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第7章 儀式という夢の後

353★監視カメラの映像を確認したら………*side蓬莱家*

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 兄2人の深刻な表情での話しに、紅夜は座っていたソファーから立ち上がり、居間に設置されている監視カメラの記録を探す。

 爺やから、白夜兄上の又聞きの話しよりも、和輝が直接、桜に向かって
 その話しをしている映像が、まだ、残っているはずだ……何処だぁ~……

 和輝は、まだ白夜兄上と直接話して無いから、どこかに……あっ…あった
 桜と話しているコレだな……って、あの【狩る者】達の襲撃の時かよ

 だぁ~…マジで、和輝達って【狩る者】達相手に余裕あるなぁ~……
 襲撃されている最中に、悠長に別の話しを桜とできるんだからなぁ

 じゃなくって、ここは、この映像、兄上達と見た方が良いな
 深刻に話し合うよりも、まずは、目で見て確認だよな

 「蒼夜兄上、藤夜兄上、白夜兄上、その時の映像が見付かりましたので
  取り敢えず、話し合いは中断して、確認しませんか?」

 紅夜の言葉に、三人の兄は居間に設置されている大画面とは別の、もうひとつの中型の画面へと視線を向ける。

 「紅夜?」

 疑問を含んだ声で問い掛ける白夜に、紅夜は肩を竦めて答える。

 「今日の襲撃は、和輝達が乗った車の後に付いて、門が閉まる前に
  そこから【狩る者】達が侵入したようです

  なのに、桜のヤツ…のこのこと、出張っていたみたいです
  そこで、そういう話しになったようですよ

  詳しい内容は、このままご覧ください」

 そう言って、記録されたモノを、重要な侵入された部分までちょっと巻き戻し、リモコンを手にしたまま、紅夜はソファーへと戻り、再び座りなおして再生を押す。

 中型の画面に【狩る者】達がわらわらと大勢侵入して来た時の映像が流れる。

 和輝達と【狩る者】達の言い合いが始まったあたりで、紅夜は両者の会話内容を聞き取りやすくする為に、音声のボリュームを大きくする。

 蔑に挑発的に見下して言う和輝の若い声に対して、深みのある大人の声が、自らの行為が如何に正当かを主張する声が混ざる。

 そんな中、桜が困惑混じりの心配そうな声が入る。
 紅夜を含めた4人は、一連の会話内容と映像が流れるのを黙って聞いていた。

 小一時間、時間経過も忘れて、その映像に見入った4人は、和輝達が意気揚々と後始末を警察官達に任せて、その戦闘現場から立ち去るまで、一言も言葉を口にせず、見入った。

 必要な場面を、一部始終見終わった紅夜は、中型画面の方のスイッチを切って言う。

 「これ見るとなぁ…マジで、こう言っちゃなんですけど

  あの時、あの場所にペットシッターの契約した和輝達兄妹と
  その友人達が来てくれてほんとぉ~に、良かったと思いますね

  そうじゃなきゃ…あの数の【狩る者】達を、ああも容易く
  こちらが無傷の状態で、撃退なんことできなかっただろうし

  【狩る者】達の実態を実際に知っていて、その対処方法を知っていて
  撃退した経験のある者なんて、そうそう居ないでしょうからね
  あいつらに狙われたら、まず、その標的となった者は確実に殺される

  それが、常に【狩る者】達に狙われている、俺達の認識だ」

 その紅夜の言葉に、蒼夜も白夜も、そして、視力を失った為に、映像自体は見えないが会話内容を聞いていた藤夜も、同じ感想を持った。

 自分達だけだった場合、身内に怪我人を出さずに撃退するコトは、不可能だっただろう…………と。

 まして、今は、一族の者へと変化の真っ只中にいる桜が、この屋敷にはいる。

 そして、その【狩る者】達の標的は、まさしく、その桜だったから………。

 もし仮に、自分達だけで【狩る者】達を力尽くで退しりぞければ、退しりぞけたで、この街に住み続けるコトは不可能になっていたのは、火を見るよりも明らかだった。

 また、人間から真族への変移中は、環境の変化を殊の外嫌う為、桜をこの屋敷から、別の地に持つ屋敷に移動させるのは、事実上不可能に等しいのだ。

 最悪、安住の地のひとつと新しい仲間の両方を失うコトになっていたかも知れない事実に、今更ながらに、和輝とペットシッター契約をしたコトにホッとする。

 そう、真族にとって、最高の守護神を得ていたコトに………。

 白夜は、桜が〈レイ〉と〈サラ〉のペットシッターとして、和輝達兄妹と契約して欲しいとねだられた時に快諾した、自分の判断を思わず褒めたくなってしまう。

 あの時、迷わず桜の望みのままに、和輝達兄妹を手に入れて良かった
 今更ながらに、本当に英断だったな

「本当にな………我々だけでは、無傷で撃退など夢のまた夢だった
 【狩る者】達と、私達の相性は最悪だからな

 それに、もっとも幸いなのは、和輝達は、我々の異質さを気にしない
 ちょっと普通の人よりも、特化した能力を持つ程度としか認識していない

 そういう意味では、私達になんの疑念も持っていないようだな
 それどころか、私達の住む、この地を神域だとと言い切り
 真族を『良き神々』の末と言い切るのだからな

 私達にはわからない感覚で、あのおぞましい〔バンパイア〕共と
 私達真族と〔バンパイア〕の違いを明確に見分けているようだな」

 白夜の発言に、藤夜が首を傾げながら言う。

 「彼らは録画されたモノの中で、何度も言っていましたね
  人間を食料とする、奴ら特有の、独特な臭気と気配があると
  それで私達真族と〔バンパイア〕を見分けているようですね」 












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