お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………

第６章 浄化の儀式

307★インスピレーションは神様がくれるモノ

　そんな紅夜に、和輝は何を言っているんだという表情で、人外の血筋を引く者設定が必要だというコトを教える。

　「あのなぁ～紅夜、考えてもみろよ、狂信者集団のセイで、残念なコトに
　　藤夜さんは、既に自分のコトを〔バンパイア〕だって思い込んでいる

　　それを普通の人間だって思い込ませても、すぐにボロが出る
　　ついでに、あの狂信者集団、また来るかもしれねぇ～だろ

　　そういう変な奴等に狙われるのは、特別な血筋を引く一族の者だから
　　自分は邪悪な者達に狙われるって設定の方が真実味あるだろ

　　治癒能力があるとか、瞳の色が変わるとかいうのも、その血のセイ
　　稀少種ゆえに狙われるの方が、説明するのに都合がイイんだよ

　　こういう儀式を執り行う時は、無理のない設定が大事なんだ
　　理解りかいし、信じやすいモノが一番なんだ

　　だいたい、桜と同種族だっていうんなら自己治癒ぐらい出来るだろ
　　俺でさえ、そういうコト出来るんだから………

　　かえって、ごく普通の一般人ってヤツの方が無理な設定なんだよ
　　ましてだ、きっと、あいつ等狂信者集団はここ蓬莱家に来るぞ

　　そん時に、せっかく狂気から引き戻して、正気を保てるように
　　整えなおした記憶を刺激されて、狂乱されたら元も子もないだろ」

　和輝のまさに的を射たような説明に、紅夜は苦笑いしか出来なかった。

　和輝ってば、本当に俺達が特殊な種族だって思ってないんだなぁ～……
　いったい、どんな環境で育てば、こんな風に育つのかなぁ？

　あとで、絶対に幼少期のコトとか聞き出してやろう
　でも、育った環境のお陰で、俺達は疑われずにすむ……ラッキィ～……

　「ああそうか………なるほど、確かにな……納得だ」

　紅夜のボソボソとした言葉をあっさりと無視して、和輝は次のコトに取り掛かる為に、桜へと向き直って尋たずねる。

　「桜、お前達の一族って、なんか変わった呼び方とか無かったか？
　　えぇ～とぉ…たしか、真族とか言っていたよな…どういう字を書く？」

　そう確認する和輝に、桜は首をウニウニと傾げていた。

　うぅ～ん…和輝の言っている意味が、桜にはよく理解わからないのですわ
　浄化で再生の儀式って？……何をするのでしょうか？

　特殊な一族の設定ってどういうコトなんでしょう？
　実際、桜達は………真族と呼ばれる、太古の一族なんですけど？

　それって、私達にとっては単なる事実でしかありませんから………
　はたして、その設定に意味があるのでしょうか？

　それにですわ………特殊な一族だから〔バンパイア〕ではないって
　藤夜兄ぃ様に思い込ませるコトなんて無理ですわ

　既に、その設定は、蒼夜兄ぃ様や、白夜兄ぃ様がやろうとして
　実は、何度も失敗しているモノなんですけど…どうしましょう？

　普通の人間？の和輝に、はたして…それが出来るのかしら？
　一応、もう既に催眠術で失敗しているコトを言った方が良いかしら？

　考え事をしていた桜は、何気なしの和輝の質問に、なんの疑問も持つことなく、本来は秘密のコトを口にしてしまう。

　「えっ……ああ、真族って呼ばれていますわね…文字は真実の真ですわ」

　と、色々なコトをグルグルと考えていた桜は、無防備に本当のコトを答えてしまう。

　そんな桜の言葉に、その場に居た紅夜と爺やと主治医、そして数人のボディーガード達は、外見上は無表情を保っていたが、内心では真っ白な灰になって、燃え尽きていた。

　そんな彼らの事情に気付くはずのない和輝は、にっこり笑って竜也に言う。

　「そっかぁ～…そんじゃ～…音できにも、ちょうどイイからぁ～………
　　ここは、神の血を引く神族ってコトにすっかぁ～………

　　なぁ～竜也…〔バンパイア〕とは正反対の位置付けになるし
　　神族設定で良いかな？」

　和輝同様、桜達をたんなるちょっと特殊な特技を持つ人間としか思っていない竜也も、軽く頷いて答える。

　「まぁ～…それで、いいんじゃないかな…真と神で呼び方が一緒だしね
　　普通の人間じゃないって感じがしてＯＫだと思うよ

　　それに、精霊族とか妖精族ってどちらかと言うと静のイメージだし
　　紅夜さんや藤夜さんて、生命力が強くて似合わないからね

　　ボクは、その設定に賛成だな……何なら、荒神でもイイしね
　　我が国は、現神人って存在があるしね…竜姫はどう思う？」

　そう竜也に話しを振られて、竜姫も笑って言う。

　「アタシも、ソレでイイと思うよ
　　神と〔バンパイア〕って、相反する存在だもんね
　　光と闇、生と死って感じでさ、イイんじゃない」
　　
　竜姫の言葉に、黙って話しを聞いていた乙姫が心配そうに言う。

　「そんないい加減な決め方でイイのかなぁ？」

　乙姫の言葉に、竜姫はクスクスと笑って答える。

　「あのね、乙姫………こういう儀式ってね
　　結構、いい加減な思いつきの方が良いのよ

　　インスピレーションってモノはね、神様がくれるモノだと思うのよ
　　あたし達は、思いつきというモノを、そう定義しているのよ」

　乙姫は、竜姫の説明にあっさりと納得する。

　「ふぅ～ん…そうなんだぁ～……確かにそう考えた方が素敵よね
　　それで、私のするコトっていうか、役割ってあるのかな？」