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第6章 浄化の儀式
304★ちょっと特殊な部類に入るけど、藤夜さんは人間です
しおりを挟む思い悩んで思考に沈み込む爺やを他所に、和輝は納得顔で頷く。
「ふ~ん……なるほど、今まで人を襲ったコトはないのか………ふむ
となると、夕刻に現れた、狂信者集団の影響かなぁ?
あいつらもなぁ……マジモンの食人鬼達ほどひどくないにしても
イビツに歪んだ気配をムンムンと発散しているからなぁ~………
まっ…食人してないだけ、臭くはねぇ~けどな
つーと、あの狂信者集団に襲われて、生命の危機にあったセイかな?
藤夜さんはあいつ等に対して、敏感になっているのかもなぁ………」
そんな和輝の発言に、爺やはどう反応して良いかわからず、あいまいな表情で頷く。
「あのぉ~……食人鬼達って?」
爺やの反応を別段気にするコトもなく、和輝は平然と答える。
「ああ、実はさぁ…俺達は、国境無き医師団に入って活動していた
父親達に連れまわされて、世界中をうろついていたんだ
お陰で、色々な場所で〔グール〕や〔バンパイア〕に何度も出会った
だから、俺達は藤夜さんがれっきとした人間だってコトは判っている
ちょっと特殊だというコトを加味しても、ちゃんと人間の範疇だ
あいつ等みたいに、臭くないからな」
藤夜に噛まれた首筋の傷跡を撫でながら、なんとも言えない表情でそう言う和輝に、幼馴染み故に同じ経験を持つ竜也も肩を竦めて言う。
「そう藤夜さんのオーラは、濁りひとつない綺麗な金色をしているからね
吸血鬼というよりは、精霊族とか、妖精族って方があっていると思うよ
じっくりと観察して視ても、変な歪みとかもないしね」
竜也の言葉に、やはり2人と同じ経験を持つ竜姫も同意する。
「そぉ~ねぇ~…確かに、そんな感じするよね
同じ空間に居ても、イヤな感じなんてしないし………
あいつ等って、なんて言っていいのかな?
気配からして、どんよりと澱んでいて、歪んでいるんだよね
食人しているから、体臭や息とか、とにかく臭いんだよねぇ………
そういうのを考えると、竜也の言うように、精霊や妖精て方があうわね
なんて言うか、藤夜さんて人間臭さもほとんどないしね」
うんうんと頷く竜姫の隣りから、乙姫が小首を傾げながら問い掛ける。
「あのぉ~……爺やさん、ちょっとうかがいたいんですがぁ
藤夜さんて、貧血、またはそれに近い状態じゃありませんか?」
乙姫の質問に、爺やは問い掛けの意味をあえて考えずに、そのまま答える。
どうやら、私達の持つ感性と、神咲くん達の持つ感性には
かなり大きなズレがあるようですね
勿論、世間一般のごく普通の人間とも、かなりかけ離れているようですね
ここはそのまま答えた方が無難でしょうねぇ……はぁ~…しんどいんです
「はい、どんなにお世話しても、あまり食事をとってくださいませんので
日に一度は、足りない分を補う為に、藤夜様は点滴を受けております」
爺やの言葉に、竜姫と乙姫は頷き合う。
「ふ~ん…やっぱりそうなんだ…そうなるとあっちの部屋で話していた
乙姫の説が当たりって感じよねぇ………」
「でしょ…竜姫ちゃん…そうじゃないかなぁ~って思ったんだぁ~……」
そんな乙姫の頭を撫で撫でしながら、竜姫は和輝に向き直って言う。
「思い込みと貧血から来た衝動だって言うなんら、あの手が使えない?
輸血と催眠術で、自分は吸血鬼…〔バンパイア〕だって思い込みを
なんとかできるんじゃないの和輝?」
「うん…俺も、今それを考えていたんだ……んで、たぶん出来ると思う」
和輝の言葉に、優奈と真奈が興味津々で瞳をキラキラさせる。
そして、真奈が口を開く。
「和輝兄ぃ……催眠術をかける時に、私達も居てもイイのかな?」
そんな真奈に、何時もはちょっと引っ込み思案気味の優奈もコクコクしながら聞く。
「お兄ちゃん、私達も参加したい」
何時もは迷惑がかかると考えて、おとなしくしている優奈と真奈の自発的な参加したいという意思に、和輝はにっこりと笑って頷く。
「ああ、かなわねぇ~ぜ…出来るだけ自然な感じのがイイかなら………」
頷く和輝に優奈は瞳を嬉しそうに輝かせながら、小首を傾げて聞く。
「お兄ちゃん、催眠術でどんなコトするの?」
優奈の問いかけに、和輝はその場にいる全員に聞かせる為に、理解りやすい言葉を選んで説明する。
「まっ…簡単に言えば、今の藤夜さんって、狂信者達に襲われたセイで
自分のコトを〔バンパイア〕って、思い込んでいる状態だろ
その強引に刷り込まれた記憶を、別のモノにすり替えるんだ
まっ…いわゆる記憶変換とか、記憶置換ってヤツをするんだ」
和輝の説明に乙姫が小首を傾げて、不思議そうに聞く。
「えぇ~……記憶をすり替えるのぉ?和輝君
〔バンパイア〕だって思い込みの記憶を消す方が簡単じゃないの?」
乙姫のごく一般的な疑問に和輝は首を振る。
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