上 下
331 / 446
第6章 浄化の儀式

330★竜姫の父親からお土産を忘れていました

しおりを挟む


 密かに本邸に帰還している蒼夜と白夜に、紅夜がコトの経過を話す、少し前、和輝はゲストハウスに戻る途中で、竜姫の父親から手渡された封筒やお土産の存在を思い出していた。

 はぁ~……取り敢えず、儀式の場所は決まったし………と、あっそうだ
 竜姫の親父さんから預かった封筒とお土産……あれ?…どこにやった?

 えぇ~とぉ~……〈カオス〉を抱えた紅夜と一緒に、車から降りた時
 うわぁ~……持って無かったような気がする………てぇ~とぉ………

 封筒もお土産も、ディーバックに放り込んだままだわ
 やっべぇ~……今の今まで、すっかり忘れていたぜ

 そのコトに気付いた和輝は、ゲストハウスに入る直前できびすを返し、車の中に置き忘れたディーバックを回収しに向かう。

 部外者である自分達が、蓬莱家に使える者達に監視されているというコトに気付きもしない和輝は、兵器で車庫にある車を開けた。

 おっ……やっぱりここにあったか………うん、封筒もお土産もあるな
 はぁ~…今日は色々とあり過ぎて、なんか忘れモンが多いわ

 ディーバックを手に、車のドアを閉めたところに、ボディーガードのリーダーの補佐を務める高嶺が声をかけた。

 「神咲さん、どうかしましたか?」

 側に人の気配が来たコトに気付いた和輝は、何の気なしに振り返って答える。

 「ああ、車ん中にディーバックを忘れちまってよ……取りに来たんだ
  ……んで、そっちはどうかな?

  あいつら…狂信者集団の置き土産とかは無かったか?

