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第6章 浄化の儀式
342★無事、藤夜は正気に返るが困惑する*side藤夜*
しおりを挟む「藤夜兄上、俺の話しを、落ち着いて聞いてくれると嬉しいんだけど」
ちょっと、口ごもりながら、そう言う紅夜に、藤夜は首を傾げて言う。
「ふむ、私は落ち着いているよ…それで、何がどうなっているのかな?」
知的で物静かな、狂信者集団…もとい【狩る者】達に、襲撃される前の藤夜の口調に、紅夜は涙を滲ませながら言う。
「藤夜兄上が親父と一緒に、車の事故にあってから、実は結構経つんだ
辺りを暗く感じるのは、その事故で視力を失ったセイなんだ」
そんな紅夜の言葉にかぶさるように、蒼夜も正気を取り戻した藤夜に話しかける。
『藤夜、やっと正常なお前と話せるのに、鏡の中なのは寂しいよ』
その声と、気配を身近に感じないコトで、藤夜は内心で脂汗を流す。
はっ?……えっ?……なに鏡の中?……って、もしかして人前で
鏡の通信魔法を堂々と使用しているということか?
いやいや………それは不味いだろう……どう考えても、私の周囲にいる
見知らない気配の持ち主達は、人間の気配しかしないのだが………
そんな普通の人間達の前で、堂々と鏡の通信魔法を使っているのか?
大丈夫なのか?……本当に、いったい何がどうなっているんだ?
そう言えば、蒼夜兄さんは『やっと正常なお前と話せる』っと言っていた
私は、事故にあって、正気を失っていたというコトなのか?
その上で、事故のセイで、視力まで失ってしまったというコトか?
だから、いくら目をこらしても、何も見えないのか………
いやいや………それよりも、鏡の通信魔法を使っているというコトは
蒼夜兄さんは、今、ここに居ないというコトなのだろうな
今、ここには、どう考えても、気配からして人間が多数いる
後で、紅夜にでも、ゆっくりとコトの経緯と経過を聞いてみよう
困惑顔で首を傾げる藤夜に、やはり、藤夜が正気に戻ったコトに喜ぶ白夜が、やはり鏡の中から藤夜に話しかける。
『藤夜兄さん、貴方は、父上と一緒に事故にあい、狂信者集団に………』
えっとぉ~……不用意過ぎないか?…一族の長の白夜もか?
いくらなんでも、無防備過ぎではないか?人間だろう?
そんな藤夜の葛藤を知らない和輝は、無事に浄化と再生の儀式を済ませたコトで、紅夜に振り返って声を掛ける。
「ふむ、もう大丈夫そうだから、身体を支えてやれよ紅夜
藤夜さんも、白夜さんや蒼夜さんに声を掛けられて気付いてないけど
ちょっと足元ふらついているからさ」
和輝に声を掛けられて、紅夜もはっとする。
「ああ、そうする」
そう言って、紅夜は藤夜の隣りに立ち、その手を取って支える。
紅夜が藤夜を支えるのを確認し、一生懸命に鏡の中から正気に戻った藤夜に話しかける白夜と蒼夜に、和輝は肩を竦めて言う。
「たぶんにだけど、最初は、単なるパニック症候群だったと思うぞ
突然、ああいう狂信者集団に襲われて、視力まで失ったんだ
それが、何か別の要因を足されて、自分が〔バンパイア〕だと
思い込むようになり、周囲の人達に被害を出したコトで
座敷牢に封印されて、精神科医にかかるコトもできなくなって
精神が深く傷付いたまま、回復できずに、次第に来るっていった
つーのが、一番真相に近いと思うんだが………
精神に負った傷は、目に見えない分、ものすごく厄介なんだ
大概、気付いた時には、悪化しすぎて、手の施しようの無い
どうしようもない、状態になっているモンだからさ」
和輝の言葉に、竜也も自分の見解を口にする。
「うんうん……ボクもそう思うね
まったく、問題行動をとるからといって、専門の医師にも診せずに
座敷牢に入れるというのは、回復から一番遠ざかる方法だと思うよ
もっとも、名門とか旧家と呼ばれる家には、こういうコトがいまだに
結構ざらにあるってコトは知っているけどね
もっと建設的に考えれば、結構、色々と解決策はあるのにねぇ~
臭い物には蓋じゃ、何時までも同じコトを繰り返すだけだよ」
そんな竜也の言葉に、紅夜は何とも言えない表情をする。
うふふふ………精神科医に診せるってのは、普通の人間ならイイけどな
そう、普通の人間なら、どうってコトないだろうけどな
藤夜兄上は、一族の者だから《力》はあるし、思い込みで爪も牙も
伸びていたから、人前に出せる状況じゃなかったんだよ…言えないけどさ
そんな紅夜に気付いた和輝は、クスクスと意地悪く嗤って言う。
「おぉ~やおや……紅夜君てば、不服そうな顔だことぉ~………
爪も牙も伸びていたから、医者に診せられなかったって言うつもりだろ
でもな、藤夜さんに強力な催眠術をかけていた蒼夜さんがいたんだろ
なら、精神科医や医師、藤夜さんが普通の状態に見えるような
催眠術を掛けておけば良かったじゃん
そしたら、なんの問題もなく診察を受けれたんだぜ
そうすれば、身体にあんな酷い傷跡が残るコトも無かったんだぜ」
言外に、簡単な解決策があるのに、気付かなかっただろうという、和輝の尻馬に乗って、竜也も楽しそうに言う。
「そうそう、自分を〔バンパイア〕と思い込んでいる患者だって
精神科医に思い込ませれば、簡単だったと思うよ
旧家の大人って頭が固いから……しょうがないと思うけどね
でも、子供の意見を聞いてみるのもイイ方法だったと思うよ」
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