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第6章 浄化の儀式

326★浄化と再生の儀式に使う器が決まりました

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 紅夜の言葉に、少なからず通信に苦しんだコトのある和輝は同意する。

 「ああ…確かにそうだな…通信に適さない場所っていうのはあるからな
  鏡の通信の魔法に適した場所の向き不向きは、俺にはわからないし……
  そうなると…設置場所の…………ぅん?なんだ?優奈?真奈」

 ツンツンと服裾を引かれた和輝は、紅夜から妹達へと視線を移す。

 「お兄ちゃん、コレどうかな?」

 そう言う優奈の隣りから真奈が、綺麗なガラス細工の器を差し出す。 
 青色の絶妙なグラデーションを描きながら、巻き貝を模した綺麗な器に、和輝は苦笑する。

 なんつーか…乙女チック……いや、まさしく…ファンタジックかな?
 差し詰め、優奈と真奈が選んだ器は、海神のさかずきってところかな?

 「ああ、イイんじゃねぇ~か、それで……
  で、それは湧き水を注ぐヤツにするのか?

  それとも、酒を注ぐ器として使うか?
  決めているのか?

  クスクス………浄化と再生の儀式に使うのは、二つだぞ
  酒を満たす器と、湧き水を満たす器が必要だぞ」

 そう言いながら、和輝は双子の妹達から、巻き貝を模した器を受け取り、自分の前のテーブルに置く。

 そんな和輝の言葉に、首を傾げていた桜と乙姫が、同じモノを互いに見ているコトに気付き、視線をあわせて頷き合う。

 そして、2人でそっと揺らめく火焔を閉じ込めたかのような赤い器を持ち上げる。

 「和輝ぃ~…桜は、これにお酒を入れると良いと思うのですわ
  その後に、浄化の火焔を受けるというのはどうかしら?

  その上で、和輝の作る《光珠》の結晶体を飲ませるのは
  優奈ちゃんと真奈ちゃんが選んだ貝殻の器に湧き水を注いで

  一緒に飲ませるというのはどうかしら?」

 そんな桜に、乙姫もコクコクと頷いて言う。

 「私もそう思うなぁ……これなんて、最適な器だと思うし」

 和輝は、桜と乙姫が選んで持って来た赤い器を受け取り、青い器の隣りに置き、器を見比べる。

 ふぅ~ん…確かに、見た感じも水と火……いや、氷と炎の器って感じだな
 儀式に使うのにイイな…うん、この二つで決定するか

 どうせ、藤夜さん本人は見えないけど……周囲へのアピールにはイイな
 一応、浄化と再生の儀式だからな、カタチってモンは大事だからな

 参加する爺やさん達だって、雰囲気ある方がイイからな
 意外と、外野の存在…というか厳粛な儀式をしているって雰囲気は大事だ

 二つを見て頷いた和輝は、室内にいる全員を見回して、確認するように言う。

 「みんなぁ~……この二つの器でイイってコトにするぞ」

 和輝からの告知に、全員が頷く。
 そして、代表して竜也が言う。

 「うん、それでイイんじゃないかな
  見た目てきにも、対照的な器だから、今回の儀式に適していると思うよ

  それじゃ、儀式で使う二つの器も決まったコトだしね
  和輝、ボクは、キミと桜ちゃんと紅夜さんの衣装作りに戻るね

  なに、巫女装束と直衣にするから簡単だから………
  時間も限られてるから、そんなに、凝ったりしないしね

  すぐに、作業に取り掛かるね」

 竜也は微妙なニュアンスで和輝にそう言って、もう話しは終わったんだろうとばかりに、我慢するコトになってしまった裁縫をする為に用意された多彩な布やアクセサリーと、裁縫用のミシンが用意されているテーブルの方へと行ってしまう。

 それを見送りながら、じっくりと二つの相反する器を見ていた輝虎も頷く。

 「うむ、イイと思うな…青い器に赤い器……対照的で綺麗だな」

 輝虎の言葉に頷いてから、紅夜は和輝に向き直る。

 「いいんじゃねぇ~の、その二つで、ひとつは桜が選んだヤツだしな
  そんじゃ、儀式する場所をさっさと決めようぜ

  こっちも、兄上達や姉上達の大鏡の設置の都合もあるからさ
  場所と候補を決めてあるから、下見に行こう

  和輝の予定した場所も聞いて、検討したいからな
  わりぃ~けど、和輝をちっとのあいだ借りるぞ」

 紅夜の言葉に、再びアクセサリーへとたかった優奈と真奈が振り返る。

 「行ってらしゃ~い、お兄ちゃん」

 「和輝兄ぃ~…いってらっしゃ~い」

 パタパタとてを振る双子の側で、同じように乙姫も手を振る。

 「和輝くん、いってらっしゃ~い
  儀式の場所を決めたら、早く戻ってきてねぇ
  この後、衣装合わせあるからね」

 そういう乙姫と相対する位置で、衣装片手の桜は紅夜へと声を掛ける。

 「紅夜、場所が決まったら、さっさと戻ってきて欲しいですわ」

 「ああ…決めたらすぐ戻るから、ちょっと待っててくれ、行こうぜ和輝」

 「ああ、んじゃ輝虎、あとを頼むな」

 「………」

 和輝の言葉に、いつも通り輝虎は軽く頷く。
 軽く手を振る双子の妹達に見送られ、和輝と紅夜はゲストハウスを出て、庭へと向かった。

 ほんの数分後には、室内に残ったコトを輝虎が、密かにゲストハウスに残ったコトを、思いっきり後悔していたのは言うまでもない。












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