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第7章 儀式という夢の後

372★和輝達は、真族を推察してみる

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 竜也の言葉に、竜姫もうんうんと頷く。

 「本当にね…アタシ達と違って、人為的な能力じゃなさそうだしね
  それで、アタシ達みたいに、治癒をコントロールできないの?」

 竜姫の言葉に、和輝は肩を竦めて、説明を続ける。

 「たぶん、桜は無理じゃないかなぁ?
  桜の話しからして、もともと、桜の一族……えぇ~と…真族か……

  その真族って、元々が身体の弱い一族だったんじゃないかな?
  これは、あくまでも、俺の憶測だけどな

  あの治癒能力は、たぶんに、弱い身体で過酷な環境に順応する為に得た
  生命維持の為の代謝能力なんだと思う

  元々が保有していた才能に、そうそう環境が追い打ちをかけたんだろう
  必然として、変化をうながしたんじゃないかと思うんだ

  おそらく、桜達の祖先が移住した地域に、大型の肉食系の獣とかが
  もとから生息していたんじゃないかな?

  ただ、もう別の場所に移動するだけの…食料なり体力なりが尽きて
  その危険な場所を定住地とするしかなかったのかもしれないな

  ほら、ああいう狂信者集団って、何時の時代にも、満遍なく居るから
  追われて、逃げた先が、そういう未開拓な未知の領域だったのかもな

  んで、狂信者集団は、大型の肉食系の獣が居る地域と知っていて
  逃げ込んだと思われずに、追及されなかった其処で細々と生き永らえた
  って、ところじゃないかな?…桜の一族が、隠れて生きて来た地域は

  んで、其処に適応する為に、大型肉食獣に襲われて、大怪我をしても
  あっという間に傷口を修復し、動けるほどには回復する必要があった
  だから、そういう方向性へと特化して、進化したんだろうさ

  だから、そういう必要のない時は、ゆっくりと、それこそ細胞生命の
  限界値まで代謝がゆっくりになるんじゃないのかな?

  緊急時にのみ、あの驚異的な治癒能力が発揮されるようにする為に……
  ただ、全員が全員、そういう能力を満遍なく持っていたとは言い難い

  また、血が濁らないように、定期的に外からの血もいれていたはずだ
  そういう風に、外の伴侶を得る為に出た者達だって、何人かに一人が
  戻れる程度じゃないかな?

  外に出て、ああいう狂信者集団に襲われて死亡する率は馬鹿にならない
  それに、俺達が遭遇した〔バンパイア〕や〔グール〕だっている

  まだ、あいつら以外の…俺達が見たことない、人類の天敵となるような
  異種もいるかもしれないしな………まぁ…それはさておきだ

  たぶんに、身体が想定以上に弱い者の為に、日本に居住地を作った
  つーところだと、俺は推測するわけだ

  まぁ…ここまでは俺の推測だから実際、どの程度があたっているかは
  このさいそれは、ある意味でどうでも良い…それを前提にしてだ

  桜は成長途中のセイかどうかはわからないが、過剰反応して治癒する
  かたや、藤夜さんは、完全に成長が終わって、停滞している状態だ」

 黙って和輝の説明を聞いていた竜也が、納得という表情になる。

 「ようするに、桜ちゃんが赤い瞳になるのは、同じ能力を有した者へと
  発する、救難信号みたいなモンに該当するわけだ

  身体の中の生命エネルギーを消耗し過ぎると、生命維持の危機を感じて
  発色する警報機ってところかな?」

 そういう竜也に、竜姫もうんうんと頷いて言う。

 「だよねぇ…確かに成長期ってモノは、心身共に何かと不安定になるわね
  精神状態によって、ホルモンバランスを狂わすなんてコトもザラだし」

 竜姫の言葉に、和輝は肩を竦めて言う。

 「ああ、たぶんなぁ………だから、結構長命だったり、他人の治療が
  できたりする同族に対して、自分は、もうエネルギー切れ寸前だから

  生命維持の為に、ちょっとエネルギーを供給して欲しいんだけどって
  言うような、合図みたいなモンじゃないかと思うんだ

  何度も言うが、これはあくまでも、俺の推測の域を出ない考えだけどな 
  危険で過酷な環境で生活していた期間に、真族っていう一族が培った
  ある種の生命維持法のひとつなんじゃないかな」

 竜也は、真剣な表情で考え込む。

 「もしかして、彼らは…………」

 和輝は、ふっと笑って頷く。

 「ああ、たぶん古代人と呼ばれる類いだろうな……それもかなり古い
  いや、古代神人族の法かな?………確か、ケルト地方にあったよな

  ダーナ神族とかいう、特殊な能力を持った種族が居たよな
  神族と呼ばれる者達が存在していたのは、確かな事実のようだからな

  その痕跡も、くっきりとあるからな……なにより伝承が多いだろ」

 竜也は和輝の推察に、ゴキュッと無意識に喉を鳴らす。

 「それじゃぁ…桜ちゃん達は、そういう流れを汲む種族の出って
  コトになるのかな?」

 和輝は肩を竦めて言う。
 
 「まぁ…あくまでも、これは俺の推測だけどな
  ダーナ神族と同じ血統ってコトはたぶん無いだろうが
  種族的に、似たような種族だったんじゃないかな?

  じゃなかったら、そのダーナ神族と呼ばれる前の、遥か昔に分岐した
  特別な能力を持つ種族のひとつかもなぁ………

  だから、長命種なんだろうしな……つってもなぁ、細胞の限界値まで
  代謝を引き延ばして、ゆっくりと更新しているだけだからなぁ……

  完全な長命種かってぇ~と…ちょい微妙な気もするけどな
  まぁ…桜がそう言っていたからな……たぶんに、そうなんだろ」

 和輝の言葉に、竜也がちょっと考えながら言う。

 「まぁ…それもありかな…犬猫にしろ、人間に近い霊長類のサルにしろ
  あれだけ、大きさや能力、それに寿命も違うモノがいるからね

  人間だって、肉食の大型動物に分類されるんじゃないかな
  他の動物同様、多種多様に存在していたっておかしくないね」









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