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第8章 親密な関係になりたい

397★桜だけではなく、紅夜もかなりやらかしていたようだ*side蓬莱家*

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 白夜の決意のこもった発言に、蒼夜は異を唱えなかった。
 ただ、やはり不安そうな表情で、その真意を確認する。

 「それは…本気かい、白夜………確かに、彼らの存在は、魅力的だが……
  いや、本当にそうなるならば、藤夜の治療もできるというもの…だが」

 そんな蒼夜に、隠れ里では警戒心の塊りと化していた紅夜が、ケロッと言う。

 「和輝なら、平気だと思う……他の奴等のコトまでは、確証できないけど
  確実に、和輝は俺達のコトを忌み嫌ったりはしない
  それに、あいつら自身が、特殊だからさ…理解わかってくれると思う」

 紅夜の発言に、白夜はちょっと考え込んでから言う。

 「いっそうのコト…桜に、私達真族のコトを言わせてみるか?
  和輝君は、桜の言動は、無条件で受け入れて、一切否定しないから」

 紅夜の【記憶】を観たぶんだけ、和輝達のコトをある意味で、蒼夜以上には理解している白夜は、そう口にしてみる。
 それは、蒼夜や紅夜に問い掛けるモノではなく、自分に問い掛けるような言葉だった。

 白夜の発言に、3人ともそれぞれ思うコトがあり、しばし沈黙する。
 その沈黙を破ったのは、やはり、紅夜だった。

 「なんなら、俺が和輝に当たり障りなく、真族の話しをしてみようか?
  桜だと、なんか全部ぶちまけちゃうそうだからさ

  やっぱり、隠しておきたいコトもあるからさ
  あと、俺は、帰宅してから色々あったし…桜とのコトもあるからさ……

  和輝とは、それなりに親密な関係にもなれているから、言葉を選んで
  それなりに上手く話せると思うし………

  少なくとも、和輝と、まだ直接面識のない白夜兄上や蒼夜兄上よりも
  上手く言えると思うから………」

 珍しく積極的な紅夜の発言に、ちょっと驚きつつも、白夜は首を振る。

 「確かに、それもひとつの手だろう
  紅夜、お前の慎重さや思慮深さを信用していないわけではない

  が、今のお前は、常のお前と違って、桜のコトで手一杯の状態だろう
  気付かずに、ボロを出す可能性がある

  それに、こういう秘め事は、当主である私が話した方が良いだろう
  一応、和輝君達は、世に言う名門や旧家と呼ばれ家の因習というモノを
  かなり熟知しているようだからね」

 紅夜の提案に首を振り、あえて当主である自分が、和輝に話すという白夜に、蒼夜は薄く笑う。

 「クスクス………本当に、2人とも珍しいぐらいに、積極的だねぇ~……
  そんなに、和輝君が気に入ったのかい?」

 言われて、白夜と紅夜は顔を見合わせてクスッと笑う。

 「ええ、気に入っていますよ……できるなら、すぐにでも儀式をして
  一族に加えたいぐらいにはね」

 白夜の言葉に、ちょっと紅夜は驚きながらも、ものすごく嬉しそうに言う。

 「あっ…俺も、それに賛成………和輝に妹達もできれば欲しい…
  つっても、桜の変異が完全に終わってからじゃないと無理なコトだけど
  和輝の《生気》はめっきり美味しいから………」

 うっとりしながらの発言に、蒼夜と白夜がヒクッと反応し、声をハモらせてしまう。

 「「紅夜っ」」

 焦る2人の声に、自分の発言がかなりきわどいと言う自覚が無い紅夜は、首を傾げる。

 「どうかしましたか?蒼夜兄上?白夜兄上?」

 自分達の反応に、キョトンとしている紅夜の様子に、蒼夜は不安気に言う。

 「紅夜……もしかして、和輝君の《生気》を食べたりしたのかい?
  もし食べたと言うならば、それは、何時のコトだい?」

 蒼夜の質問に、紅夜は首を傾げながら言う。

 「えっ……何時って……帰国してから、直ぐだけど?

  桜ってば、和輝のパジャマを脱がせて、スッポンポン状態にした身体に
  ぺったりと張り付いて、クークーと気持ち良さそうに寝てたんだぜ

  なんか…こう…ちょっと、仲間外れにされた気分だったんで
  ムッとしたんで………濃厚なベロチューして、起きた和輝に

  『ごちそうさん…美味い《気》だったぜ…和輝』って言っても
  和輝のヤツってば、ケロッとしてたし…俺、なんか不味いコトした?」

 2人の反応に、不安と困惑を覚えた紅夜は、目をパチパチさせながら首を傾げ、何とも言えない表情で言う。

 「和輝は、俺が絡んでも、最初っから、全然平気だったぞ
  なんで、自分は全裸なのか?って首を傾げていたからさ

  素肌に張り付くと、気持ち良いからだって言ったら、和輝は納得してた
  あいつ、自分の身体から濃厚な《生気》が常に発散されているコト
  ちゃんと理解わかっているみたいだし………」

 常の頑なな敬語を忘れ、本来の紅夜の口調で、一生懸命に、自分の行動の何が良くなかったかを考えつつ、弁明めいたコトを口にする。

 が、最終的には、ちょっとしどろもどろになってしまう。
 そんな紅夜の発言から、和輝の性格などがある意味で浮かび上がる。

 ようするに、最初から、一事が万事だったのか?……桜も、紅夜も
 そして、和輝くんは、それを疑問に思うコトなく受け流していたと……

 蒼夜と白夜は、思わず以心伝心のごとく、まるっきり同じ感想を持った。











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