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第6章 浄化の儀式

313★そんな輸血で大丈夫なのかな?と思うが、問題ないようだ

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 和輝の確認に、竜也は頷いてから、別の箱に手を伸ばして言う。

 「ああ、その箱に入っているよ……あっ…ちょっと待ってくれるかな
  こっちの箱には、特別なモノが入っているんだ

  ここに来る前に言っていたヤツだよ
  たぶん、今回の儀式で一番役に立つモノだと思うんだ

  珍しいモンが手に入ったから、和輝に見せようと思って
  持って来たんだけど、正解だったみたいだね

  和輝贔屓の父が、一緒に暮らすって聞いて、融通してくれたんだ
  ボクが欲しいって言った時は、くれなかったくせにね

  ほんと、和輝が欲しいって言っていたの聞いただけで用意するんだから
  我が父ながら、私情主義なんだから…………」

 竜也のぼやきに、和輝は苦笑しながら話しをすり替えるように、後を任せる竜姫へと声を掛ける。

 「そっか?………取り敢えず、竜姫、桜達を頼むな
  俺達は、あっちの準備済ませに行ってくるからさ………」

 和輝からの言葉に、軽く手を振って応える。

 「はぁ~い…行ってらっしゃい」

 気軽に見送りの言葉を言う竜姫に不審を持つコトも無く、布に戯れる乙姫と優奈の側で、桜と真奈も手を振る。

 「「行ってらっしゃぁ~い」」

 そんな女性陣の見送りの言葉に、輝虎は素直に頷いて応える。

 「ああ、行って来る」

 その隣りで、女性陣の言葉に応えるのを任せた和輝が言う。

 「んじゃ、さっさと済ませちまおうぜ」

 和輝の言葉に、竜也はちょっと布の群れに未練の視線を投げながら言う。

 「そうだね、準備万端で浄化の儀式を進めたいからね
  それに、早く済ませて帰ってくれば、衣装作りの時間が増えるし」

 そんな竜也に苦笑いを浮かべた和輝は、輝虎を振り返って頷く。
 3人は女性陣をゲストハウスに置いて、ペットハウスへと足早に向かう。

 勿論、足を動かしながら、簡単に輸血とその後の処置の話しをしながら…………。

 足と共に口も動かしていたお陰で、あっという間にペットハウスへと到着する。
 3重の扉を越えて、さっさとペットハウスへと入り、白夜の私室へと足を向ける。

 ペットハウスの中には、和輝達の予想通り誰も居なかった。
 居るのは白夜の私室のベッドに寝かされた藤夜だけだった。

 白夜の私室に入った和輝は、周辺の様子を確認してから、さらりとなんでもないコトのように言う。

 「よぉ~し…確認した限り、誰も居ないな……オーケーオーケー
  そんじゃ~…さっさと、輸血といきますかぁ~……

  あんまり、見ていて気持ち良いモンじゃねぇ~からなぁ
  さっさと済ませちまおうぜ」 
 
 「そうだね」

 過去に、必然から、何度もそういうコトをしている和輝と竜也の、単語の抜けた会話に、輝虎は不思議そうな表情で言う。

 「ふむ………和輝、見た限り、注射器しかないようだが?」

 竜也の手に、何時の間にか握られている大き目の注射器に、輝虎は首を傾げる。
 そんな輝虎に、和輝はから笑いをしながら答える。

 「あははは………機材が無い時は、直接、抜いて、そのまま…注入
  …って方法しかないんだわ

  抜く時と、注入する時に、ちゃんと消毒しとけば大概大丈夫さぁ~…
  勿論、病気が無いコトは確認してな

  つっても、輝虎はそういうて意味で血液を媒介するような
  危険な病気なんて持ってないし………

  藤夜さんの方も、爺やさんと主治医さんに病気の有無を確認したら
  血液を媒介するような病気は無いっていってたしな

  だから、|コレ(注射器)で直注入でオーケーさ」

 かるぅ~くそう言う和輝に、輝虎は首を傾げて言う。

 「それって………いや、俺はイイが……藤夜さんは大丈夫なのか?」

 そんな輝虎の困惑顔での言葉に、竜也は過去の経験を思い出しながら言う。

 「輝虎くん、ボク達はコレで失敗したコトないから、大丈夫だよ」

 竜也の言葉に、和輝も頷く。

 「まっ……そういうコトだから………気にすんな…ってコトで………」

 和輝の言葉に、それ以上の言葉を見付けられなかった輝虎は頷く。

 「わかった…それじゃ、さっさと抜いて、注入いれちゃってくれ」

 そう言いながら、輝虎はなんの感慨も無く左腕を出す。
 差し出された腕の血管の位置を確認し、竜也は慣れた手つきで消毒した脱脂綿で拭き、用意した大き目の注射器で鮮血をたっぷりと抜く。

 が、見た目のセイもあって、よく流血沙汰のケンカにまで発展する輝虎は、ケロッとした表情で自分の血液が入った注射器を見ていた。











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