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第8章 親密な関係になりたい
395★白夜は真血の呪縛の効果を確認したい*side蓬莱家*
しおりを挟む紅夜の一線をきっちりと引いた頑な態度に、白夜は少し切なそうに溜め息を吐く。
「本当に、紅夜は強情だな………まぁ…良い………
それで、和輝達の会話を聞いて、お前はどう思う?
本当に、藤夜兄さんの治療はできると思うか?」
映像記録の中では、和輝と竜也が、桜の言動と体調異変から推測した真族の生態と、藤夜の治療の話しをしていた。
かぁ~ずぅ~きぃ~……いくらなんでも、お前、不用意すぎるぞ…はぁ~
いっくらお前達が強いからって、ここでそういう話しをケロケロとするぅ
紅夜は、内心を表に出さずに、それを横目に見ながら、ポツリと言う。
「いっそ見事に、和輝の推測があたっているだけに判断に困るな、これは
本当に、竜也の父親が、和輝達と同じぐらい……信頼できる者なら……
その病院に預けるのも、ひとつの手ではあると思いますけどね
話しの内容からして、霊的な結界のようなモノも張ってあるようですし
今一番狙われているのは、桜で、この屋敷のようですから………
藤夜兄上を、一時避難もかねて、竜也の父親さんの病院に入院も
ありかなぁ………下手すっと、この屋敷より安全かも………」
病院に入院もありかもと言い、後半は口の中で呟いた紅夜は、白夜の煎れてくれた甘いミルクティーを口に含む。
口腔にふわりっと広がる甘いミルクと紅茶の芳香に、紅夜はほぉ~っと安堵を含んだ溜め息を零れ落とし、うっとりしながら言葉を続ける。
「……すくなくとも、和輝や竜也や輝虎は、藤夜兄上の身体の焼け爛れて
引き攣れた火傷の痕跡を、目の当たりにしていますから………
ここで話しているコトは、和輝達の本心からの言葉でしょう
藤夜兄上を、本気で心配しているのは確かでしょうね…………」
紅夜の言葉に、白夜は観せてもらった【記憶】の中で、弱り切った〈カオス〉の生命を繋ぐ為に、なんの躊躇いもなく《光珠》を与えている和輝の姿が浮かぶ。
同じように煎れたミルクティーを一口ゆっくりと飲み込み、白夜は少し躊躇いがちに言う。
「なんというか………和輝君は、弱きモノには、それが人間でなくても
優しい者のようだな………本当に、ありのままを口に出来たら………
どんなに、楽だろうか………」
そんな白夜に、紅夜は肩を竦めて言う。
「そうですね…いっそのコト、俺達真族のコトを和輝に話してしまえたら
………そして、受け入れてえもらえたら、どんなに楽でしょうね」
紅夜自身、そんなコトはどうやっても無理で、見果てぬ夢と思いつつも、ついそんなコトを口にしてしまう。
いや、和輝の言動が、紅夜達にそう思わせてしまうのだ。
もとかしたら、ありのままの自分達のコトを話しても、嫌悪するコトなく受け入れてくれるのではないか…………と。
白夜自身、今すぐにでも、そうしてしまいたいと思う自分に戸惑う。
なまじ、桜に和輝の鮮血と精を啜らせる為に、真血をひと雫だけ注いである為に、従属させる気なら、命令をくだすことで従えるコトができるという意識が、白夜を惑わせる。
その強烈かつ、甘美な誘惑に負けまいと、白夜は軽く頭を振って、その湧きあがる要求を振り払う。
「いずれ時が来たなら、和輝君に、我々真族のコトを告げても良いだろう
だが、流石に、今はまだ、話すのは不味かろう
無理やり、力尽くで捕らえて、従わせるコトもできないわけではないが
それは、いざという時の最終手段として、とっておこう
今はまだ、様子みというところかな?
まだまだ、和輝の作る《光珠》は、桜に必要だからな」
白夜の言葉に、紅夜はクイッとミルクティーを飲み干して頷く。
和輝からもらった《光珠》が、身体にすぅーっと浸透し、甘く優しく身体の芯が蕩けるような快楽を思い出し、紅夜はけぶるような妖しい瞳の色で言う。
「結局、今は無用に動くべきではないというところですね
なに、和輝なら、本当に必要だって感じたなら、何があっても
俺達を護ってくれますよ
勿論、和輝の友人達も俺達をやみくもに、敵視しないでしょう
そして、和輝が決めたコトを、理不尽に否定したりしませんから……
更に言うならば、和輝は自分が気に入っての懐に入れたモノには
滅法甘いようですから………
それが、普通の人間と異なった生態を持つ者でも、犬でも……ね……
和輝は、優しいですから…ああいうのを…慈愛って言うんでしょうね」
見掛けに反して、紅夜は人一倍繊細でいて、好奇心が強く、我も強い分
一族の中でも、ひと際警戒心が強いというのに、こうも和輝君に気に入り
気を許しているとはなぁ………あの子は、本当に魅力的な子だ
本当に、冗談ごとではなく、後で真血のひと雫の効果を確認してみよう
紅夜や桜、勿論、蒼夜兄さんにも内緒で、和輝を呼び出してみるか?
あの忌まわしき〔バンパイア〕達と混同される要因のひとつだが
これは、使ってみるのも一興だろう
たんに、桜や私達を害されない為の保険のつもりだったか………
俄然、和輝君に対して……興味が湧いた
私があの時に注いだ、ひと雫の真血の呪縛が、何処まで和輝君の行動を
縛れるか……どのぐらいの距離まで、誘導できるか………
フフフフ………真血の呪縛に対して、自信が無いわけではないが………
はたして、和輝君をゲストハウスの外にまで、呼び出せるかな?
一度も使ったコトの無い能力だが、はたしてどの程度有効か、それで判る
白夜が、そんな妖しく危険なコトを考えているコトなど露知らず、紅夜は録画に見入り、その内容に興味を示していた。
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