよ
  〈カオス〉達には食べられないモノなの…諦めなさい

  どんなに鳴いても、上げられないモノは上げられません
  だぁ~め…どんなに頑張っても、食べられないのよ」

 あんあん……うぉんうぉん……きゅんきゅん……

 3頭は、自分達の望みを叶えてくれない桜に焦れて、その真ん前で、ちょうだいをアピールするように、前足で床をパンパンしてみせる。

 その間にも、電子レンジからは、野菜スープの野菜達が温められたコトで、良く煮込んだ野菜特有のフワリとした甘い匂いが漂う。

 その匂いに、思わず桜は表情を綻ばせて呟いてしまう。

 「くすっ………とても良い香りですわ……うふふ…もう少しかしら?」

 鳴いても、啼いても、桜が自分達の要求を無視するので、お尻尾をぴぃ~んと立てて、耳も悪そうに立てた3頭は、桜にアフッとひと鳴きしてリビングに併設されているキッチンからトテテテと出て行く。

 その姿にちょっとだけ不安を覚えた桜は、思わず3頭に声をかける。

 「あぁ~……どこに行くつもりですの?……〈カオス〉〈サラ〉〈レイ〉
  ほら、さっさとリビングに戻るのです」

 呼び掛けても振り返らず、一筋の後ろ髪も引かれないでリビングを出て行く姿に、猛烈な不安を感じた桜は、電子レンジのスイッチを切って、その後を追う。

 ああ…もう少しで温まって、美味しい野菜スープが食べれましたのに…
 いいえ…それよりも…いったい何処に行くつもりですの?

 「こらっ…部屋に戻りなさいっ…何処に行くというのです……戻りなさい
  聞こえないの?…〈カオス〉〈サラ〉〈レイ〉…ハウスッ…ハウスよ」

 そう注意し、必死で室内へと戻るコトを命令するが、自分達の要求を聞いてくれなかった桜を無視する。

 「もぉ~………どうして、3頭とも桜の言うコトをきいてくれないの?
  今日は、何時も言うコトを聞いてくれる〈カオス〉まで聞いてくれない
  くっすん………和輝の命令には従うのに……桜の命令は無視する……」

 そう項垂れながらぼやいた桜は、もう一度3頭に命令する為に、ひとつ深呼吸をして、大声で命令する。

 「 〈カオス〉〈サラ〉〈レイ〉部屋に戻るのですっ…ハウスッ」

 そう桜が頑張って命令しても、聞く気の無い3頭は、外のドアに紅夜が近付いてくる気配を読みとっていた。
 
  


 









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