  浄化の火炎を使った儀式の最中に、また狂信者達に乱入されるのは
  流石に、御免こうむりたいからな」

 そう和輝に聞かれた高嶺は、今入っている報告をそのまま告げる。

 「取り敢えず、敷地内に監視カメラや集音機の類いは見付かってません

  ただ、当家に繋がる敷地外の電線に、得体の知れない配線が絡んでいた
  という報告がありました

  蒼夜様のご愛犬〈カオス〉の到着連絡が、成田空港の検疫所から
  こちらに繋がらなかったのは、それが原因かと思われます

  発見したモノは、すぐに排除しました」

 高嶺から、蓬莱家に繋がる配線の敷地外からの干渉の事実を聞いた和輝は、自分の予想通りだったコトに溜め息を吐く。

 やっぱり~…紅夜や桜に、そうじゃねぇ~かなぁ~と思って、言ったけど
 ほんっとぉーに、あの迷惑極まりない狂信者集団って……いらねぇー…

 「そっか…取り敢えず、儀式の始まる前には、全部確認しておいてくれ
  マジで、浄化の儀式ン時に乱入されたら困るから、よろしく」

 「はい、引き続き…敷地内を探索しておきます」

 「んじゃ、頼むな」

 そう言って、高嶺に軽く手を振り、和輝はディーバックを片手に、ゲストハウスへと戻って行くのだった。

 そんな和輝の後ろ姿を見送った高嶺は、スマホを使って、リーダーの清瀬へと、和輝の動向を報告する。

 報告を受けた清瀬は、それを当主たる白夜と、長兄の蒼夜に報告した。
 紅夜が報告を受けなかったのは、ちょうど部屋から出た後だった為だった。

 和輝はその足でゲストハウスにさっさと戻り、ディーバックに入れておいた、竜姫の父親から預かった封筒と伝言を伝え、その後、優奈と真奈にお土産を手渡した。

 「ほい、竜姫……親父さんから預かったヤツな
  お土産は喜ばないから、その分を上乗せしておいたって言ってたぜ

  ほら、優奈、真奈、おじさんからのお土産」

 手渡されたお土産の袋を開いて、優奈と真奈は嬉しそうにする。

 それは素朴な民芸品だったが、どう見ても、儀式に似合いそうなモノだった。

 「お兄ちゃん、これを着けてもイイ?」

 優奈の言葉に、真奈もコクコクと頷く。

 「ああ、確かに、今回の儀式に似合いそうだな…着けてもイイぞ」

それを見て、うらやましそうにする桜に、和輝は自分の分のお土産の袋を開くと、やはり、妹達と同じ、胸に飾る民芸品が入っていた。

 「ほら、桜、そんな顔すんなよ…俺のを貸してやるからさ
  優奈と真奈とお揃いだ」

 「うん」

 嬉々として、その民芸品を手に、儀式の衣装の上に着け、姿見の鏡の前へと走って行く。

 一方、竜姫は和輝から手渡された封筒を開けて、にんまりとしていた。

 「やったぁ~……二枚増量だわ……今月は、ほくほくぅ~……
  乙姫、この儀式が終わったら、取り敢えず、貯金しに行こうね」

 その言葉を聞いた桜が、週明けに和輝達と銀行に行く話しを振る。

 「だったら☆☆銀行に預けると良いのですわ
  色々なキャンペーンがあると、優奈ちゃんと真奈ちゃんが言ってましたわ

  桜は、来週、紅夜を連れて、和輝達と一緒に行くのですわ
  そして、口座を開設として、キャラクターグッズをゲットしますの」

 そう楽しそうに言う桜に、乙姫と竜姫が顔を見合わせる。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉続々・50女がママチャリで北海道を回ってきた・道南やめてオロロン逆襲のちにスポークが折れてじたばたした話。

江戸川ばた散歩
エッセイ・ノンフィクション
北海道を7月にママチャリで回ること三年目。 今回はそれまでのマルキンのママチャリでなく、ブリヂストン様のアルベルトロイヤルで荷物をしっかりしたバッグに入れて積んでみました。 するとどんなことが起こったか! 旅行中に書いたそのまんまの手記です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎ 〜Romance in Abū Dhabī〜 【Alphapolis Edition】

佐倉 蘭
キャラ文芸
都内の大手不動産会社に勤める、三浦 真珠子(まみこ)27歳。 ある日、突然の辞令によって、アブダビの新都市建設に関わるタワービル建設のプロジェクトメンバーに抜擢される。 それに伴って、海外事業本部・アブダビ新都市建設事業室に異動となり、海外赴任することになるのだが…… ——って……アブダビって、どこ⁉︎ ※作中にアラビア語が出てきますが、作者はアラビア語に不案内ですので雰囲気だけお楽しみ下さい。また、文字が反転しているかもしれませんのでお含みおき下さい。

おしごとおおごとゴロのこと

皐月 翠珠
キャラ文芸
家族を養うため、そして憧れの存在に会うために田舎から上京してきた一匹のクマのぬいぐるみ。 奉公先は華やかな世界に生きる都会のぬいぐるみの家。 夢や希望をみんなに届ける存在の現実、知る覚悟はありますか? 原案:皐月翠珠 てぃる 作:皐月翠珠 イラスト:てぃる

~後宮のやり直し巫女~私が本当の巫女ですが、無実の罪で処刑されたので後宮で人生をやり直すことにしました

深水えいな
キャラ文芸
無実の罪で巫女の座を奪われ処刑された明琳。死の淵で、このままだと国が乱れると謎の美青年・天翼に言われ人生をやり直すことに。しかし巫女としてのやり直しはまたしてもうまくいかず、次の人生では女官として後宮入りすることに。そこで待っていたのは怪事件の数々で――。

太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する

嵐華子
キャラ文芸
ただ1人だけを溺愛する皇帝の4人の妻の1人となった少女は密かに怒っていた。 初夜で皇帝に首を切らせ(→ん?)、女官と言う名の破落戸からは金を巻き上げ回収し、過去の人生で磨いた芸と伝手と度胸をもって後宮に新風を、世に悪妃の名を轟かす。  太夫(NO花魁)、傾国の娼妓からのやり手爺を2度の人生で経験しつつ、3度目は後宮の数打ち妃。 「これ、いかに?」  と首を捻りつつも、今日も今日とて寂れた宮で芸を磨きつつ金儲けを考えつつ、悪女達と渡り合う少女のお話。 ※1話1,600文字くらいの、さくさく読めるお話です。 ※下スクロールでささっと読めるよう基本的に句読点改行しています。 ※勢いで作ったせいか設定がまだゆるゆるしています。 ※他サイトに掲載しています。

出世街道か、失踪か

篠原 皐月
SF
新入社員が垣間見た、職場の闇。彼らは無事に生還する事ができるのか?

処理中です...