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第7章 儀式という夢の後

369★治癒能力も、向き不向きと強弱がある

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 そのセリフに、藤夜が和輝の首筋に齧り付き、それこそ〔バンパイア〕さながらに、生き血を啜る様を目の当たりにして、ちょっと茫然自失になっていた紅夜を思い出し、クスッと笑う。

 「そうだねぇ~……錯乱して自分が〔バンパイア〕だと認識している
  ってコトは、ちゃんと理解りかいしていても、実際を目の当たりにしたら

  まぁ~あんなモンじゃないかな?………まして、実兄だろう
  紅夜さんの反応は、ある意味で、普通だよ」

 竜也のセリフに、輝虎も気の毒そうに言う。

 「身内のああいう姿は、流石に、クルものがあるだろうな」

 2人の感想に、自分が〔バンパイア〕だと思い込んでしまった藤夜に、首筋を噛み付かれた当事者である和輝は、無意識に噛まれた首筋を撫でて言う。

 ふむ……こうして、丹念に…藤夜さんに噛まれた付近を探っても
 指先に傷跡の隆起らしきモン全然感じないな

 まぁ…あの〔バンパイア〕と違って〔ケガレ〕ってモンが牙に無いから
 治癒能力を阻害されることなく、綺麗に治癒できたようだ

 あはっ…我ながら、治癒能力も、一段と高くなったようだな
 それもこれも…やっぱり…あの《光珠》を作れるようになったお陰だな
 それも、必要に迫られて、何度も何度も結晶化を行ったコトが幸いした

 ここはやっぱり、いっそうの精進が必要だな
 それに《光珠》って、あればあっただけ、色々と使えるしな

 「う~ん……俺自身は、藤夜さんに齧られる立場になっちまったんで
  そのモノずばりを目の当たりにしてねぇ~から、何とも言えねぇ~な

  確かに、藤夜さんに首筋を噛まれた時、俗に犬歯って呼ばれている
  ソレが形状変化して、牙んなって皮膚を突き破って食い込む感触は

  ちっとばかり、痛かったけど………〔ケガレ〕は感じなかったから
  普通の怪我の痛みとさほど変わらなかったな」

 そう言いながら、傷跡が有ったはずの場所の首筋を無意識に撫でる和輝に、竜也は身を乗り出して聞く。

 「ふむ、ところで、和輝………あの後、結構色々と雑事があって
  今の今まで聞きはぐってしまったけれど、藤夜さんに齧られた
  首筋の傷跡は、結局、どうなんったんだい?」

 竜也の問いかけに、和輝はクスッと笑って言う。

 「勿論、浄化と再生の儀式をやるまえに、きっちりと治癒させてあるぜ
  こうして、丹念に触って、指の腹になぁ~んにもかんじねぇ~からな

  綺麗さっぱりと、治っているんじゃないかな?
  やっぱり〔ケガレ〕に該当するモンは………

  それが、藤夜さん自身が俺に付けたモノでも
  浄化と再生の儀式に持ち込みたくねぇ~からな

  なんなら、藤夜さんに齧られた痕跡が残っているか
  自分の目で診て、確認してみるか?竜也」

 和輝のセリフに、竜也はソファーから立ち上がる。

 「それじゃ、確認させてもらおうかな………」

 和輝は竜也が確認しやすいようにと、噛まれた側の首をそらして見せる。

 見事なモンだね、相も変わらず………この物凄い治癒能力………
 藤夜さんの変異したあの長く太い牙で穿たれた痕跡なんてモンが
 うっすらとも首筋の皮膚に付いてないんだから………

 普通だったら、傷口が治癒した後には、カサブタができるモンなんだけど
 そして、そのカサブタが剥がれた後に、赤子の肌のような真皮が現れる
 人間の代謝機能は、そういう仕組みになっているのにねぇ~……

 本来、カサブタが取れて、真皮になると、そこだけ色合いや手触りが
 微妙に変わるはずなのにねぇ~…そういう差異すらわからないんだから

 いや、ボクだって治癒ぐらいはできるけど、普通にカサブタできるよ
 こんな風に、もとの素肌と、治癒したところの肌の差異なくは無理だよ

 竜也は、和輝のそらされた首筋を、指先で確認するように撫でた後、ポツリと言う。

 「ああ……本当だね……傷跡ひとつない、綺麗な皮膚だね
  これぐらいの治癒能力なんて、流石に弱り切った藤夜さんには
  期待出来ないだろうねぇ………やっぱり………」

 竜也の言葉に、和輝は苦笑する。

 「ああ、それは流石に、まず無理だろうな……あそこまで酷いとな
  いっくら、再生能力に特化した一族の血を色濃く引いていたとしても

  あそこまで深く…それこそ、細胞本体から傷付いちまっているとなぁ
  だいたい、正気に戻ったとは言っても、ああなっちまった後じゃなぁ

  再生と治癒能力特化だとしても、まず、治癒能力以前だろうしな……
  怪我からの時間経過って、後々まで治療に影響すめんだよなぁ

  特に、火傷の類いは……それが顕著だからなぁ………
  藤夜さんの身体の皮膚は、まるで重度の被爆者みたいな状態だろ

  あれから見て、車にガソリンでもぶっ掛けられて焼け出された後
  車外に出た時にも、掛けられたんじゃねぇ~かな?

  いや、まぁ~…終わったコトは、もうどうしようもないとしてだな
  治癒もなぁ…向き不向きってモンがあるんだよなぁ…残念ながら……」

 和輝のぼやきに似たセリフに、竜也がソファーに座り直しながら、首を傾げる。

 「ふむ…向き不向きねぇ…その言い方だと藤夜さんは無理ってコトかな?
  再生と治癒に特化した一族と見ているんだろう、和輝は………」

 竜也のどの辺りがそうなのか?というニュアンスに、和輝はサラリと言う。

 「ああ、竜也の見解通り、藤夜さんはそこまで再生能力が強くなさそうだ
  藤夜さんに、桜並の再生能力があるんならなぁ………
  まぁ~…あれはあれで、色々な意味で問題あるけどな」

 その和輝の発言に、輝虎は首をウニウニと傾げる。

 











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