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第7章 儀式という夢の後

375★藤夜さんの保護者は?

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 そんな会話の中、竜姫が3人のところに、新しいコーヒーを持ってきて配る。

 「はい、新しいコーヒーね……はい、和輝、輝虎、竜也、どうぞ」

 新しいコーヒーをもらった和輝は、ちょっと自分を落ち着ける為に、一口飲む。

 うん、ミルク多めのお陰で、猫舌の俺でも飲めるな。
 そういう意味じゃ、竜姫って手頃で持って来てくれるよなぁ~……
 これで、竜也と変に張り合ったりしなけりゃなぁ………

 などと、ほぉ~としながら思う和輝に、竜姫が言葉を続ける。

 「取り敢えず、藤夜さんの治療だとか、入院だとかをさせるならば
  まずは、保護者の説得かしらねぇ~……

  この場合の保護者に該当するのは、当主の白夜さんかしらねぇ?

  とにかく、保護者に、病院に入院させて、精密検査してみないかって
  聞いてみないとね………白夜さんじゃなきゃ、長男さんの………」

 名前が出ないらしい竜姫に、和輝が言葉を引き継ぐ。

 「長男……ああ、蒼夜さんの方な……うん、確かに…
  そっちの方が、だいぶ過保護っぽかったもんな」

 そういう和輝の言葉が終わるか終わらないかという時に、双子の様子を見に風呂場へと確認に出たきり、戻ってこなかった乙姫が、戻って来て報告する。

 「和輝君、取り敢えず、真奈ちゃんも優奈ちゃんも
  指定した、あっちの部屋で眠ったよぉ

  2人とも、お風呂からはあがっていたからぁ………
  濡れた髪をね、乾かすの手伝ってあげたんだぁ

  もう2人とも、目をだいぶこすっていたしぃ
  髪が乾いた頃には、ほとんど半分寝てたよぉ」

 乙姫の報告に、竜姫はクスッと微笑わらう。

 ああ、だから乙姫がなかなか帰って来なかったのね
 ほんと、乙姫って面倒見が良いからぁ~……

 「随分と興奮していたみたいだからねぇ~……
  2人に取っては、ちょっとしたイベントだっただろうからねぇ
  ぐっすり眠って、起きるのは、お昼かな?」

 竜姫の言葉に、和輝は肩を竦める。

 「ああ、たぶんな……今日は、マジでイベント盛りだくさんだったからな
  予定外が、ゴロゴロと怒涛のように来ちまったから………」

 ちょっとぼやくように言う和輝に、竜姫は両手を合わせて拝むようにして謝る。

 「ごぉ~めんねぇ~…ウチの親父も、それのひとつに入るモンねぇ」

 竜姫の謝罪に、和輝は軽く手を振って答える。

 「それはいいって……そのお陰で、急遽帰国した紅夜と
  蒼夜さんの愛犬〈カオス〉を拾ってこれたんだからさ
  特に〈カオス〉は、生命ギリギリって感じで、ヤバかったからな」

 そう言ってから、和輝は思い出し笑いをしながら言う。

 「クスッ………そういえば、生命維持の為に〈カオス〉に《光珠》の
  結晶体を飲ませたんだけど、あれって味とかはしないからさ
  すげぇ~不思議そうに首を傾げていたぜ」

 その和輝の発現で、その時の〈カオス〉の様子が脳裏に浮かんだ竜也は、ちょっと優し気な笑みをみせる。

 「確かにすぅ~っと溶け込んで、身体の内側からふわっと暖かくなるけど
  《光珠》の結晶体自体は、なんの味もしないからねぇ」

 それから、一瞬でヒキッとして、心底嫌そうに言う。

 「……じゃなくって、それも、やっぱり、あの狂信者集団の仕業だよねぇ
  まったく、本当に見境無いは、無情で鬼畜な殺人狂の集団め」

 小さい喪の可愛いモノをこよなく愛する輝虎は、やはりモノ言えぬ動物も同じように、可愛いと思っているので、コクコクと頷く。

 「本当に、可哀想なコトを平気でする」

 乙姫はソファーに座る竜也の手招きに応じて、その隣りにチョコナンと座りながら言う。

 「〈カオス〉ちゃん、あんなにガリガリに痩せちゃって可哀想
  きっと、飼い主が恋しかったんだよねぇ
  でも、和輝君に見付けてもらえて良かったねぇ」

 その乙姫の言葉に、竜姫は肩を竦めて言う。

 「あいつらには、人のこころってモン、ひとカケラも無いから
  そんな感情なんて、それこそこれっぼっちも、持ち合わせていないのよ

  まったく…これだから、一神教徒って嫌いなのよ
  なぁ~にが、唯一無二の絶対神よ………ねぇ~知ってたぁ~……」

 とブリブリする竜姫に、乙姫が小首を傾げて聞き返す。

 「なぁ~に竜姫ちゃん?」

 きょとんとする乙姫に、竜姫は言う。

 「あいつら一神教徒ってばさぁ……
  《魂》というモノがあるのは、人間だけだなんてほざいているのよ
  動物には、そんな崇高なモンは無いってね

  だから、この地球という名の地上に転生するコトを許されているのは
  《魂》を持つ人間だけなんですって……物凄い思い込みよねぇ~……

  今時いまどき、それも、自分達人間だけが【神】から与えられた
  特権なんですってぇ~……

  そんなコトを、堂々と教義でほざく、あいつらの【神】って
  いったいどぉ~んな【神】なんでしょうねぇ~………ほんとに

  だから、命ってモンを粗末にして、感謝ってモンひとつしないのよ
  自分達だって、多くの命をかてに生かされているってぇ~のにね」


  










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