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第8章 親密な関係になりたい

386★ようやく、藤夜は紅夜の【記憶】を観終わったようだ

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 思い悩みつつも、暫定末っ子を心配する白夜に、蒼夜は優しい口調で言う。

 「ああ、引き取るのはそう難しくないと思うよ
  それに、ああいう児童福祉施設ってね、18歳になるか

  高校を卒業するかで、施設を出て自立するしかないからねぇ………
  彼は、頭の良い子だから、どうやら大学に入りたいみたいだしね

  向こうの祖父母は、彼を娘を奪った子として憎みこそすれ
  可愛がるという気持ちなんて、カケラもないからね

  まぁ~父上が、彼女が彼を出産し、亡くなるその時に、その側に
  居なかったコトが原因でもあるんだけどね」

 蒼夜の言葉に、不遇な末っ子を迎えに行きたいという衝動にかられた白夜は、一瞬ソファーから腰を浮かしかけで、ハタッとする。

 「それなら、すぐでも迎えに………いや、でも、危ないか?」

 今は、あの【狩る者】達に、桜が狙われている真っ最中だった
 如何に和輝達が撃退してくれたとは言え………

 変なところで慎重な白夜が、躊躇ためらいを見せると、蒼夜はクスクスと微笑わらいながら言う。

 「なぁ~に、大丈夫さ天…和輝君達と同じ高校に送り込めば良いんだよ
  そして同じクラスに入れれば、自動的に護ってくれるだろう

  学校に入学させる時、こっちの事情をそれらしく言って、和輝君達と
  同じクラスにしてもらえば良いだけだ

  そうすれば、あの児童福祉施設に居るよりも、よほど安全安心だよ
  なんなら、桜も一緒に放り込むという手もあるぞ」

 何の気負いもなく、平然とそう言う

 「………それって、和輝君達に、迷惑なのでは?」

 そんな白夜に、蒼夜は双眸を細め、クックックックッと喉を震わせて、嗤いながら言う。

 「クスクス………何を言っているんだい、白夜
  和輝君達は、あの【狩る者】達を、狂信者って言って、殊の外
  毛嫌いしているんだから、大丈夫だよ

  それに、何と言っても、紅夜を呼び餌にして、あの【狩る者】達を
  釣りだして、あの〔バンパイア〕共と共倒れさせようなんてコトを
  考えるくらいには、したたかでハングリーだからねぇ~………

  末っ子の身が危ないってなれば、和輝君達は無条件で助けてくれるって
  特に、和輝君は、自分よりも小さい者にはとことん弱く、甘いとみた

  それに、呼び餌になるんなら、和輝君達は絶対に喜んで護るよ
  どちらにしろ、和輝君達とは一蓮托生になるから、大丈夫だよ」

 人の心理を読み取るコトが得意な長男・蒼夜の発言に、白夜は自分の器の小ささを感じて、溜め息を吐く。

 はぁ~…どうして、蒼夜兄さんが当主じゃないんだろう?
 今更だが、ものすごく不条理を感じるよ

 私よりも、よほど当主や長というモノに向いているというのに………
 ほうむる機会があったら、あの長老達を絶対に処分してやる

 そう平気で思えるコト自体が、既に当主や長向きな性格だというコトを知らない白夜は、自分の不遇を思わず嘆かずにはいられなかった。

 「私に、蒼夜兄さんの豪胆さが、もう少し有ったら………はぁ~……」

 黄昏る白夜に、不味いっと思った蒼夜は、視線を彷徨さまよわせる。
 と、ちょうど良いコトに、紅夜が藤夜から離れるシーンに出くわす。

 どうやら、ようやっと【記憶】を覗き観る技法で、藤夜が正気を失ったときからのすべてを観終わったようだった。

 紅夜が口付けを外し、支えを兼ねて押さえていた顎からも手を離して、藤夜に話しかける。

 「大丈夫ですか?藤夜兄上?」

 口付けによって、紅夜と深くシンクロしていた藤夜は、目が見えないコトに違和感を感じて、頭を神経質に振る。
 その様子に、心配性の蒼夜がソファーから立ち上がり、苛立たし気な藤夜のもとに行き、スッとそのやせ細った身体を抱き上げる。

 そして、自分のソファーへと移動し、ゆったりと座り直して、優しく肩を抱きながら、穏やかな声音で話しかける。

 「大丈夫かい?藤夜?……そんなに頭を振ると、目が回ってしまうよ
  だいぶ落ち着かないようだけど、どうしたのかな?」

 肩に置かれた、しっかりとした温かい手の感触と、蒼夜の落ち着いた口調での問いかけに、藤夜はハッとする。

 「………っ……あっ………ああ………すみません、蒼夜兄さん
  紅夜が【記憶】を観せてくれたので、その感覚がちょっと抜けなくて

  自分の状態は理解わかっているつもりだったのですが………
  見えないコトに対する違和感がとれなくて………」

 焦ってしどろもどろの藤夜に、紅夜はもう一度声をかける。

 「ごめん藤夜兄上………やっぱり、正気になりたてで、いきなり
  正気を失った時から、現在までの【記憶】の全部を観るのは
  きつかったよな………ごめん」

 項垂れているコトが分かる口調の紅夜に、藤夜は苦笑いする。

 「済まない、紅夜…心配をかけてしまったようだな…もう、大丈夫だ
  私も、焦り過ぎていたようだ………でも、ありがとう、紅夜
  一族内で起こったコトを、全部、隠さずに、観せてくれて……」

 どうやら、本当に落ち着いたらしい藤夜の口調に、ホッとした紅夜は、ひとつ大きく溜め息を吐いて、最初に座っていた一人用のソファーにどっかりと座って聞く。

 「はぁ~……病み上がりに、無理は禁物だって理解わかっているはずなのに
  まぁ…観せたように、本当に色々とあったからさぁ………

  中でも一番衝撃だったのは、たぶん、正気を失っている藤夜兄上自身が
  和輝の首筋に、牙を突き立てたコトじゃないかな?」











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