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第6章 浄化の儀式

323★ゲストハウスに戻ったら、女性陣が凄かった

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  その側では、和輝が竜也を振り返って言う。

 「えっ……儀式の分の請求書を……俺が書くのかよ、竜也
  そういうのって苦手なんだよぉ~…適正価格もわからないし
  頼むから、お前が書いてくれよ竜也」

 和輝が頭上で腕を大きく交差させて、×を作って言うのを見て、クスッと笑った竜也は、柔らかい口調で言う。

 「そうかい、しょうがないねぇ~…和輝は
  なら、ボクに、請求書全般を一任してくれるかい?
  それなら、ボクが全部書くけど?」

 竜也の含みがある言葉に、その意味を計り兼ねたが、和輝はそういうモノを書きたくないので、知らないフリをして頷く。

 「理解わかった、竜也にぜぇ~んぶ一任する…だから、書いてくれ
  輝虎や竜姫や乙姫の分も、書いてくれるよな

  そういう事務的なモノは、お前が適任だからな
  流石に、こういう事務的なモノは、竜姫に頼めないしな

  乙姫は、ああ天然だから、論外だし…………
  よろしく、未来の弟君………頼りにしてるぜ、マジで」

 和輝からの茶目っ気の入った言葉を言われて、竜也は肩を竦める。

 「それじゃ、ボクが全員の分を書くってコトでイイね
  勿論、ボク達と一緒に儀式に参加する、優奈ちゃんと真奈ちゃんの分もね」

 竜也の言葉にびっくりする。
 
 「えっ…真奈や優奈も?」

 かずきの反応に、竜也はにぃ~こりと笑って言う。

 「当然………2人とも、あの狂信者集団との戦闘を見ているしね
  キケンに晒されたコトにかわりはないんだよ

  そのうえで、藤夜さんに施す浄化と再生の儀式にも参加するんだから
  その分の時給が発生するのは、当たり前でしょ………

  本音を言えば、啓太や水鳥の分も請求したいぐらいなんだよ、ボクは
  自分の身の危険も顧みず、なぁ~んの力も無い2人がさ

  無理やり、警察官達を呼んで、ここ蓬莱邸に連れて来てくれたんだからね
  でも、あの2人は単なる友情でしてくれたって理解わかっているから
  何も要求しないけどね

  できれば、人気俳優とか小説家等のいる君の家族に、色紙にサインとか
  してほしいかな……あの2人だと、そういうモノの方が喜ぶし

  純粋に、お礼としてね、それぐらいの我が儘はいいでしょ、紅夜さん」

  竜也からの言葉に、蒼夜や白夜が、鏡による通信の魔法を使って、浄化と再生の儀式に参加するというコトをどう言おうかと思い悩んでいた紅夜は、返事のテンポがスレる。

 う~ん、何時、和輝に言ったらイイんだぁ?…どう言おう…はぁ~……
 和輝なら、多少の不思議でも許容……じゃなくて、なんだっけ?
 俺や兄上達のサイン……そんなモンで良いのか?オーケーオーケー

 「えっ……あぁ…いいぜ…そんなモンでイイのか?
  実際、警察官達を呼んでもらって助かったのは、本当だからな

  それに、桜の友達になってくれそうな人間なんて、珍しいからな
  それが礼になるなら、いくらでもみんなに書かせるし俺も書くぜ」

 紅夜からの快諾に機嫌のなおったらしい竜也を確認し、和輝は話しをそこで切る。

 「んじゃ、ここでの話しはおしまいにして、浄化の儀式の準備に戻ろう」

 和輝の観察した通り、機嫌がかなぁ~り良くなった竜也は、儀式の衣装へと意識を既に移しており、楽しそうに言う。

 「ああそうだね、ボクも作りたいモノがあるから………」

 そんなやり取りを見ていた輝虎は、話しの決着がついたと判断し、頷く。

 「そうだな……さっさと戻って、浄化と再生の儀式の準備をすませよう
  やはり、準備万端で挑みたいからな…後手後手は御免だからな」

 輝虎の言葉に頷き、和輝と竜也、使用人達を連れた紅夜は、ゲストハウスに向かった。

 そして、数分後、和輝達と紅夜と、荷物を持った使用人達がゲストハウスに戻ると、そこはある種の戦場と化していた。

 うわぁ~…なんつーか……すげぇ~…状態だな…こりゃ………

 ゲストハウスの玄関を通り、リビングに入った者、全員の感想は、その一言に尽きた。

 まず最初に目に入ったのは、双眸をつり上げて、自分の衣装と化粧品とアクセサリー類を、ああだこうだと叫び、悩みまくっている、生き生きとした桜の姿だった。

 その側では、乙姫が縫いあげた衣装を受け取って、動きやすさを確認している真奈と優奈がいた。

 2人は、桜に貸してもらう予定のアクセサリーを着けては、姿見の鏡の前に立ち、お互いの姿を確認しては、着けて外してを繰り返していた。

 年頃の女の子らしく、おしゃれに悩む優奈と真奈の可愛らしい姿に、竜也は微笑む。

 クスクス……小さくても、やっぱり女の子だよねぇ~………
 優奈ちゃんも真奈ちゃんも、一生懸命で可愛いね

 竜也がそんな感想を持ってから、幼馴染みの竜姫を探す。

 そういう中で、のほほんとしている竜姫は、そういう意味で、自分を飾ることにあまり興味の無い為、ひとり傍観者をしていた。











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