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第6章 浄化の儀式

330★竜姫の父親からお土産を忘れていました

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 密かに本邸に帰還している蒼夜と白夜に、紅夜がコトの経過を話す、少し前、和輝はゲストハウスに戻る途中で、竜姫の父親から手渡された封筒やお土産の存在を思い出していた。

 はぁ~……取り敢えず、儀式の場所は決まったし………と、あっそうだ
 竜姫の親父さんから預かった封筒とお土産……あれ?…どこにやった?

 えぇ~とぉ~……〈カオス〉を抱えた紅夜と一緒に、車から降りた時
 うわぁ~……持って無かったような気がする………てぇ~とぉ………

 封筒もお土産も、ディーバックに放り込んだままだわ
 やっべぇ~……今の今まで、すっかり忘れていたぜ

 そのコトに気付いた和輝は、ゲストハウスに入る直前できびすを返し、車の中に置き忘れたディーバックを回収しに向かう。

 部外者である自分達が、蓬莱家に使える者達に監視されているというコトに気付きもしない和輝は、兵器で車庫にある車を開けた。

 おっ……やっぱりここにあったか………うん、封筒もお土産もあるな
 はぁ~…今日は色々とあり過ぎて、なんか忘れモンが多いわ

 ディーバックを手に、車のドアを閉めたところに、ボディーガードのリーダーの補佐を務める高嶺が声をかけた。

 「神咲さん、どうかしましたか?」

 側に人の気配が来たコトに気付いた和輝は、何の気なしに振り返って答える。

 「ああ、車ん中にディーバックを忘れちまってよ……取りに来たんだ
  ……んで、そっちはどうかな?

  あいつら…狂信者集団の置き土産とかは無かったか?

  浄化の火炎を使った儀式の最中に、また狂信者達に乱入されるのは
  流石に、御免こうむりたいからな」

 そう和輝に聞かれた高嶺は、今入っている報告をそのまま告げる。

 「取り敢えず、敷地内に監視カメラや集音機の類いは見付かってません

  ただ、当家に繋がる敷地外の電線に、得体の知れない配線が絡んでいた
  という報告がありました

  蒼夜様のご愛犬〈カオス〉の到着連絡が、成田空港の検疫所から
  こちらに繋がらなかったのは、それが原因かと思われます

  発見したモノは、すぐに排除しました」

 高嶺から、蓬莱家に繋がる配線の敷地外からの干渉の事実を聞いた和輝は、自分の予想通りだったコトに溜め息を吐く。

 やっぱり~…紅夜や桜に、そうじゃねぇ~かなぁ~と思って、言ったけど
 ほんっとぉーに、あの迷惑極まりない狂信者集団って……いらねぇー…

 「そっか…取り敢えず、儀式の始まる前には、全部確認しておいてくれ
  マジで、浄化の儀式ン時に乱入されたら困るから、よろしく」

 「はい、引き続き…敷地内を探索しておきます」

 「んじゃ、頼むな」

 そう言って、高嶺に軽く手を振り、和輝はディーバックを片手に、ゲストハウスへと戻って行くのだった。

 そんな和輝の後ろ姿を見送った高嶺は、スマホを使って、リーダーの清瀬へと、和輝の動向を報告する。

 報告を受けた清瀬は、それを当主たる白夜と、長兄の蒼夜に報告した。
 紅夜が報告を受けなかったのは、ちょうど部屋から出た後だった為だった。

 和輝はその足でゲストハウスにさっさと戻り、ディーバックに入れておいた、竜姫の父親から預かった封筒と伝言を伝え、その後、優奈と真奈にお土産を手渡した。

 「ほい、竜姫……親父さんから預かったヤツな
  お土産は喜ばないから、その分を上乗せしておいたって言ってたぜ

  ほら、優奈、真奈、おじさんからのお土産」

 手渡されたお土産の袋を開いて、優奈と真奈は嬉しそうにする。

 それは素朴な民芸品だったが、どう見ても、儀式に似合いそうなモノだった。

 「お兄ちゃん、これを着けてもイイ?」

 優奈の言葉に、真奈もコクコクと頷く。

 「ああ、確かに、今回の儀式に似合いそうだな…着けてもイイぞ」

それを見て、うらやましそうにする桜に、和輝は自分の分のお土産の袋を開くと、やはり、妹達と同じ、胸に飾る民芸品が入っていた。

 「ほら、桜、そんな顔すんなよ…俺のを貸してやるからさ
  優奈と真奈とお揃いだ」

 「うん」

 嬉々として、その民芸品を手に、儀式の衣装の上に着け、姿見の鏡の前へと走って行く。

 一方、竜姫は和輝から手渡された封筒を開けて、にんまりとしていた。

 「やったぁ~……二枚増量だわ……今月は、ほくほくぅ~……
  乙姫、この儀式が終わったら、取り敢えず、貯金しに行こうね」

 その言葉を聞いた桜が、週明けに和輝達と銀行に行く話しを振る。

 「だったら☆☆銀行に預けると良いのですわ
  色々なキャンペーンがあると、優奈ちゃんと真奈ちゃんが言ってましたわ

  桜は、来週、紅夜を連れて、和輝達と一緒に行くのですわ
  そして、口座を開設として、キャラクターグッズをゲットしますの」

 そう楽しそうに言う桜に、乙姫と竜姫が顔を見合わせる。







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