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第6章 浄化の儀式
309★時は有限なり
しおりを挟む竜姫の質問に、和輝はニヤリと笑って言う。
「ふふふふ…………今回は、動物の犠牲が必要な置換法は使わない
そんなコトしなくても、イイもんが作れるようになったからな
藤夜さんの皮膚に、あらかじめ濃いめの食塩水を塗っておいて
アルコールをかけて、それに火をつけて、浄化の炎焔とする
とり憑いていた〔バンパイア〕の邪霊は、浄化の炎焔で浄化されたけど
本体は、特別な血筋…それこそ、神の系譜を受け継ぐ者ってコトで
火傷をするコトも無かったって風にする予定だ
それで、浄化の儀式は終了……ついで、再生の儀式に速攻で移る
再生と誕生の儀式には、俺がめぇ~いっぱい《気》を掻き集めて
大きな《光珠》の結晶体を作ったモノを使う
俺が造った《光珠》を、聖水か神酒を満たしたガラスの器に入れて
桜と紅夜が浄化の炎焔で清められた藤夜さんに飲ませる
《光珠》という、新たな生命の息吹を取り込むコトによって
藤夜さんの再誕とするんだ
それで、儀式は終了する……どうだ、ある意味で簡単だろ
俺が作る《光珠》は、一見すると宝石に見えるからな
そういう意味で、騙すには十分だろう………どう思う、桜?
《気》を固めて作った、大きな《光珠》の結晶体を使えば
十分、藤夜さんを催眠術に掛けられると思うけど」
意見を求められた桜は、紅夜と顔を見合わせて頷く。
「確かにそれなら、成功するかもしれませんわね………でも………
白夜兄ぃ様や蒼夜兄ぃ様も、同じような催眠術で失敗しておりますの」
不安を浮かべてそう言う桜に、和輝はクスクスと笑う。
「そりゃ~…身内が掛けた催眠術だからさ…失敗するのは当然だぞ、桜
俺は、見るからに桜達とは別種族だろ…その上で《光珠》が作れる」
そんな和輝の言葉に紅夜が納得顔になって頷く。
「確かになぁ~…《光珠》の結晶体を飲めば、かなり疲れていても
直ぐに溶けて、そのまま身体に浸透するから、簡単に回復するもんな
その上、長く座敷牢に居た藤夜兄上は、和輝のコトを知らないからな
かえって、身内じゃない方がそういう儀式って成功するかもな
それに、これで正気になってくれれば、もっとありがたい
流石に、本邸に戻るたびに、ああいう姿を見るのは、俺も忍びない
できるなら、もう座敷牢になんて藤夜兄上を入れたくない
だから、藤夜兄上が、自分が〔バンパイア〕で、人間を襲って
その生き血を啜らなきゃ生きられないって言う思い込みが消えれば
本邸で藤夜兄上の身の回りの世話をしてくれる、使用人や爺やに
ボディーガード達を襲う心配が無くなる
そうすれば、藤夜兄上だって、普通の生活が送れるようになる
和輝、俺からも、その浄化と再生の儀式ってヤツを頼むわ」
はっきり言って、もうこれは藁にも縋るだよ、マジで
和輝達が行なう儀式で、藤夜兄上が正気に戻ってくれるなら
どんな協力も惜しまない
それか、俺達の真実の姿…真族の確信に迫る内容でも、目を瞑る
藤夜兄上が正気を手にするチャンスなら、ソレを潰したくない
当主たる白夜が、取材旅行で屋敷に不在の為、紅夜は自分が和輝のするコトを承認し、了承するしかないと思い、桜と爺やに目配せして、そう言う。
紅夜からの言葉に、和輝はなんの含みも無く、頷く。
「そんじゃ、これで決定だな……つーコトで、爺やさんすみませんが
さっき言った確認をボディーガードさん達にやってもらってください
それと、適当な布を数種類、ゲストハウスに持って来て下さい
取り敢えず数が必要なんで、なんなら白いシーツでもイイです
あとは、あるならばミシンが欲しいですね
出来るだけ早く持って来てくれるとありがたいです
俺達は、このまま直ぐに浄化の儀式の準備を始めます
何より、時間は有限です…まして夜明けまでの時間は短いですから」
そう爺やに依頼した和輝は、竜也達に向き直る。
「竜姫、乙姫、竜也、輝虎、優奈、真奈、俺達はゲストハウスに移動
浄化の儀式で着る衣装を大急ぎで作らないとな
ああ、桜と紅夜も、俺達と一緒にゲストハウスに来て欲しいな
衣装の採寸とかもあるし、軽く儀式の手順なんかも相談したいからな
そんで…ボルゾイ達は……はいはい、みんな一緒に連れて行くから
そんな顔すんなよ、優奈、真奈
俺だって、空港内で拾った〈カオス〉が心配だから
ここに置いて行く気は無い………んじゃ、移動するぞ」
和輝の号令で、藤夜の眠っている白夜のペットハウスでの私室から全員が出て、それぞれの場所へと移って行った。
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