お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

第６章 浄化の儀式

322★ゲストハウスに帰還中、紅夜に出会いました

　２人の兄と別れた紅夜は、桜達のいるゲストハウスに、様々な形状と色彩のガラスの器と、湧き水を入れた容器と、お神酒に見立てる予定の酒類を、使用人達に持たせて、いそいそと向かっていた。

　その途中で、紅夜はゲストハウスに戻る途中の和輝達と合流した。

　なぜ、そうなったかと言うと、厚地で大判のバスタオル等の洗濯機兼乾燥機にセットしたり、特殊な薬剤を塗る為とはいえ、手術用の手袋をしていたので、直接ではないにしても、一応手を洗う必要があったのだ。

　和輝達の心理としては、桜や紅夜の兄であるという認識は一応あっても、所詮は喋ったコトもない、見ず知らずの成人男性である。

　そんな見ず知らずの成人男性の生殖器官その他を、いくらソレを塗る必要があったからと言って、いじってしまったという、いやぁ～んな状態から、平常心に戻る為に、アライグマのごとく、何度も手を洗っていたセイだったりする。

　どんなに大人びていても、まだまだ高校生になりたての和輝達には、流石に衝撃のある試練だったのだ。

　かなり強靭な精神を持っていても、そこはやはり、まだまだ高校生なので、そういう意味での耐性は、全員無かったのは確かなコトだった。

　だから、アライグマ化していたコトで、和輝達はゲストハウスに帰還するのが遅くなったのだった。

　が、そんな事情を知らない紅夜は、自分達が別の場所から、３人の行動を見ていたコトを、和輝達に知られないようにと、気遣いながらも、好奇心を覗かせて聞く。

　「あれぇ～…和輝？…と、輝虎に竜也だっけか？…どうしたんだぁ？
　　こんなところにいるってコトは、ペットハウスに忘れ物でもしたのか？

　　あっちから帰って来るなんて…もしかして何か足りないモノあったか？
　　俺に言ったモノ以外にも、必要なモンあったのか？」

　紅夜の質問に、和輝が憮然とした表情で答える。

　「あぁから……藤夜さんの様子を確認して来たんだよ
　　一応、浄化と再生の儀式に挑いどめるだけの体力あるかってさ

　　ある種の最終確認して、大丈夫そうだったからな
　　浄化の為の下準備して来たんだよ

　　扱うのが火焔なんで、防火対策に特殊な薬剤を全身隈なく塗ったり
　　その上に食塩水を塗ったりしたんだ

　　勿論、体力増強に、輝虎の血を輸血したりしてな
　　結構、するコトが多くてさぁ～………

　　一応、血液型は桜に聞いていたし、薬剤使って最終確認してから
　　輸血したから、そういう意味じゃ大丈夫だぞ

　　いや、ほんと、何度、紅夜を呼びに行こうかと思ったか………
　　でも、俺が作る《光珠》を入れる器や、お神酒に見立てる酒とか

　　色々と選んでいるだろうなぁ～って思ったから、我慢したんだぜ」

　和輝の言葉に、一部始終を観ていた紅夜は、素直に言う。

　「そうか…大変だったな…でも、呼んでくれたら俺は手伝ったと思うぞ」

　紅夜のかなぁ～りのほほんとした言葉に、和輝は首を振る。

　「うん…そうは思ったんだけどなぁ～…言えば、手伝ってくれるって
　　ただ、流石に、実の兄の生殖器官その他にさぁ～………

　　特殊な薬剤とか、食塩水を塗るのは、かなりクルもんがあるだろ？
　　本当に、自分にソレが出来ると思うか？紅夜

　　ちなみに、今回、藤夜さんに使った火傷防止の為の薬剤ってなぁ……
　　これが、かなぁ～り気持ち悪い感触するんだわぁ～…マジで

　　そのセイで、俺達は、アライグマになったぞ
　　ちなみに、近いイメージは溶けた生暖かいスライムかな？

　　冷たいんなら、ある意味で許容範囲かもしんねぇ～けどな
　　ヌメル液体で、常温で、人肌より少し低いかな？の温度なんだわ」

　和輝にリアルにそう言われて、紅夜はいやぁ～んな顔になる。

　「せ…生殖器官って……うぅ～ん…そういう風に言われると…こう
　　なんか……エグイっていうか………グロイっていうか………
　　ごめん……やっぱ……俺には、無理だわ」

　素直に白旗を振る紅夜に、竜也が口端だけで嗤って言う。

　「そうだよねぇ～………イヤだよねぇ～やっぱり
　　だから、紅夜さんを誘うの諦めたんだよ

　　その代わりと言ってはなんだけどねぇ………
　　アレは、かなぁ～りお値段するモノなんでね

　　後で、血液検査の試薬や、防火薬剤の分の請求書を書かせてもらうよ
　　勿論、輝虎くんの血を輸血したりした分も付けてね

　　なんと言っても、保険外治療だから、請求金額は馬鹿っ高いけどね
　　諦めて払ってくれたまえ

　　今日の狂信者集団との戦闘代金も入っているからね
　　勿論、現金で、お願いしますね

　　ああ、浄化と再生の儀式の分の請求書は、和輝が書くからね」

　にこにこと顔だけで嗤い、ガラス玉のような瞳で言う竜也に、紅夜は素直に頷く。

　「ああ、理解わかった………勿論、その分は請求してくれ
　　金でカタがつくなら、その方がイイ……確かに、俺には無理だからな

　　それに、火傷防止の薬剤ってかなり高いって前に聞いたコトあるしな
　　特殊な薬剤だから、一般的には出回って無いモノだっていう話しだし」

　実の兄の生殖器官その他というエグイ言葉に、げんなりしている紅夜が、そう答える