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第6章 浄化の儀式
299★やっと温かいご飯にありつけそうです
しおりを挟むある意味で立ち往生していた和輝は頷いて、ソファーでおとなしく丸まっている〈カオス〉と、同じソファーでへたり込んでいる紅夜のもとへと行く。
その前では、テーブルの上を竜姫が拭き、乙姫がお茶をセットしていた。
まずは、状態がかなりヤバイ〈カオス〉の確認をする為、和輝はそっと手のひらを翳して確認する。
和輝は、そうやって状態確認をするコトが出来るのだ。
そう、精密機械いらずの人間スキャンだったりするのだ。
下手なМRIやCTスキャンよりも高性能な和輝だったりする。
例えるなら、体内に病変があると、その場所に違和感を感じて、その病気の知識がちゃんとアレば、ソレがどんなモノかも判るという優れものだったりする。
和輝は手を翳して、ちょっとホッとする。
ふむ、確かに栄養失調にはなっているけど、内臓は大丈夫そうだな
空港で食べさせたの、もう綺麗に消化されてるぜ
流石、超大型犬のボルゾイだな…普通の犬と違って、生命力が違う
ちゃんと消化の良いご飯をたっぷり食べさせれば、直ぐに回復するな
和輝が〈カオス〉を確認している間に、料理が温め終わった竜也は、問い掛ける。
「和輝…料理、温め終わったけど、どうする?」
その言葉で、和輝は〈カオス〉から顔を上げて、紅夜に向き直って聞く。
「紅夜、竜也が料理温め終わったんだけど、メシ食えそうか?
今さっきの騒ぎで、だいぶ気分が悪くなっちまったようだけど
空港内から駐車場まで、さんざん腹減ったって言ってたろ
食えるんなら直ぐにテーブルにセットするけど、どうだ?」
和輝の言葉に、紅夜は顔を上げて頷く。
その瞳は期待でかなりキラキラしていたコトは言うまでもない。
「ああ…食う………もう、マジで腹ぺこだよ………
和輝もアクシデント続き………俺もアクシデント続き
はぁ~……勘弁して欲しいぜ、いや、マジでさ
いっそ、お祓いでもしたいくらいだぜ」
和輝と紅夜の会話を聞きながら、温め終わった料理を、竜也と輝虎は手に持ちながら、首を傾げて問い掛ける。
「なんだい、そのアクシデントって?でも、確かにお祓いはしたいよね
あんなモノが現れたんだからさ」
竜也の言葉に、輝虎は思わず言ってしまう。
「うぅ~む………お祓いで祓えるのか?ああいうモンが?」
輝虎の率直な感想に、苦笑いしながら、竜也は運ぶ為のワゴンに乗せてから、やはり同じようにワゴンに乗せている輝虎に言う。
「気分の問題だよ、輝虎くん………少しは、僕達の心情を考えてよ
あ~んなモンの相手したんだよ、穢れを受けたかもって思うじゃない
気持ちだけでも、浄化された気分になれればってコトだから………
実際に、ああいう輩って、穢れ持ち多いんだよ
ものすごぉ~く恨まれているからね………と……
それじゃテーブルに温めた料理を置こうか」
竜也が輝虎にそう言った途端、ずっと空腹を我慢し通しだった〈カオス〉もしっかりと2人の会話を聞いていて、嬉しそうに尻尾を揺らしていたので。
何が何でも、お相伴しようと虎視眈々と狙っていた〈カオス〉の瞳には、ギラギラと輝きつつも、哀れ誘うような鳴き声を上げる。
「ヒュゥ~ン…ヒュゥ~ン……ヒュンヒュン………」
おとなしく蹲ったまま、鼻先だけ少し上げて、甘ったれたように鼻を鳴らしながら、尻尾をファサファサと揺らす〈カオス〉を見て、和輝は苦笑する。
「竜也………改めて言うけど、紅夜の仕事って俳優なんだわ
それも、ハリウッドをメインにしているな………
んでもって、撮影中にひとりお亡くなりになったってわけだ
どうも、ソレも、あいつららしいんだ
そのセイで、精神的にダメージを受けているんだよ」
「なるほと、そういうコトなんだね」
「ああ、それで仕事にならないから、日本に帰って来たんだ
そこに、俺が竜姫のおじさんを空港に送りに行ったところで
こんな姿の〈カオス〉が、ヨロヨロと検疫所から逃げ出して
桜や紅夜の匂いを纏った俺を見付けたんだよ
本当なら、この蓬莱邸にちゃんと連絡が入って、桜や紅夜なんかが
お迎えに行くはずだったんだけど…………
あの迷惑な狂信者集団の悪さのお陰で、連絡が付かなかったわけだ
連絡が来なければ、空港に〈カオス〉が到着したコトが判らない
その上で、拒食の躾けが入っている〈カオス〉は、何時ものように
すぐに迎えに来てもらえると思って、ご飯を口にしなかったわけさ
そのセイで〈カオス〉は、思いっきり弱っちまったんだよ
ってコトで、弱った〈カオス〉用のご飯が必要になったんだ
〈カオス〉の分の用意してあるんだろ………頼むわ」
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