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第6章 浄化の儀式

305★記憶の削除ではなく、すげ替えをする予定です

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 「残念ながら、人間の記憶や思考ってヤツは結構複雑なんだわ

  だから、仮に強烈な催眠術で記憶の中から、その問題の部分を
  細心の注意を払って、綺麗に削除したとしても残る可能性があるんだ」

  コンピューターの削除と違って、一時的な消去にしかならないんだ
  そのコンピューターだって、専門家がちゃんと処理しなければ消せない

  そして、コンピューターならこの部分で決まった所にデーターがある
  けど、人間の脳にはそういうルールが無いんだ

  一応、海馬にあるってコトになってはいるけどな
  脳だけが覚えているとは限らないからすげ替えの方が良いんだ

  まして、父親が自分を庇って焼死したっていう強烈な印象がある

  だから、自分が狂信者集団に襲われて光りを失ったっていう事実を
  藤夜さんが忘れるコトは生涯ないだろう」

 和輝の言葉に、乙姫が不安げな表情で問い掛ける。

 「ずっと、忘れられないの?」

 「ああ、まず忘れないだろうな…どこかに必ず残ると思う
  そして、その記憶は〔バンパイア〕って単語と直結しているだろう

  だから、例え無理やりその問題のある部分を記憶から、催眠術を使って
  強制削除しても、脳に残る傷跡から、夢を見たりしてしまうだろう

  そうなると、自分がおかしいと思い、無理やりにでも思い出そうとする
  その可能性がたぁ~っぷりとあるから、無駄な労力になるだろう

  一時的な記憶の削除は、時限爆弾と一緒だからな
  だから、いつ思い出すかわからないような行為は無駄だからしない

  それに、かえって藤夜さんをキケンに晒すコトになりかねないからな
  だったら、脳に負担の少ない別の記憶に置き換える方がまだ良い

  その間に、ちゃんとした自分を見詰めなおす時間を作るほうが大事だ
  自分が自分としてのアイデンティティを確立するならば

  藤夜さんは、あの狂信者集団に自分が理不尽なコトをされたと
  ちゃんと認識するだろう

  そうなれば、偽りの記憶があろうと、もう狂うコトは無いと思う
  桜達が持つ、蓬莱家の一族のアイデンティティを取り戻させる

  それが、傷付いた精神こころの一番の治療となるだろうからな
  後は、桜や紅夜、帰って来た白夜さんや蒼夜さんが傷付いた精神こころ
  身内として癒してくれるだろう」

 和輝の説明に、その場にいる全員が頷く。
 その中で、真奈がみんなを代表して、もう一度和輝に聞く。

 「ふぅ~ん…和輝兄ぃの言いたいコトは理解わかったけど
  それじゃ、どういう風にする予定なの?
  もうやり方とかは決まっているの?」

 真奈からの質問に、和輝はにんまりと笑って言う。

 「ふふふふ………だから、ここはけがされた心身の浄化による
  再生の儀式って感じにやってみるさ
  そう、藤夜さんの再誕さいたんって感じでな」

 和輝の言葉に、真奈と優奈の声がハモる。

 「「再生の儀式?…再誕さいたんって?」」


 その儀式の意味を知っている者以外、全員が不可解そうな表情で首を傾げる。
 が、今は一刻を争う時なので、和輝は肩を竦めて言う。

 「その話しは、また後でな」

 そう言い放って、和輝は桜へと視線を向けて聞く。

 「桜、藤夜さんと血液型が一緒な輝虎が輸血用の血を提供してくれる
  つーことで、ここにその設備、またはそれに準じるモノってあるか?」

 和輝の問いに、桜は首を傾げ、自分の隣りで藤夜の様子を観察する紅夜を振り返る。

 「桜は、そういうモノがあるか知らないわ……紅夜は?」

 桜に問い掛けられた紅夜は、ベッドの上の藤夜から桜に視線を移し、首を傾げてから、爺やに視線を移して聞く。

 「俺に聞かれても……うぅ~ん…兄上達からもも聞いたコトないな
  爺や、そういう施設とか機材って、ウチにあるのか?」

 紅夜の問いに、爺やは困ったような表情で答える。

 「残念ながら、そういう医療器具や施設は、当方に用意してございません
  当時、方々に問い合わせたのですが、手に入りませんでした」

 爺やの言葉に、和輝は気にした風もなく竜也を振り返る。

 「ああ…そう………んじゃ、竜也…アレ使って用意すればイイよな」

 言われた竜也も和輝がするだろう内容が理解わかっているので、あっさりと頷く。

 「ああ、アレで十分だろう………幸い、輝虎君は頑健な健康体だからね
  最近、ケンカして流血したって話しも聞かないから大丈夫だろうしね」

 竜也の言葉に、輝虎を振り返れば、大丈夫だと頷く。
 それを確認して、和輝はさらりと言う。

 「これで、輸血の用意は確保されたとみなして…………」

 話しが全然みえない桜は、自分に理解わかる説明が欲しくて、和輝に話しかける。

 「和輝、藤夜兄ぃ様に、どんなコトをする予定なのかしら?
  桜や紅夜、それから、爺や達も、その儀式に参加しても良いかしら?」












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