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第6章 浄化の儀式

341★爺や達の苦労+状況がわかりません*side藤夜*

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 後に残ったのは、シーツで包まれ巨大な一塊ひとかたまりとなった衣装を前に、玄関でふかぁ~い溜め息を吐く爺やだった。

 そうしていてもしょうがないと、爺やはもう一つ溜め息を吐く。

 溜め息を吐くと幸せが逃げて行くとは申しますが………
 今回ばかりは、吐かずには居られませんねぇ………はぁ~……

 さて、時間もありますからね、とにかくコレ衣装を運ばせましょう
 とは言え、このままじゃ少々運びづらいでしょうねぇ………

 「清瀬、高嶺、武田、取り敢えず、さっさと運んでしまいましょう
  取り敢えず、この一つ塊になっている衣装を小分けにして………」

 と言ったところで、名前を呼ばれなかった使用人の一人平山が、玄関内にいる爺やの側へ、スッと進み出て言う。

 「失礼します、爺や様……縫製部の平山です

  紅夜様に『衣装を取りに来い』と呼び出された時
  たぶんに、そういうコトも、ありましょうかと思いまして

  僭越ながら、持ち運びの為のカゴを用意してまいりました
  ただいま、運びやすいように、小分けにいたします」

 そう言って、バスケット型洗濯カゴを六つほどスッと出して、シーツに包まれた巨大な衣装を、手早く六つのカゴへと分け入れる。

 ボディーガード達3人と、平山込みの使用人3人がそれぞれのカゴを一つづつもち頷き合う。

 そして、爺やは儀式終了後にそして着る、藤夜の為の衣装を大切に持って、本邸に戻って行ったのだった。

 それゆえに、桜の問題発言は、紅夜と同じように、疲れ切った爺やによって、綺麗に忘れ去られてしまうのだった。

 当然、白夜や蒼夜に、そのやり取りに含ませる問題発言は、ひとつも伝えられるコトは無かったのも、確かな事実だった。

 
 そして、30分後には、手渡された衣装を全員が纏い、大掛かりな大舞台と化した其処で、藤夜の狂った意識と認識を、正常に戻す為に、浄化と再生の儀式が執り行われるコトになったのだった。




 ◇◇◇◇◇
 



 和輝の特殊な声による呼び掛けと、本当にアルコールの炎だけなの?という、盛大に燃え上がる火焔の《力》を浴びた後、清めの水を全身にかぶり、紅夜の手によって《光珠》の結晶体を大量摂取させられた結果。

 見事、狂乱に堕とされていた藤夜の意識は、はっきりと目覚めた。

 「よしっ…手応えバッチシ………成功だ……紅夜、声をかけてやれよ」

 和輝の声に反応し、藤夜は首を傾げていた。

 ………?………誰だ?……聞いたことの無い………少年の声?……
 いや…それよりも…私は…今まで、何をしていたのだ?

 そして、藤夜は今の自分の状態がおかしいコトに気付く。

 なんだ?…どういうコトだ?…視界が暗い?…闇夜でも見えるはずなのに
 いや、それよりも、私の周囲に居る者達の気配……見知らぬ者達ばかり?

 警戒心を高めた藤夜は、視力が効かない状態にあるコトを無意識に悟り、知覚意識をそっと周囲に広げて視た。

 ふむ…少し離れた場所に居る者達は……私の見知っている者達の気配だな
 はぁ~……これは、いったい、何がどうなっているのだ?

 再び不可解そうに首を傾げた藤夜は、その身近にある多くの気配の中から、自分の見知った、馴染みのあるモノを見付けて、そちらへと向き直る。

 うん?……この気配は、紅夜か?……というが、そういえば少年の声が
 『紅夜、声をかけてやれよ』って言っていたな……それに『成功』と?

 何が成功なのかはわからないが、紅夜に聞けば良いというコトだろう
 今の私は、どういう状態にいるのか?…何があったかを聞こう

 そうすれば、今の私の状態と状況などがわかるはずだ
 取り敢えずは、聞いてみるか?

 藤夜は周辺を見回す仕草をしてから、唯一認識できた紅夜に向かって尋ねる。

 「紅夜?……なぜ、私は、こんな暗い場所に居るんだ?
  ここは何処だ?……何処かの地下室か洞窟にでも居るのか?

  ……いや、頬や肌に風を感じる?……密室ではないのだな?
  それに、なぜ、こんな妙な恰好をしているんだ?」

 自分の肌に感じる風に眉を顰めた藤夜は、自分自身を確かめるように、身体を触り、その身に纏う衣装に首を傾げていた。

 これはなんだ?…肌触りは良い…が、カタチが何時も着ていたモノと違う
 これだと…どこぞの民族衣装のようなモノだろうか?

 なにやら、装飾もかなりあるようだ………はぁ~…私の趣味ではないが
 ……ただ、こういうのを…小さな桜は好きだったな……桜の趣味か?

 そんな藤夜に、紅夜は覚悟を決めて、今までに何があったかを説明する。











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