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第7章 儀式という夢の後
378★そろそろ、あのはた迷惑な化け物の繁殖期
しおりを挟む人でなしなコトを平気で言う和輝に、乙姫が首を傾げて言う。
「呼び餌って?」
乙姫の質問に、輝虎の質問が重なる。
「あぁ~…和輝、なんで紅夜さんなんだ?
狙われたのって、桜ちゃんなんだろう?
呼び餌というならば、彼女でなければ意味は無いのでは?」
2人の疑問に、和輝は指を顔の前に立てて、チッチッチッと振りながら言う。
「あいつらはなぁ…狂信者だけあってな、標的に選んだ者の親兄弟から
友人知人にまで、その範囲を広げるよ
交流や交友が有るってコトは、仲間に違い無いってコトらしい
だから、紅夜でも充分、あいつらに対しての呼び餌になるんだ
同じ屋敷に暮らしているってだけで、充分にその対象になるんだ
それにだ、体調の悪い桜よりも、行動の制限がないからな
運動神経その他を考えると、共闘するのは紅夜の方が俺達には有利だ
それに、あいつらは、桜を狙ったからな
俺が提案すれば、紅夜は絶対に、断らない
それとな、竜也も竜姫も、すっかりと忘れているようだけど
そろそろ、あいつらの繁殖期だぜ」
和輝のセリフに、竜也はハッとした表情になってから、ニヤリッと嗤って言う。
「おやおや…もう、そんな時期かい?……いや、そう言えば、そうだね
それじゃぁ~……身の回りに気を付けないといけないねぇ……
こうなると、小学校周辺に現れたっていう不審者の情報は
あの狂信者達だけじゃないかもしれないね」
その内容から推察されるこれからの事態に、竜姫は舌打ちする。
「すると、まだ幼い優奈ちゃんや真奈ちゃん……と、その同級生…
それに、たぶん古代神人族の系譜を引くだろう桜ちゃんも
まずほぼ確実に、狙われやすそうね」
竜姫の発言に、和輝は苦い顔で言う。
「いや、下手したら、ここにいる住人全部だろう…使用人にいたるまで
あの狂信者集団が、白昼堂々と現れた場所だか
あいつら〔バンパイア〕や〔グール〕ってヤツは、異様に鼻が利く
そして、頭も、そういう意味じゃ…上回る
その上で、悪知恵も働くときているからな
確実に、自分達にとって極上の獲物が、ここに居ると判断して
近いうちに、襲って来るのは………残念ながら、確実だ」
和輝のセリフに、竜也はひとつ溜め息を吐いて言う。
「だったら、ウチの朝露総合病院に張ってある霊的結界
もう少し、きつくしないと駄目かな?」
竜也の質問に、和輝は首を振る。
「いや、それはたぶん大丈夫だろう
病院の方に、そういう危機感みたいなモンは感じないからさ
それに、ここには、こんなに魅力的な極上の餌がたぁ~んと居るんだぜ
あいつらは間違いなく、俺達を含めた、この屋敷の住人を狙いに来る」
和輝の確信に満ちたセリフに、竜也は過去のできごとを思い出す。
「ああ、そういえば、和輝は《先見》に近い能力を持っていたよねぇ
もしかして、その予感ってヤツは、それかい?」
竜也の言葉に、和輝は深く溜め息を吐く。
「たぶんな……でも、この能力は《先見》じゃないと思うぜ
俺には、そういう《能力》は無いからな
あったら、親父を死なせなかった」
和輝が、目の前でずぅ~んと沈み込むのを止められない竜也は、慌てて何か気分が浮上するような事柄を探しに走る。
あっ……不味い……何か…和輝の気持ちを浮上させるようなモノは………
勿論、輝虎や竜姫も、乙姫にいたるまで、落ち込む和輝を浮上させるなにかを探しに走る。
一時、シーンと室内が静まり返ってから、竜也がポンッと手を叩く。
「ああ…そうそう…なんか、狂信者集団の襲撃ですっかり忘れていたけど
あの未返却の医療機器のコト、父さんに頼んでおいたよ
ウチの弁護士と一緒に、あのレンタル会社を詐欺容疑で告訴するって
ものすごく、楽しそうにしていたから、もう気にしなくて良いよ」
竜也のセリフに、落ち込んでいた和輝も、その時の光景を思い浮かべて、思わずクスッと笑う。
ああ、なんか、おじさんが楽しそぉ~に、弁護士さんと話している姿
主に、電卓でどれぐらいとれるか?……とかしているのが、目に見える
「んじゃ、そっちは安心だな……竜也のおじさんの方でやってくれるなら
これで、ひとつ気が重いモンが消えるな
流石に、レンタル契約のはずなのに、高額医療機器の買い取りはキツイ
親父が生きているんなら、あの医療機器も意味があるけどな
流石に、使用できる親父が死んじまったら、あんな医療機器は
無用の長物どころか、負担にしかならなかったからなぁ…はぁ~」
ホッとして、そう言う和輝に、オズオズと言う。
「あのね、和輝くん……あの浄化と再生の儀式の前から、ずぅ~と
なんかこう……忘れているような気がするモノがあると思ったら
私、落合さんに連絡してないんだよねぇ……誰か、連絡した人いる?」
乙姫の言葉に、和輝・竜也・輝虎・竜姫は顔を見合わせて、苦笑いする。
そう狂信者集団の襲撃事件があったというのに、誰も、自分達の担任へと、その後の連絡をしていなかったコトに、そこでようやく気付くのだった。
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