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第6章 浄化の儀式
336★何時の間にか、儀式後の藤夜の衣装は出来上がっていたようです
しおりを挟む紅夜からのもっともな内容を含んだ指示に、電話向こうの爺やが頷いて答える。
『はい…わかりました…すぐに準備させます』
爺やからの言葉に、ちょっとホッとしながらも、紅夜は進行状況を報告する。
電話の向こうにいるであろう兄達に、和輝から聞いた儀式の内容をどういう風に説明したらイイんだと考えながら、紅夜は今の自分の状態を取り敢えず伝える。
「俺は、儀式の為の衣装に着替え終わった
もう和輝達も着替えているから、できるだけ早く出来上がった衣装を
こっちに受け取りに来てくれないか?
そん時に、爺や自身も和輝からざっとした流れを聞いた方がいいと思う
参加するボディーガード達や使用人達を取り仕切るのは、爺やだから…
俺は、藤夜兄上の浄化と再生の儀式のメインで参加するコトになるから
儀式中に直接指示を出すコトはできそうにねぇ~しな
その辺は、なんだったら白夜兄上か、蒼夜兄上と相談してくれるか
鏡の中からでも、指示ぐらいは出来るだろう
あと、和輝から簡単な浄化と再生の儀式の練習?風景を撮影した
データーをもらったから、今そっちに送る
取り敢えず、ざっとした流れは、観て理解ると思う
一応は、そっちの参加者全員で観ておいてくれ………」
紅夜からの言葉に、色々と指示されて、実際には大忙しの爺やは、内心をよそに置き、何時もの落ち着いた口調で答える。
が、やはり、少し声のトーンが落ちていたコトは否めなかった。
『はい…わかりました……それでは、ただいま、手の空いた者を連れて
そちらに衣装をいただきにまいります』
爺やからの返事を聞き、紅夜は唐突に思い出したコトを聞く為に、和輝を振り返る。
「ああ、そうだ…和輝ぃ……藤夜兄上の衣装は?」
どうなっているんだ?と言う問いかけに、和輝は簡潔に一言で答える。
「無い」
あっさりとした一言に、紅夜は?を浮かべて、再度問い掛ける。
「えっ?なんで?」
説明を求める紅夜に、儀式の手順を知っている者ばかりじゃないコトを改めて思い出し、和輝は説明する。
そう、紅夜は儀式の練習の時、本邸のほうの用事で参加していなかったので、そこの部分の説明を聞いていなかったのだ。
「あのな紅夜、藤夜さんの邪気を祓う為、浄化の火焔をかけるんだ
その為に、全身に特濃食塩水とある特殊な防火の薬剤を塗ってあるんだ
下手に衣装があると邪魔になるし、燃えすぎて火傷する危険があるんだ
ぶっかけたアルコールだけなら、火傷する心配は、ほぼ無い
衣装を身に着けていると、そこで火焔が燻って火傷するコトになるから
だから、素肌に……直接…塗ったんだよ
衣装なんか身に着けたら、薬品や塩水を塗った意味がなくなっちまう
俺達は、藤夜さんの身体を如何に傷付けずに、それでいて邪気を
浄化する為の、聖なる火焔を全身に纏わせるかが大事なんだ
だから、藤夜さんが浄化と再生の儀式中に身に纏う衣装はないんだ
儀式前は、なんか頭からすっぽりかぶれるモノ着けてもイイとは思う
そして、再生の儀式の後には、普通になんか着ても大丈夫だけどな
そういうコトだから、藤夜さんの衣装は無いんだ、紅夜」
厭なコトを思い出して、げんなりした表情でそう言う和輝の言葉に頷き、紅夜は繋がったままのスマホに向き直って言う。
「………だそうだ…爺や……大鏡の設置が済み、そちらの準備が整ったら
藤夜兄上には、シーツをかぶせて、あの場所に連れ出してきてくれ」
次から次へと出される指示に、諦めの入った爺やの声が、空しく答える。
『はい、たまわりました』
そんな会話の中、いったん側を離れた竜也が、嬉しそうな表情でかけより、柄物で作られた衣装を広げて言う。
「和輝ぃ~…浄化と再生の儀式が終わった後の藤夜さんの衣装だよぉ~
どうかなぁ~コレ…イイ感じにできたと思うんだけどボク達り力作」
和輝は、目の前で広げられた大柄の模様が入っている衣装に内心で眉を顰める。
うぅ~ん………なんか…ものすごぉ~く……無駄に派手なんだけど
…なんて答えてイイやら……まっ…俺が着るわけじゃねぇ~し…いっか
藤夜さんの目が見えねぇ~って……別の意味で助かるかもなぁ…はぁ~
どっちかっつーと、色柄よりも手触りだが……うん…大丈夫だな
和輝は、目の前で広げられた、藤夜用の儀式後の衣装に、ついっと手を伸ばして、その記事の手触りを確認しながら聞く。
「藤夜さんの儀式後の衣装なんて、何時作ったんだ?」
和輝の内心など気付きもしない竜也は、その質問ににこにこしながら、答える。
「やだなぁ~…和輝、ボクの他に、裁縫好きの乙姫や優奈ちゃんだって
ここには居るんだよぉ~…これぐらいのモンは、簡単に作りるさ」
どうやら、3人の共同作業らしいソレを、改めて見て納得する。
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