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第6章 浄化の儀式

338★和輝は、宝石を生み出す……妖精?精霊?神人?

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 抵抗するだけ無駄と判断した和輝は、儀式用に選んだ二つ器以外の、瀟洒な底浅の器に貯めた《光珠》の結晶体をスイッと差し出す。

 それを背後に張り付いた状態で聞いていた紅夜は、嬉々としながら長い腕をスイッと伸ばして、一つの《光珠》の結晶体を摘まみ上げる。

 「まじ…嬉しいなぁ~………んじゃ、俺はコレがイいなぁ……ふふふ
  言ってみるもんだなぁ………いただきまぁ~す」

 和輝の背中に張り付いたまま、パクッと口に《光珠》を入れた紅夜を見て、桜も器の中にある《光珠》を選ぶ。

 「桜は、この一番キラキラしているのがイイですわ……いただきます」

 そして、紅夜と同じように、なんの躊躇ためらいもなく口へと運ぶ。
 2人の行動を見て、ワラワラと側に集まって来た優奈や真奈、竜姫に竜也、興味津々で寄って来た乙姫や輝虎を見て、和輝は苦笑しながら言う。

 「はいはい、好きにしてください」

 底の浅い器の中でキラキラと輝く、和輝が作り出した《光珠》の結晶体を覗き込んだ乙姫が、夢見がちな少女のように言う。

 「ねぇ~ねぇ~…竜姫ちゃん……衣装のセイでさぁ…和輝くんてば
  宝石を作り出す精霊族って感じがするよねぇ~………

  なんか、すごぉ~くファンタジーって感じで、ワクワクするの
  だって、その|宝石を食べる、妖しい人達もいるんだもん

  それに、和輝君の背中にベッタリと縋り付いている紅夜くんや
  真正面から《光珠》の入った器を覗き込む桜ちゃんてぇ~……

  う~ん…と…そぉ~ねぇ~…ああ妖精族って感じ……ねっ……」

 乙姫の言葉に、竜姫はちょっと答えるタイミングがズレてしまう。

 「えっ…ああ……うん……そう……かもね」

 乙姫の的確な表現に、綺麗なモノや愛らしいモノに弱い輝虎が、コクコクと頷く。

 「うん…うん…確かに…そういう風に見えるな」

 そんな和輝を黙って見ていた優奈も、他人事として感想を述べる。

 「うん、本当に、そんな感じだよねぇ~……」

 同じように、黙って経過を見ていた真奈は、肩を竦めて、別の感想を口にする。

 「でも、和輝兄ぃだったら、精霊とか妖精よりも神人族とかの方があうね
  そういう一族の血を引くの方が……似合っていると、アタシは思うな」

 真奈の感想に、竜也も和輝の持つ器から、一つ《光珠》を摘まみ上げながら言う。

 「う~ん……それってイイねぇ~……人ならざる者の血を引く人間って
  確かに、和輝に似合っていると思うよ

  だって、人間だから、人間に優しいからねぇ~………
  特に、弱い者や小さい者には優しいから、なおさらね」

 それとは正反対の感想を持った為に、乙姫の言葉に答えるタイミングがズレてしまった竜姫は、首を振って言う。

 「あら、和輝だったら、妖魔とかの方が似合うと思うわよ

  人間に優しいし、綺麗な者や可愛い者に優しいから、そっちの方が
  よっぽど似合うんじゃないのぉ~………

  時に、神や精霊の方が、よぉ~っぽど残酷だしねぇ
  ほら、基準外は排除したがるでしょ………」

 だが、竜姫の感想を聞きながら、桜は平気で言う。

 「桜は、精霊とか妖精とかの方が、和輝には似合うと思いますわ
  でも、和輝が大雑把な人間で良かったと思っていますわ

  一般的に考えれば、ちょっと変な部類に入る、桜や紅夜を見ても
  あんな風になってしまった藤夜兄ぃ様を見ても、平気なのですから」

 桜のなぁ~んも考えていませんというような感想に、紅夜は内心でガマのごとく、ダラダラと脂汗を流しながら言う。

 「はははは………確かに、人間以外の血が入っている方が似合うよな」

 話しの内容は、かなぁ~り問題があるものの、わき合いあいとそういうコトを何気なく話しをする中、和輝は妹達とちょっと考え込んでいる輝虎や乙姫、竜姫に声をかける。

 「はぁ~…好きに言っていろよ…ほら、竜姫…お前もいるだろう
  乙姫も輝虎も、一つ食べておけよ…疲労回復するから………

  ぅん?…あれ?…玄関に人の気配があるぞ
  紅夜ぁ~爺やさんが、衣装を取りに来たかもしんねぇ~から見に行けよ
  与太話しは、ここまでにしてさ」

 頃合いを見計らって、そう助言してくれた和輝に、紅夜はホッとしたような表情で頷く。

 「あっ…ああ…そうだな………ちょっと、玄関に行って来る」

 ほんの数メートルが途轍もなく遠く感じながら、紅夜は玄関へと出る。
 ちょうど、呼び鈴を鳴らそうとしたところで、ドアを開かれた爺やは、少しだけ双眸を大きくするが、紅夜に何も言わなかった。

 そんな爺やの様子を思いやる余裕の無い紅夜は、さらりと声をかける。

 「爺や…悪かったな……中に入れよ」

 和輝の家の時と同様、爺やは家には上がるコトを拒む。

 「いいえ、ここで充分ですから………」

 そんな爺やにちょっと困った紅夜は、不思議そうに首を傾げて聞く。

 「なぁ~爺や、なんで、そんなに嫌がるんだ?」
 






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