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第6章 浄化の儀式

332★紅夜、和輝から儀式の説明を受けて不安に思う

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 もし、今、和輝が考えているコトを知ったなら、本当に、蓬莱邸に帰還している白夜達は、真っ青になったコトだろう。
 だが、賢明な和輝は、取り敢えずの沈黙を選んでいるので、何事もなくコトは進んで行くのだった。

 黙って、桜に抱きつかれている自分を観察していた和輝に、紅夜は声をかける。

 「よぉ~…和輝……もしかして、儀式の練習は、もう済んじまったのか?
  もしまだなら、俺も参加してぇ~んだけどよ
  やっぱり、練習しておいた方がイイだろ?」

 紅夜の言葉に、取り敢えずのひと通りの流れにそった練習を簡単に済ませた後なので、和輝はお気楽に答える。

 「ああ、一応はひと通りの流れの練習は終わっているぞ
  つっても、優奈と真奈は、俺に、さっき選んだ器を差し出すだけだし
 
  桜の方は、器に水と酒を入れるだけだしな
  一番重要なのは、実は紅夜、お前がする役目だったりする

  俺が《光珠》とかを入れた酒や水を飲ませるのが紅夜の役どころな
  酒や水が満たされた器を藤夜さんに手渡して、無理やりでもイイから

  とにかく、飲ませればオーケーって言う、重要だけど単純な役割だから
  そういう意味で、練習しなきゃって気張る必要はないぜ

  一番重要なのは、紅夜が藤夜さんに、器に入れた酒や水を飲ませるコト
  それさえ出来れば、大丈夫……ある意味で、そこができれば、成功だ

  だから、どんな手段を使ってもイイから、飲ませる方法を考えておけよ
  最悪、口移しでもなんでもイイから、絶対に飲ませるコト
  後は《光珠》の影響で、精神が落ち着くから何とでもなる

  つーことで、一応の流れ、目で見て確認したいだろと思ってさ
  スマホで録画しておいたから、確認しとけよ

  なんなら、爺やさんにでもデーターを送っておけよ
  そしたら、爺やさんの判断で、参加者にデーター配信してくれるだろ

  流れさえ理解わかっていて、邪魔されないで紅夜の渡す水と酒
  飲んでもらえれば、あとはこっちでなんとかするから大丈夫

  幸い、藤夜さんて、あんな目に遭ったのに歪んでないし穢れてないから
  刷り込まれた部分を、浄化の火焔で焼き尽くせばイイだけだしな」

 和輝の言いように、紅夜は脂汗を流す。

 繊細で、用意周到かと思えば、大胆で大雑把な計画だな
 ほんとぉ~に…それで、藤夜兄上が受ける儀式って成功するのか?

 その内心をそのままに、紅夜は思ったコトを、そのまま言う。

 「なんか、すごくいい加減のような?…印象を受けるんだけどぉ~…」

 心配気に言う紅夜に、和輝はケロケロと笑って言う。

 「そんなに心配か?……んじゃ、簡単に儀式の流れを説明してやるよ
  まず、紅夜が、桜達が選んだ赤い器に、藤夜さんに清めの酒を飲ませる

  藤夜さんが、全部の酒を飲み終わったら、輝虎が穢れの浄化を祈って
  純度の高いアルコールを藤夜さんの全身へとぶっかける

  それに、俺が、祝詞を唱えながら、浄化の為の火焔を藤夜さんに放つ
  ちょっと、視覚的に衝撃あるから、気をしっかり持ってくれよ

  ちゃんと、その辺は爺やさんから使用人達に先に周知しといてくれな
  勿論、儀式に参加する人達には全員、言っておいてくれよ、紅夜

  使用するのは、その為に調整された、高純度の特殊なアルコールだから
  一瞬だけ派手に燃え上がるけど、見た目だけで実害はほぼ無いから

  でもって、その浄化の火焔を消すのは竜也の役割なんだ
  ちゃんと、竜也が一瞬で消してみせるから、大丈夫だぜ

  それで、穢れと共に、藤夜さんに張り付いた悪霊刷り込みは浄化される
  
  勿論、その間に俺が精神同調して、藤夜さんに残った澱みを取り除く
  幸い、藤夜さんは俺の生き血を飲んでいるから内側から同調できる

  俺の《生気》を含んだ血が体内にある間の方がやりやすいんだ
  完全に血液を消化しきる前の……きょうの内が良いのはそういう意味だ

  勿論、藤夜さんの身体には、頭のてっぺんの髪の毛から足の指先まで
  全身、特殊な防火の薬剤たっぷりと塗ってあるから、火傷はしない

  だから、火傷って意味じゃ、負傷したりしないから大丈夫だぜ
  それを、特別な血筋のお陰で、浄化の火焔で燃えたのは穢れだけ

  そう、藤夜さんに取り憑いていた悪霊刷り込まれた思い込みだけって
  感じさせればオーケーだから

  そしたら、今度は失った聖性を取り戻す為にってコトで
  青い器に、俺が作った《光珠》の結晶体を入れて、また紅夜が飲ませる

  それで、浄化と再生の儀式は完了………なっ…けっこう簡単だろ
  こういう、穢れを祓うような儀式なんてモンはな

  複雑怪奇に、厳かにやるよりも、単純明快の方が効くんだよ」

 何でもないコトのように、軽くそう言う和輝に、説明を受けた紅夜は、不安が増したとばかりに、情けない声をだす。

 ほんとぉ~に、大丈夫なのかぁ?いや、火傷は心配してないけどさ
 藤夜兄上に特殊防火剤を丹念に塗ったの観て知っているからさ

 それでも、大掛かりな下準備のわりに、かなぁ~りちゃっちくないかぁ?
 それで、本当に、藤夜兄上は正気に戻れるのかよ

 いや、でも、和輝が儀式を急ぐ理由は理解わかったけどさ
 身体の内側からも清めるってのはな…それでも、かなり簡単じゃねぇ?

 「あのなぁ~……」
  
 儀式の説明をした和輝に対して、不安を露わに詰め寄る紅夜に、竜姫はクスッと笑う。 













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